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漫歩寄語

長城の外へ(2)

文・写真 于 前


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都市から出てきた人

 万里の長城が見え、しばらくたつと目的地に着く。それは八達嶺鎮政府の建物があるところだ。

 中に入ってみると普通の住宅団地が見える。私の友達はその中に住んでいる。住宅団地の隣には、高いコンクリート塀に囲まれた建物が並ぶ。彼女の説明では別荘区だという。自分は貧乏人だから普通のビルにしか住めない、と彼女は自嘲した。

 「ここに住んでいる人たちと同じ空気を吸って、同じ景色も見て、違うのは敬礼してくれる保安官がいるかいないかだけだ!」

 こう力説する彼女の家に入ったら、本当に貧しいかどうかは中に入って見ないと分からないものだと認識できた。彼女の家に置いてある中国の古い家具は、一つ一つが芸術品でもある。その価値を手堅く見積もっても、軽く別荘を買えるに違いない。

 彼女は富を隠すために山奥へ逃げたのではないのか。そう言い出しそうな表情に私はなった。

 さらに私に勉強させたのは、彼女が同じ階に客用の部屋を二つ持っていることだ。気楽に入れる部屋で食事をして、宝が集まっている部屋で話をする。

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 その夜、彼女は教えてくれた。自分の会社を持っていた時にお金があった。偶々、古家具が好きで、中国で安く買える時にたくさん買った。買った時の値段は、今の価値と比べると10分の1でしかなかった。いつかそれを売って、旅に出たいと考えていると。

 彼女は40代で仕事を辞め、北京市から出てこの山奥にやって来た。毎日、山に登る。インターネットで、外の世界とも繋がっている。

 まだ若いつもりでいる私に、彼女はこう言った。「我々が死んだ時に自分の手に残される物は、自分の爪だけだ。だから、のんびりする時間を大事にして」

 ここの深夜はひっそりと静かだ。1本の針が落ちても、その音を耳にすることができる。しかし、なぜか私の心は落ち着かなかった。

(次回に続く)

(11/28)





于 前(YU QIAN)

中国北京生まれ。フォト・ジャーナリスト。現在は東京を拠点に、中国大陸、香港、台湾の雑誌などに日本をテーマとした記事や写真を発表している。著書に「チャイニーズレンズ」(竹内書店新社)。



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