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7元突入「柔軟性」演出

グラフ
人民元(基準値)の推移

 中国の通貨、人民元の対ドル相場が15日、1ドル=7元台に突入した。05年夏に2%の切り上げを実施して以来、10カ月でわずか1.4%だけ上昇した。為替制度の「一層の弾力性」の象徴と位置づける中国政府だが、為替改革で「牛歩」が続いていることに、対中貿易赤字がかさむ米国はいらだちを募らせている。一方、多くの進出企業を抱える日本は、これから元高のテンポが速まらないか、と気にし始めた。

◆雇用維持を最優先

■中国

 「ほんのわずかな上昇。市場の反響が大きければ大きいほど中国当局は『8元突破』の演出効果に満足だろうね」。「1ドル=8元突破」を、北京の邦銀関係者は冷めた声で突き放した。

 中国の1〜4月までの貿易黒字は338億ドル。前年を6割も上回るペースで膨らんでいる。対して、人民元の対ドルレートは年明け以降、0.9%の上昇。年率換算でたった2%に過ぎない。

 元の変動の「法則」を探る仕事を放り投げた専門家も少なくない。「政府の意向でどうにでも動くようだ」という。結局、15日の終値は1ドル=8.0030元と、8元台で取引を終えた。

 米国からの外圧に屈した印象を与えかねない胡錦涛(フー・チン・タオ)・国家主席の訪米時を外し、米国から「為替操作国」に認定されなかった謝意の表明として、この日、8元を突破させた――。そんな憶測が飛び交う。

 中国紙によると、中国人民銀行は米中の金利差が3%程度であることをあげて、「元相場の上昇が3%以内なら、投資家は米ドルに投資したほうがもうかる」(易綱・総裁補佐官)と指摘。市場関係者の間では、中国当局は年間3%程度までの上昇しか認めず、年末でも1ドル=7.8元台にとどまるとの見方が定着しつつある。

 中国政府は10年まで、毎年900万人の農民を都市労働者として迎え入れる計画だ。06年は都市部の求職者の増加のピークで1400万人があぶれそうだ、という。人民元のわずかな上昇でも競争力が弱まる靴や繊維など薄利多売の輸出産業を、雇用の受け皿として守らざるを得ない。

 中国経済改革基金会国民経済研究所長の樊綱氏は「雇用が最優先だ。それに人民元を3割あげたところで米国の貿易赤字は解決しない。米国は不均衡の是正に自分でやれることをやるべきだ」と話す。

◆遅いテンポ激しい視線

■米国

 主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)などの場でも人民元改革を求めてきた米国政府は「今後の一層の柔軟化を期待している」(高官)と、より速い切り上げや中国経済の制度改革を引き続き求める構えだ。

 米政府は、11月の中間選挙を控えて対中批判のマグマを膨らませる議会の横やりをかわしながら、中国政府に改革を促してゆく手法だ。議会では、年末までに「人民元は7〜10%は上昇すべきだ」(有力議員)との声が出ており、これまでのような遅いテンポの切り上げが続けば、対中制裁法案を選挙前に可決させる可能性もある。

 政権内でも人民元改革の「苦痛を伴うほどの遅さ」(国務省高官)への不満が増しており、「一連の改革をどう実現するかにかかっている」(財務省高官)と、中国を見る視線は厳しさを増している。ブッシュ大統領と4月にワシントンで会談した胡主席は「極端な(貿易)黒字は追求しない」「米企業などの市場参入を促進する」「人民元改革を続ける」「内需拡大に取り組んでいる」など、自らの発言として米国側の要望を「公約」している。

◆当面は静観 急変を警戒

■日本

 「業績への影響は大きくない」(苅谷道郎・ニコン社長)

 15日の決算発表の席上、中国で事業を展開する企業の多くは、1ドル=8元突破を淡々と受け止めた。上昇幅はわずかなうえ、中国拠点との取引もドル建ての場合が多いからだ。

 中国を生産拠点にしているか、販売市場として重視しているか、などで影響も様々だ。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)が昨年12月から今年1月にかけ在中国の日系製造業にアンケートしたところ、回答のあった293社中、11.3%が「人民元切り上げで大きなマイナスの影響がある」と答えた。「若干マイナス」の38.5%とあわせると約半数だ。一方、中国での原材料の輸入コストが下がることなどから「プラスの影響がある」との回答も24.4%にのぼった。

 ただ、元高の「牛歩」がいつまで続くか。

 ユニクロを展開するファーストリテイリングは製品の約9割を中国の提携工場で生産する。原料のほとんどは中国外から調達。商品価格に占める縫製加工賃は10%程度なので、人民元が2割切り上がれば、商品売価に最大2%程度影響する。

 同社は「コスト削減で影響を吸収する努力をする」との構えだが、ジェトロの調査では、人民元の切り上げに対策をたてていないとした企業も2割を超している。日本経団連は「中国の経済実態からすると切り上げは必要だが、急激な為替変動は世界中の企業が困る」(国際協力本部)と指摘している。

◇キーワード

 中国の為替制度 中国人民銀行は昨年7月、米ドルと連動して1ドル=8.28元に事実上固定していた人民元相場を1ドル=8.11元に約2%切り上げ、ドルや欧ユーロ、円など主要通貨の動向を踏まえた「通貨バスケットを参考にした管理変動相場制」を導入した。

 人民銀は毎朝、その日の相場水準となる「基準値」を公布。今年1月からは外資を含む主要15金融機関の意見も聴取しているが、あくまで「参考」で、実態は中国政府が為替介入で厳しく管理している。

(05/16)





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