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漫歩寄語

宝との出会い(上)

文・写真 于 前

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 私はよく日本のお宝鑑定番組を見てぽろぽろ笑う。

 持ち主が出した金額と鑑定された値段で様々な反応が出る時、宝から生まれる辛酸苦楽を考えさせられることが多い。

 とくに中国で高いお金を使って軽々と手に入れた骨董品。価値のない贋物だと判明された瞬間、いつも私はテレビの箱から宝の持ち主をぐっと引っ張ってきて、直接話したい気分になる。

 中国では、骨董品のマニアは数えきれないほどいる。骨董品を複製する技術も一つの文化だ。そんなことも知らずに簡単にお金を出して、大きな損をしたら、ただ運が悪かったと片付けることは私にはできない。


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 骨董品のようなお宝を持つことは、2年前の私から見れば、向こうから飛び掛かってくる煙草のケムリのように、一種の挑発を感じさせるだけだ。

 自慢できることがあるとすれば、北京の実家には「于家の宝」というようなものが一つもないことだと思う。父は知識で自分の人生を切り開いた人だが、昔は家や家具さえ全部国のものだった。両親の話によると、30数年前は大学の中に大工工房があった。そこで作ったものは学校の広場に置き、自分の分も回ってくればもらうが、欲が出て自分の家に余分な家具を入れる発想などなかった。

 そんな環境で育った私は、最近心の中に小さなため息が聞こえる。「家に大学特製ブランド家具でも残っていれば、価値が出たのではないか?」

 時代の旋風に巻き込まれた私は、何となく考え方が変わった。骨董品市場に足を運んで、好きなものを探す。そこから見える中国は、ことさら面白い。


 すべての始まりは、兄が住んでいるカナダで両親が半年過ごしたことだった。

 「人生を享受するべきだ」。勤勉節約は美徳だとよく言っていた母が、資本主義的な言葉を突然口にするようになった。帰国して最初にとった行動は、家をリフォームする決意だった。

 両親はともに70歳を超える。リフォームする人達を相手にするには、精力的にも体力的にも難しいのではないかと我々兄妹は反対した。家の内装で問題を起こして、不合格な商品を使わされて病気になった話や、お金があると睨まれて殺される話も耳に入るぐらいなのだ。

 けれども、さすが女性のパワーは凄い。母は強気に言った。「生きている内に一日でも早く、自分でデザインした部屋に住みたい」


 私は心配で一日おきに母へ電話した。「うちは宝物とかないから、(改築中に)何か盗まれてなくなったら新しいものを買えばいい」とくれぐれも言い聞かせた。

 宝物を持ってないことはこんなに楽かと私も感心した。

 しかし「毎日戦っている」と母は言う。

 家の内装が完成した時、私も仕事で北京に帰る機会ができた。家に電話した時、母はそっと警告してくれた。「家に戻って何か変化があっても、黙って聞かないようにしてね」

 「うちには家宝があったかしら?」

 母は困りに困ってついに教えてくれた。「ほかの人たちには価値が無いように見えるのに、本棚一つ分ぐらいの本がなくなった!」。さすがに父はショックを受けて、一週間もベッドに倒れて沈黙したらしい。

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 その話を聞いた私にも、苦くてずっぱい感情が身の内を走った。

 消えた本は父が若い時に読んだロシア語の小説、辞書、文革時代に配られたシリーズ物で、今はお金があっても買えないものばかりだ。小さい時に私が一ページずつ開いて、全部の本の中に書いてある挿絵を指して、物語を教えてもらう為に両親の隣でもじもじしている思い出も残っている。

 リフォームした会社に文句を言っても、その本があったことは証明できないので何の結果も出なかった。

 こういうふうに家にあった本が消えてしまった時、我が家にも家宝といえる宝物があったと初めて家族全員が気づいた。

 そうして、私は残ってくれた本の前に立ち、イカリを感じた!

 何と。ロシア語の本と文革時代の本は全部なくなり、日本語の本は一冊もなくなっていない。意地悪ではないか?!

 「日本語の本も一冊ぐらい盗んでくれ」と心の中で叫ぶ私は、奇妙で複雑な気分に落ちた。


 しばらく両親の前では本棚という言葉さえ口にすることを遠慮して、その間にお宝を入れるため自分がデザインした家具を市場で作ってもらった。

 そして心をこめて作ったものが、更に両親へ迷惑をかけるとは夢にも思わなかった……。

(次回へ続く)

(07/11)





于 前(YU QIAN)

中国北京生まれ。フォト・ジャーナリスト。現在は東京を拠点に、中国大陸、香港、台湾の雑誌などに日本をテーマとした記事や写真を発表している。著書に「チャイニーズレンズ」(竹内書店新社)。



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