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日本で見る北京五輪

2008年8月16日

  • 文・写真 于 前

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 オリンピックが開幕した。

 人をからかうことが好きな人はオリンピックに絡めて新しい言葉を作り、それがネットを通じて北京で流行っている。

 オリンピックは中国語で簡単にいうと「奥運」となる。この「運」は中国語で「孕」と同じ発音。孕(はら)むということになる。

 そのために、いろんな冗談が生まれた。

 まず「避運」。本来はオリンピックの時に北京から離れるという意味だが、同じ発音の言葉の意味は「避妊」する。

 次に「受運」。これはオリンピックの時に北京に残る人を意味する。同じ発音の言葉の意味は「受胎」する。

 さらに「恭外運」。オリンピックのために外国人を待っている人のことだ。同じ発音の言葉の意味は子宮外妊娠。

 そして「懐運」。外国にいる中国人や、北京に住んでないか、北京へ行ってオリンピックを見たい人のことだ。同じ発音の言葉の意味は「妊娠する」。

 「あなたは受運にしますか、避運しますか」と友達に聞かれた時、しばらく大笑いした。

 実際には私は「懐運」を選んだ。日本でテレビのリモコンを握って、チャンルをかえながらオリンピックを見ている。流行の新しい名詞を聞いた日本人はどう思うか分からないが、私には私なりの解釈がある。中国で普通の市民がこんな冗談を言えるようになったことは一つの進歩と考えるのではないか。

 前々から、「オリンピックの時は中国で」と決めていたのだが、結局、距離をおいて日本でオリンピックを見ている。

 オリンピックが中国で開催できること、中国人がオリンピックに参加すること、私のように誰からの邪魔もなく日本にいながらオリンピック番組を見られること。こんなことは30年前の私にとっては全く想像できない話だった。

 実際、オリンピックとは何かを知ったきっかけは、ニュースや新聞ではく、「燃えろアタック」という日本のスポ根もののテレビ番組だった。日本のバレーボール選手がオリンピックを目指して頑張っている姿を描く物語は多くの中国人を感動させた。隣国日本のドラマは当時、中国では想像を超えるほどの人気を呼んだ。

 その後、中国に外国の情報が少しつづ流れてきて、多くの驚きと戸惑いを感じるようになった。

 「燃えろアタック」の国に滞在して、中国で開催されるオリンピックを見られるとは、とても想像できない話だった。

 私は衛星放送で中国大陸、香港の番組を見ながら、日本の報道もみるのだが、感心することが多い。同じ話題を追いかけていても、違う結論が出てくるからだ。

 先日、中国人の友達に聞かれた。「どうして日本人はよく東京ドームの何倍に相当するという表現をよく使うのか」というのだ。東京ドームをよく知らない中国人にとって、この表現はどうもピンと来ないようだ。私もこのように聞かれて、初めて分かった。長く日本にいる私はこの表現の意味が分かるつもりでいたが、確かに東京ドームの広さがよく分かってないので、何倍と聞いても、その広さが実感できない。まして、東京ドームを知らない中国人なら疑問に感じるのは当然だ。

 中日の間で仕事をする私は北京に帰るとよく船に乗って、自分の気持ちを整理する。北京には700年もの歴史を誇る慈禧水道がある。かつては乾隆帝や西太后が船に乗って頤和園へ行くための専用の運河だった。現在北京では竜船や遊覧ボートに乗って頤和園を訪ねるのが人気だ。その竜船に乗って、北京の風景を眺めると考え方も気持も広々としてくる。

 何回も乗船したら、船には奇妙なパワーがあることに気づいた。普段と違う視野で北京を見ることが出来るからだ。低い場所から頭を上げると、まず空が見える、それから河の両側の樹木の陰に北京市民の姿がゆっくりと移動しているのが見える。子供を抱いてい母親、手を振る子供、ただ座って休んでいるだけのお年寄り・・・。

 普通の生活はこんなに落ち着いて、すばらしいものなのか。大きく息を吸って、違う角度で見慣れた場所を見る。景色の見方を変えただけで、これほど感覚も異なるのか。大きな感慨にふけった。

于 前(YU QIAN)

 中国北京生まれ。フォト・ジャーナリスト。現在は東京を拠点に、中国大陸、香港、台湾の雑誌などに日本をテーマとした記事や写真を発表している。著書に「チャイニーズ・レンズ」(竹内書店新社)。

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