2008年7月28日
「挙国歓騰」全国が喜びに沸く
「歓欣鼓舞」喜びに躍り上がる
「心花怒放」喜びに心が弾む
「興高採烈」喜び勇む
「喜気洋洋」喜色があふれている
「喜笑顔開」顔が思わずほころぶ
北京五輪開催を間近にした中国人の気持を四字熟語で表現すれば、こうだろうか。
オリンピックの開催をめぐり、日本にいる私はますます北京の夏を懐かしいと感じるようになった。
北京の夏はかなり特徴的だ。気温が高いというのに、エアコンのつく部屋へと逃げ込む習慣がそれほどない。特に古い街胡同に住む人達は暑い日に、外に出る習慣がある。
上半身裸の男性が、暑さなど気にならないといった表情で街に立つ姿や、外にイスを持ち出して小さい机で勉強する子供の姿…。食卓を外に出して食事する家族も少なくない。
ビール瓶を手に、ぬるいビールを痛飲する若者の姿も自然で楽しそう。特に路地に座りこんで通行人を見ながらニコニコするお年寄り達を見ていると何かしら落ち着く。夜になるとオジサンやオバサン達が高架橋の下で踊る風景も不思議で面白い。
オリンピックが始まったら、このような北京の風物詩が自然に見られるかどうか私は少し気になる。
もし、私が北京にいたら、北京五輪開催中の北京人の生活を見てみたい。胡同に住む人達がテレビを外に出して、皆で盛り上がる光景が目に浮かぶ。
特に夏の北京に行く人にお勧めの場所がある。以前ここで紹介した鳥市場である。北京の鳥市場は鳥だけ売っているではなく、北京人が好きなペットや、虫や、花なども売っている。
北京人にはキリギリスとコオロギを飼う習慣がある。キリギリスとコオロギは北京のおじさんたちにとっては単なるペットではなく、慰み物、娯楽の一つともいってもいいだろう。麦わらで編んだかごにキリギリスを入れて、窓の上に掛かるとその鳴き声は立冬まで続く。
北京人には本当にキリギリス好きが多い。その軽やかな鳴き声を聞くだけではなく、闘う姿も楽しめるからだ。良いキリギリスなら鳴き声も体も大きくて、腹が丸い。ひげがきれいについているかどうかも重要である。
キリギリス好きの私はコオロギを買う人の気持が分からなかった。コオロギを闘わせて満足する男性を見ると不信感を感じるほどだ。
初めて、鳥市場にしゃがんで一心不乱にキリギリスとコオロギを買うおじさんを見た時には、その幼稚さに思わず笑ってしまった。
ある日、日本人の友達を連れて、鳥市場で夢中になってコオロギを選んでいる男性に聞いてみた。
「こちらは日本人の友人なのですが、彼女にコオロギの楽しさを教えてあげていただけませんか?」
男性は真面目に考えて話した。
「これは娯楽の一つ。コオロギは単純な虫ではない。たくさん買えば分かる。一地方の水と土は一地方の虫を養う。コオロギの動きでその生まれ場所も分かればプロになるほどですよ」
現在、北京のコオロギ愛好家は2万人といわれる。キリギリスを飼う人はもっと多いだろう。
今、オリンピックをきっかけに、世界がイメージする中国の新たな風景は何かと考える中国人は多い。いわゆる新しい、近代化された中国を外国人に見せたい中国人もいるだろう。
でも、私は思う。本来の姿をたくさん紹介してもらえさえすれば、それが最大の収穫になるのではないか。「中国では貧富の差が激しい」と単純にまとめてしまう傾向に反論するよりも、庶民がのんびりと生活している姿をもっと多くの人に知ってもらった方が意味あると痛感する。