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漫歩寄語

アート沸き立つ「798」(2)

文・写真 于 前


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中国の今が読める

 半年後にまた798へ行った。そこでは芸術以外の産業もどんどん膨らんでいた。

 コーヒー、ピザ、メキシコの家庭料理など、美味しいが値段も日本と同じくらい高い。ヨーロッパの観光客を乗せた観光バスがとまると、ひとしきり香気が鼻につんと来てクラクラした。

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 798はざっと見るだけでも、特別な発見ができる。芸術家の仕事部屋を押し開けて入ってみれば、乱雑ながらも秩序のある空間に、各種の形式主義の作品が見える。798の赤いスローガン、毛沢東、天安門など、中国を代表する新しい画が溢れる。また、部屋の中から飛び出した作品なども、人々の視線を奪う力を持っている。

 かつて威容を誇った社会主義の見本工場は、さっと姿を変えた。商業の匂いがする文化地区からは、どう見ても今の時代が感じられる。同じ塀の中に外国資本の企業と社会主義の国営企業が仲よく共存していることも、当代の中国らしい。もう煙が出なくなった煙突だけが、前と同じ位置にそびえ立っている。

 北京にいる友達と会うたび、私は798の話をする。偶然にも友達のDさんは、自分の会社を798へ移すことを決めた。世界のマスコミに注目される場所で、本や写真を売る仕事を始めたいという。おかけで私は、普通には行けない798の貸借部門へ一緒に入れた。

 責任者の部屋は、一つのビルの中にあった。普通のビルに見える建物に、機械の音が聞こえる。工場の一部は今でも稼動していて、家電製品の部品をつくっている。

 女性労働者たちが同じ仕事着を身につけ、真面目な表情をしていた。その純粋な目つきを見ていると、時代の時計が止まっているかのようだ。別世界の雰囲気があるだけではなく、そこに働く人々も完全に違っている。

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 工場の空き部屋を貸し出す責任者は、喜びに輝くような口調で話しだした。「僕は国のために働いている!」

 長く日本で生活する私は、この力強い言葉を久しぶりに耳にした。彼の説明によれば、工場は空き部屋を貸していくことで、定年退職した従業員を養うことができるという。人民に奉仕する仕事なので、責任が重い。

 とまらないラジオのように話は続いた。「ここにいる芸術家たちも真面目に作品を作ればいいのに、わざと政府を刺激する作品を作っている。政府がやめさせる動きをすると、外国の特派員も一直線で報道して困ります。この仕事は難しい」

 口ではにぎやかな反面、結論は「お金があっても、工場側の審査を受けて空き部屋を待つしかないよ」。話し合って四カ月、まだ結果は出ていない。

 しかし、進みにくいことでも進みたいのは人の心理で、友達のDさんは高いお金を払っても798で会社を作りたいと誓った。情報を世界へ発信するには格好の場なのだ。

 外国の雑誌を見ると、時々798の記事を見かける。流行を切り取る写真は、たしかに魅力を感じる。雑誌に紹介された店を探しに行ったら、それ以上の店が発見できた。雑誌の印刷が終わらぬうちになくなった店もあった。この“風水の肥沃な土地”の見えないところで、激しい競争が繰り広げられている。

 798は沸き立ったお湯のように、イライラしながら盛り上がっている。それは差し迫った現代中国の流行に、ぱったり合っている。現代の中国を読みたいなら、798はとてもいい場所である。

(この回終わり)

(02/08)





于 前(YU QIAN)

中国北京生まれ。フォト・ジャーナリスト。現在は東京を拠点に、中国大陸、香港、台湾の雑誌などに日本をテーマとした記事や写真を発表している。著書に「チャイニーズレンズ」(竹内書店新社)。



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