アート沸き立つ「798」(1)
文・写真 于 前
両親が見た現代芸術
北京の現代アートの発信地「798」は、時代の先端に立つ場所になっている。
中国では新しい建物がすごいスピードで増え、かつて光り輝いた建物はいつの間にか消えている。幸い、北京市の郊外にあるこの元国営工場は、都市の発展大潮流を生き延びた。2004年以来、北京に帰ると私は必ず798へ行く。
798は、読みかけの厚い本のように興味深い続きを持っている。初めて798へ行った日のことは、とても印象に残っている。それは2004年冬の休日だった。家族写真を撮る場所として、私は798を選んだ。
50年代に西ドイツの専門家が設計した国営工場の建物は、画的にも面白い。その懐かしい雰囲気は、両親も感動するのではないかと私は判断した。その元工場に芸術家たちが駐在することは、ニューヨークのSoHo(ソーホー)を思い出させるため、姉の子供も興味を持つと信じた。
秘密工場だった798の外観は、とても地味だ。外から見ると、最も光り輝いた時には六つの工場と何万人もの従業員がいたことは想像できない。
冬の太陽は暖かい。つるつるにはげた木の枝は、多少孤独で寂しく見える。長いパイプは四方八方に通じている。英語と漢字の看板が同じ場所にあり、結氷の土地の上で何件もの芸術の作品を並べている……。
すべての景色に興味を持っているのは姉の子供ではなく、私と姉二人だった。姉の旦那さんは無口、両親は並んで歩き、どちらも気楽な表情とは言いがたい。
「この工場は元気なさそうで、何が面白いの?」 母はワザワザこんな遠いところまで来ることに疑問を感じたらしい。
「社会主義国家の大規模な協力で創造された工場が芸術村に変わって行くことは、面白くないですか?」
母は頭を振って「筋道がない」と答えてくれた。
たまたま、あるお洒落な家具屋の前に来て、この続け難い会話が自然にとまった。良く見たら、この店の目玉商品は買い付けの古い商品を改良したものが多い。普通の家具屋より10倍20倍も高い値段をつけていた。両親は納得できない表情で、ずっと頭を振った。
偶然その時、我が家にあった家具と全く同じものが見つかった。竹で作られているそのスーツケースは真っ黒で、とてもお洒落。値段も4000元と高値だった。
「真っ黒にする発想は素晴らしい!」
実際、我が家のスーツケースは悩みの種だった。母が結婚した時に買った記念品だか、どこに置いても目立ちすぎ、どんな家具と並べても家の雰囲気を崩す。母は知恵を絞って、何回も違う色をつけて雰囲気を変えた。最後に緑色にしたら、いっそう目障りになり、もう捨てるしかなかった。
「これは798の面白いところだ。芸術家と商売人たちの完璧な合作である」。私の素直な感想に、両親は特に興味を持たなかった。
両親を798に連れて来たことは間違っていたと、薄々感じた。
二番目に入った場所は、現代感が溢れる画廊だった。高くて大きい天窓は光を満たし、設計もシンプルで味がある。白黒の写真もたくさん展示してあり、古い写真もいい値段をつけている。
両親は興味津々に写真を見ようとした。
でも、母の前にかけてある写真は纏足(てんそく)の女性だった。母は眉をしかめて「今の時代は、このような写真が売れるの?」
私は焦った。母も無理やり纏足をされそうになり、封建的な家庭から逃げ出して自分の好きな生き方を選んだ。纏足の写真を芸術品として飾ることに、激しい反感を持っているに違いない。
その時代に生まれいない私は、それを一枚の写真としてしか見ないのに、母は怒りに火をつけたように、表情もすぐ曇った。
こんな調子だと両親とも更に刺激を受ける可能性が大きい。それを避けるため、私も姉も早く両親を連れて、798から出ようと決めた。
しかし、出ると決めた時に賑やかな場所が私たちの視線を奪った。入ってみたら、仕事場を改造した大きな空間で、新しい展示会を準備していた。昔日の勢いすさまじい真っ赤なスローガンも残っている。
「面白いのではないか!」。私も姉も口を揃えて同じ言葉を口にした。
画廊に展示されている作品は、文革でよく見られるイメージも含まれている。父はそれを睨んで、更に複雑な表情になってきた。
「我々老人はすでにこの時代について行けない」。家族の集いを壊さないため、両親は評論をやめ、外に出て我々を待つことにした。
その後、798は更に有名になった。日本のテレビも798を特集するし、雑誌に写っている写真も現代感が溢れ、最新流行として紹介されている。
このような報道を見る時、私はいつも両親の表情を思い出す。
798で家族記念写真を撮った時に一瞬元気が出た表情。「造反」の腕章を巻いた若い労働者たちを思い出した驚きの表情。「我々は何のために革命したか」と、今にも言いそうな様子。このすべてが私の心に残った。
798の流行の意味と価値は、その後何回も行くことによって更に理解できた。
(次回に続く)
(01/18)