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漫歩寄語

犬も飲み込む中国(上)

文・写真 于 前


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ペットに嫉妬した日々

 今年は戌年だ。中国では「旺旺(ワアン・ワアン)」という言葉が、あちこち飛び回っている。戌年だからといって「犬」と直接口にするよりも、叫び声「汪」と同じ音の「旺」で表現することは中国らしい。

 「旺」の意味は、盛んでいること。可愛くて、いい予感もするから、明るい雰囲気が溢れる。

 犬の話題になると、私の感想は多い。北京では最近、犬を持つ家庭がすごく増えている。ペットの美容師は、新しい名詞として新聞に発表された。犬に関する商売は、広大な発展の余地を持っている。

 私は日本に住み始めた時、人に言えない悩みがあった。人間は人間を守ることが当然だと思っている私は、犬を連れて得意満面な表情で散歩する日本人を見ると、思わず立ち止まってしまった。「私って、何なのさ」と不満が溢れた。

 誰も気づいてくれなかったのはよかった。本来中国人の私は、犬は犬で、動物を人と同列に論じることはできない、という考えを持っていた。犬に嫉妬するだけでも情けないと思った。

 しかし、人々に愛されている犬を見て、反射的に「ひぇーっ」と感嘆してしまう自分を簡単に変えることができなかった。

 その時の私は、犬について認識が足りなかった。私が中国にいたころは、都市で犬を飼うことは厳しく制限されていた。犬に接する環境もなく、犬を食べたこともなかった。

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 よく考えれば、犬に関する認識は漢字から受け取るイメージが多い。

 動物を使っている中国語表現は豊富で、面白い。虎の場合は「生龍活虎」:はつらつと生気みなぎる意味だ。「蔵龍臥虎」は隠れていて世に現れない人材を意味する。漢字だけで動物の特徴が見え、一つの画面が想像できる。そして、動物に関する確定的な印象が頭に焼きつく。

 ところが、犬になると悪い意味の方が確然多い。中国語で犬は「狗」と書くし、従順な奴隷は「走狗」に過ぎない。男女という漢字の前に「狗」をつけると、とんでもない意味になる。「下品な男女」になるのだ。

 犬という言葉の品性は、どう分析しても嫌な部分しかない。

 犬を飼育することは資本主義の「社会の奇形」と見られる環境に私は育った。犬を抱いて愛情たっぷりに喋っている日本人を初めて見た時、すごい屈辱と距離感に寂しさを感じた。

 中国人がみな、犬を食べるわけでもない。犬の味を知らない私は「中国人は犬も食べるし、猫も食べるよね」と聞かれる時、どうすればよいか分からなかった。

 来日から三年後、初めて中国に帰った時に私はハラハラした経験をした。

 91年夏の日だった。友達と北京郊外へ遊びに出かけた。その当時の田舎は何もなく、お金を出しても農民たちは食事さえ用意することができなかった。

 田舎に多いのは犬だった。私は犬を買おうと半分冗談で言った。1時間後、三人の男たちが本当に、自由市場で生きている犬を連れて戻ってきた。

 村の青年に頼み、生きている犬を処理することにした。

(「下」に続く)

(02/22)





于 前(YU QIAN)

中国北京生まれ。フォト・ジャーナリスト。現在は東京を拠点に、中国大陸、香港、台湾の雑誌などに日本をテーマとした記事や写真を発表している。著書に「チャイニーズレンズ」(竹内書店新社)。



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