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胸の中も銀座

2007年02月11日

文・写真 于 前

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 この間、北京に帰った私はある日本人の友達と会う約束した。

 その日本人は電話の向こうで私に「地下鉄のX駅に降りて、銀座で会いましょう」と何の不自然さもなく軽く言った。

 「銀座?ここは北京でしょう?」若いのにボケているなぁと笑った私は、目的地に着いた途端、ビックリして全身が固まった。目の中に入ったのは建物の上に書かれている「銀座」の二文字だった。いつの間に銀座という言葉が日本から北京までに飛んで来たのか!すぐにでも家に戻って「銀座」の二文字の意味を調べて再確認したい気持ちになった。

 東京ではやっているものは北京でもはやる傾向がある。昔、東京ではXXタワーが流行った。その後、XXガーデンに変わり、今度はXXヒルズが目立つようになった。北京でも最近「ローマガーデン」のように、ガーデンの名前を付けた建物がはやっている。それを見た時、笑うに笑えず、なんとも言えない気分を味わった。

 大げさに言うと、北京では名前を付ける暇もないぐらい建物の数が急速に増えている。この十数年の間に、北京市民の住宅環境もかなり良くなった。国家が割り当てていた住宅が、自由に買えるようになった時の衝撃と刺激は、この時代に生きる中国人にしか味わえないでしょう。

 北京にいる友達を見て、目を疑う機会が増えた。みな次々と新居に引越して、ビックリするほど広い家に住んでいる。この前、28歳で230平方メートルの家を買って引越しした友達を訪ね、思わず失礼なことを言ってしまった。「どこからお金が入ってきて、こんな広い家が買えたの?」

「頭金を払えばいいんですよ。広いですか? 思い切り小さい家にしたつもりなのに…。私の友達の知り合いは400平方メートルの家ですよ」。将来にお金を支払っていくことも、若者にとっては新しい生き方なのだ。

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 友達の家族の「家を買う集まり」に参加したこともある。目的地は北京市の朝陽区から車で30分のところにある新しい住宅地。まだ地下鉄が開通してないので、値段も市内と比べるとかなり安い。

 その家のおばあさんが集まりを企画した。おばあさんには息子が3人いる。アメリカで生活している次男が、北京で家を買うことを決心したことが、この家族にとって何より明るいニュース。集まりに、次男は仕事で戻れず、奥さんが代わりにビデオカメラを持って北京にやってきた。長男と三男、それぞれの嫁も来た。

 中国で家を買う現場を見るのはこれが初めて。業者の親切な態度にもかなり感激した。一週間以内に家の購入を決めた客には、住宅に車が付く大きなサービスがある。車が付かなくても、家をさらに安くしてもらった方が良いと思った私は、つい自分の考えをそのまま口に出した。すぐに長男のお嫁さんがぐいっと私の腕をつかんだ。「買った方がいいのよ。どうせ彼らは北京にいないので、車は私たちのものになるの!」

 「ここの家を買おう、買おう」と長男のお嫁さんはかなり興奮した。三男のお嫁さんはなぜか表情が暗く、引いた感じ。次男のお嫁さんだけ、顔色ひとつ変えない。この家を買ったら、車でもめないように、私は心で祈った。

 展示されている部屋を見て「今の中国はすごい」と思った。その部屋は構造もしっかりし、日当たりも最高。1時間回って、家を買うことが大体決まった。 その後の食事会では、やきもちやうらやみの気持ちがぶつかり合うのが、ひしひしと感じられた。長男のお嫁さんと三男のお嫁さんの間に座った私は、後悔した。おばあさんが「重大発表」をしたからだ。「もし、息子がこの家を買ったら、私はここに引越して、この新しい家を管理します」

 その瞬間、三男の嫁が私のももを強く引っかいた。「聞いた?息子のお金は自分のものだと思っているのよ!」。長男のお嫁さんは私の右の腕をぐっとつかんで放さない。「私利私欲むき出しの年寄りの発言だわ」

 私は思った。めまぐるしく変化する中国。「私たちの胸の中もまるで銀座みたい」

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