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漫歩寄語

長城の外へ(1)

文・写真 于 前

 迷っている余裕すらない大都会・北京から一歩出てみると、風の匂いがした。長城の外に住む人たちの家の扉に入ると、久しぶりに喋り続けたくなる自分がいた。

 首都を囲む輪のような地域で、一つの大きな変化が人々の生活を変えようとしている。かつて静かだった村は、いつの間にか工事現場になって来た…。


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北京から走る長距離バス

 北京市から北に70キロ。延慶県のその村へ行くことを決めた理由は、万里の長城があるからだった。北京市内と比べたら気温が5度も低いことにも、魅力を感じた。現地に住んでいる友達に何回も誘われていた。「夏の北京で人の群れの中に一触即発したくないなら、延慶に来い!」

 彼女は北京徳勝門から“豪華”バスに乗るよう勧めてくれた。この豪華バスは、名前だけのものではなかった。高速道路を走るため、一時間で目的地に着ける。にもかかわらず、たった12元(約180円)の運賃はどう考えても安い。日本の缶ジュース一本のお金を北京で上手に使えば、かなり価値があると改めて分かった。

 北京からバスに乗ってどこかへ行くのは、久しぶりだった。一瞬、自分は皆の仲間に入ったような親しみを感じた。でも座っている人たちの姿を見ていると、不自然なほどに手荷物をしっかり握っていた。どう見ても、私みたいに旅行気分でバスに乗っている人は少ない。独りで見知らぬ人たちと同じ鉄の空間の中にいると思うと、少し不安になった。

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 幸いバスの中のテレビがつき、固まっている空間は少しにぎやかになった。四角の画面の中で動いているのは、モデルのように完ぺきな顔をしている白人の女性たちだった。彼女たちは時々腰をかがめたり、首を突っ込んだりする。とくに目的もなく走るシーンが繰り返し出てきて、画面の方から一種の説明しがたい怪しさが発散されていた。映像に合わせて流れる曲は、中国で十年前に流行った歌だった。字幕も出てきて、カラオケの練習もできるではないか。

 笑わせる目的で作ったものではないのに、どう見ても誰かが適当に映像を拾い、無理に音楽を合わせて作った半製品に見える。すごく変な感じがしたが、メロディーは美しかった。おかけで私は、笑いを中天に投げたいぐらい楽しんでいた。

 北京から郊外に出るバスは、あらゆる環境に住む人たちに合わせるサービスをしているのかもしれない。いったん北京郊外に出たら、客の希望で最寄りの所に下車できる。この精神でバスを運営しているからこそ、地元の人たちに支持されているに違いない。だから、バスはいつでも満員らしい。

 私はバスの中で、瞬時に千変万化している時代にこもごも入り交じる場面が見えるような気がした。この瞬間は今だからハッキリ見えるものかもしれない。

(次回に続く)

(11/16)





于 前(YU QIAN)

中国北京生まれ。フォト・ジャーナリスト。現在は東京を拠点に、中国大陸、香港、台湾の雑誌などに日本をテーマとした記事や写真を発表している。著書に「チャイニーズレンズ」(竹内書店新社)。



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