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漫歩寄語

お婆さんの胸の内(上)

文・写真 于 前


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●偶然で自然な出会い

 東京では「○○ヒルズ」が流行っている時に、北京にも「○○ローマ花園」がどんどん増えている。

 都市の姿が変わっていく時、無意識に受け止める人が多い。

 また、若い人よりも年寄りの方が、新しい生活への適応にエネルギーがかかる場合がある。

 北京の公園で突然声をかけてくれたお婆さんは私に繰返して同じことを言った。「昔、昔の北京では……」

 お婆さんと知り合った時のことを思い出すと、いまも不思議に思う。

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 それは一年前の夏のある日、私は朝早く天壇公園に入った。他の公園と同じ、歌ったり、ダンスをしたりする人は多くて、更に旅行に来る観光客の姿も見え、熱気にあふれていた。

 私の目の前に皺だらけで、元気のオーラが出ているお婆さんが現れた。目の輝きと、着ている70年代に中国で流行った地味な服装と、手の中に持っているピンク色の扇子は妙に似合っていた。私はしばらくお婆さんを観察して、年寄りでもあきらめなければ、生き生きできるではないかと感心した。

 その時、突然皺だらけの笑顔が止まった。

 「早く北京の古い建物を撮らないとどんどん変わって行きますよ!」お婆さんの方から私に声をかけられた。

 「そうです」

 「私は色々見た人間なので、それを教えてあげます」

 「えっ?それは、それは、是非教えてください。」私は喜んで答えた。

 「じゃ、一緒に家にきませんか?食事が終わってから、昔の北京を案内してあげます」

 「それは……?」。この話の展開は早すぎで、五分間の会話が終わった時、私はすでにお婆さんの後ろについて、全く知らない人の家まで行こうとしていた。

 はきはきと喋るお婆さんを見て、私の頭は疑問でにぎやかになった。一体お婆さんは何を基準に私を信じ込んでいるのか?私はどこから来て、何をしているか、何も聞かずに家まで連れていってくれる理由はあるかしら?そう思いつつも、その時の私は全く知らない人に信頼されている気分も結構気持ちがいいと感じた。

 お婆さんは5歩進んでは止まり、人々と挨拶する、これを見たら、私は更に安心して、勝手にお婆さんの生活を想像した。

 お婆さんを中心に大家族が熱烈に私を歓迎してくれるはず。家の中で子供に尊敬され、孫に愛されているお婆さん。大きな窓がある家に住み、笑い声がひっきりなしに聞こえる……

 あっ、お婆さんの家族に「あなたは誰ですか」と聞かれたらどうしよう?失礼を顧みない訪問は歓迎されるのでしょうか?

 落ち着かない私と比べて、お婆さんは泰然自若としていた。

 その時、私の携帯電話のベルが響いた。

 公園で知り合ったばかりのお婆さんの家に行くことを友達に話したら、電話の向こうが騒ぎ出した。

 「頭は大丈夫なの? 20年前だったら理解できるかもしれないけれど、この21世紀に、どうして知らない人を信じられるの?もし、そのお婆さんが家で倒れて、そのまま死んだら、事件になるし、家の何かが無くなったら責任を取らされるのよ!」

 反論する隙間も残してくれない友人の態度は、心配から怒りへと変わった。

 私に不安はなかった。

 きっと楽しい一日が待っている。

(次回に続く)

(04/28)





于 前(YU QIAN)

中国北京生まれ。フォト・ジャーナリスト。現在は東京を拠点に、中国大陸、香港、台湾の雑誌などに日本をテーマとした記事や写真を発表している。著書に「チャイニーズレンズ」(竹内書店新社)。



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