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漫歩寄語

川底下村の四合院(下)

文・写真 于 前

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 私たちが宿泊先に選んだのは、古い四合院の「正房」で、本来ならこの家で一番身分が高い年輩の人が住む場所だ。部屋の中に入ると、毛沢東の肖像がすぐ目に入ってくる。家族の写真もたくさん飾ってあり、この家の歴史を語っている。やかん、花瓶、窓に張っている新聞、すべてが質朴で新鮮に見えた。

 この家の長男は地味な顔立ちの青年だ。一人1泊10元という安い値段なのに、青年は姉の子どもについては「まだ小さいからお金は要らない」とサービスしてくれた。中学2年生の甥はどう見ても私と同じ背の高さだ。青年のお金に執着しない姿勢に、私たちは好感を抱いた。

 青年は私たちの質問に何でも答えてくれた。この村は95年に北京の新聞で紹介されてから有名になり、映画やドラマの撮影場所にも良く使われるようになったそうだ。青年は「私ももうすぐ結婚する。新しい家を建てて、古い家は民宿としてお客さんを入れて生計を建てるつもりだ」と話した。

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 晩御飯の時間が近づくと、彼は「食べたいものがあれば何でも作る。田舎は野菜や肉が新鮮だから、たくさん食べてください」と言ってくれた。

その晩御飯で私はあることに気づいた。紙のお皿やお碗が出てきたのだ。紙コップで熱いお茶を飲むのは結構、困る。私は青年を呼んで「農村で使うお皿とか出した方が、この家にもっと似合うと思うけど?」と質問した。

 青年は薄い笑みを浮かべた。「お皿なら昔たくさん持っていた。私たちは田舎のモノに価値があると知らなかったから、全部1元で売ってしまった。価値があると知った時にはもう手遅れでした」という答えに私は何も言えなかった。

 食事中に青年のお父さんが現れた。メニューに書いてないものをたくさん注文した私たちがどうも気になった様子で、頭の中に何かがひっかかっている表情だった。

 次の朝、チェックアウトする段になって、私は悟ることになった。請求書の額は、宿泊費の30倍、300元だった。私は驚いてクスクス笑い出した。青年は宿泊費をサービスしておいて、晩御飯をたくさん注文させることが狙いだったのだろう。お父さんは心配して確認しに来たようだ。青年の方が完璧な商売人だった。

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 広い部屋、高い天井、澄んだ空気。深山峡谷の辺ぴな山中にあるおかげで、幸いにも古い街並みが残された集落。古い壁に残されている文化大革命時のスローガン、清時代の家を切り回す格言、観光ブームにどっと入った見物客。

 1泊して、私はこの村の価値をもっと理解できたような気分になった。歴史のある四合院集落の価値は建物だけではなく、ここに生きる人たちもその一部である。彼らの生き方を通して、私は今の時代が少し分かりやすく見えたような気がした。

(02/23)





于 前(YU QIAN)

中国北京生まれ。フォト・ジャーナリスト。現在は東京を拠点に、中国大陸、香港、台湾の雑誌などに日本をテーマとした記事や写真を発表している。著書に「チャイニーズレンズ」(竹内書店新社)。



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