現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 中国特集
  4. 漫歩寄語
  5. 記事

結婚と家

2011年9月13日

写真   

写真   

写真   

 中国の女性たちに怒りが広がっているという。原因は家。新しい法解釈によって、離婚すると妻側が家の所有権で不利益を被るようになったというのだ。

 「嫁」という漢字をみて欲しい。「女」に「家」。家があるから女がついてくる。

 今の中国がまさにこれだ。この漢字を作った私たちの祖先も、今の私たちと同じことを考えていたのだろうか。

 20年前、私の知る限り、中国の庶民の間で家が問題になることなどなかった。結婚すれば、勤め先が住む場所を用意してくれたし、貧しくて家を買うことなど考えもしなかったからだ。経済が好転し、世の中が豊かになるにつれ、価値観も急速に変化し、家は結婚の最も大切な条件になってきた。

 ただ、家を持つといっても誤解しないで欲しい。社会主義の国だから、土地の私的所有権は認められていない。土地の購入ではなく土地の使用権を購入することになるのだ。マンションも同様だ。住居用地の場合、使用権の期限は70年間。住宅ならこの用地に家を建てることになる。

 家があるから男性と結婚するという女性。逆に言えば、家を持たない男性はなかなか結婚に恵まれない。結婚したい男性は、貯金するか、借金するか、親から買ってもらうか、何とかして家を手に入れる。持ち家はステータスなのだ。ステータスがなければ、男性は結婚できない。

 打算的?

 そうかもしれない。しかし、これが今の中国の現実なのだ。時代は変わった。

 そんなことなら、賃貸住宅にすれば問題は起きないではないか、という指摘もあるだろう。だが、中国では日本のように賃貸の契約が明確でないケースがままある。いつ、どのような理由で家を追い出されるか、不安なのだ。

 新しい法解釈では、家は名義人のものという。日本では、当然といえば当然、と考える方も多いだろう。

 しかし、中国の女性たちは、家が夫名義の場合、離婚が成立すれば妻は追い出されることを意味すると受け止めている。夫は大家で、妻は間借り人。離婚してしまえば、間借り人は出て行け。これでは男性に有利な分、女性に冷たすぎる。こんな理由で女性たちの怒りをかっているのだ。

 私が初めて日本に来た時、日本では離婚の時の財産分与が大変だと聞いて釈然としなかった。しかし、今、その意味がやっと理解できる。

 中国では、年を追うごとに家の価格が急騰している。若い夫婦では経済的に家を買うのは無理だから、親が結婚前の息子に住宅を買ってあげることも少なくない。

 そこで、こんなことを考える女性も出てきた。

 夫の親が家を買ってくれたなら、いったんすぐにその家を売却し、夫婦の共同名義で買い直す。これにパートナーが応じてくれなければ、結婚はしない。

 愛よりも家、結婚よりも家、なのか。

于 前(YU QIAN)

 中国北京生まれ。フォト・ジャーナリスト。現在は東京を拠点に、中国大陸、香港、台湾の雑誌などに日本をテーマとした記事や写真を発表している。著書に「チャイニーズ・レンズ」(竹内書店新社)。

PR情報
検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介