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中国の子育て事情

2009年11月13日

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 スタートラインで負けるわけにはいかない――。

 今の中国では、この言葉を子どもの教育理念として口にする親が少なくない。

 一人っ子政策で生まれた子ども達は小さい時から親の重い期待を背負っている。1歳で算数ができ、2歳で漢字をたくさん覚え、3歳になるとまるで小学生のように毎日様々な科目を勉強する。豊かな時代、子ども達が激しい競争の中で負けないようにするにはどうしたらいいか。そんなことに神経を使う親が大勢いるのだ。

 10月に北京に帰った時、智恵を絞って子どもを教育する親達の姿をあちこちで目にした。

 自信満々で教育理念を語る友達がいる。息子は2歳半。

 「自然の中でのびのびと、健康的に子どもを育てるつもりよ」

 こう断言したが、理想と現実との差は甚だしい。

 家を訪ねたところ、驚いた。

 テレビは教育DVDがつけっぱなし。新しい漢字や英語を復唱する声が部屋中に響き渡る。

 「唐の詩を暗唱してください」

 その子はスイッチを押したように可愛い声で、理解もしていない詩を流暢に復唱した。壁にも漢字。目につくところ、貼り絵だらけだ。

 「将来の競争が激しいから、小さい時に頑張れば、後は楽でしょう。子どもの頭はすごいのよ。水を吸い込むスポンジのように新しい知識を覚えて、何でもできる」

 「あなたのお子さん、いま何を勉強していますか?」

 この質問は挨拶のように子を持つ親の口から出る。

 自分の教育方針はしっかりしていると自慢する友達もいる。彼女の子どもは3歳の男の子。自分の息子が富裕層に入れるように、使うべきなお金は必ず使うと話した。

 友人はこの一年間、家族3人で2回海外旅行をしたという。旧正月にはシンガポール、10月の連休には船で日本に行った。年間2回も外国へ行けたのは普段の節約の結果という。

 彼女は以下のように海外旅行の教育効果をトクトクと説明してくれた…。

 国外への旅は、子どもにとって大きな刺激。旅先で様々な人々と出合い、付き合う能力を育むだけでなく、他の国の言葉を使わないと何も通じないということを肌で感じることができる。最初の旅先をシンガポールに選んだのは子どもを中心に考えた結果。シンガポールは安全な小国。まず、旅行疲れが避けられる。それに英語が公用語だ。ホテルから出なくても、その場で覚えた簡単な英語を使って通じたら、子どもは喜んで英語を使ってみようとする。言葉を覚える価値が分かれば、この旅はもう十分な意味を持つ。幼いうちに英語に興味を持ち、自分から進んで勉強したいと言い出してくれれば、親にとって、この旅行は成功であり、どんなに金を使っても痛くない。

 船旅を選んだのは一回の旅で、韓国の済州島、日本の長崎、福島、鹿児島の名前を覚えられて、世界は中国だけではなく、たくさんの国があって、皆つながっていることが分かるから。船旅は7泊。船上にはロマンがある。船の上で新しい友達ができて、広い空と海を見て、子供は始めて旅の楽しさが分かる。このように価値ある旅は子どものため、家族のためになる。

 子供と一緒に船旅をする時、必要がなければ、船から降りなければ良い。下船すると安いツアーに参加してても、高くつく。今回は鹿児島だけ家族全員船から降りた。大人ふたりで188ドルを払い、子どもと一緒に鹿児島の火山を見た。一人息子の喜びの表情が永遠の思い出として記憶に残り、これも値打ちがあった。

 と、こんな具合だ。

 自分の子どもの話を始めたら、止まらなくなる母親が多い。

 子育てには解答がない。そこにあるのは、母親のパワー。息子のため、娘のため−−。そんな強い思いをひしひしと感じた。

于 前(YU QIAN)

 中国北京生まれ。フォト・ジャーナリスト。現在は東京を拠点に、中国大陸、香港、台湾の雑誌などに日本をテーマとした記事や写真を発表している。著書に「チャイニーズ・レンズ」(竹内書店新社)。

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