中国四川省綿陽で16日、到着した胡錦濤国家主席(中央右)を出迎える温家宝首相(新華社)=AP
【北京=藤原秀人】中国を襲った四川大地震の被災地に胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席が16日入った。自ら現場を視察し、被災者を慰問することで、指導部が被害救済を最重視していることを示すのが狙いだ。胡主席到着後に被災地を離れた温家宝(ウェン・チアパオ)首相と同様に、被災者からは大歓迎されている。だが被害が拡大し復興も進まないなか、「指導者効果」の限界もあらわになりつつある。
「震災救援闘争は重大な時を迎えている。あらゆる方法で、分秒を争い、困難・障害を乗り越え、勝利を勝ち取らなければならない」
胡主席は、8千人以上が亡くなった四川省綿陽に向かう専用機の中で、こう指示を飛ばした。綿陽空港では、出迎えた温首相と早速、対策を話し合った。その後直ちに被災地を歴訪した。これらの模様は、中国中央テレビが繰り返し放映している。
中国では、権力の空白を避けるため、共産党総書記である国家主席と行政を総括する首相が同時期に北京を離れるのは極めて異例。また、北京以外の同じ場所で顔をそろえるのは、最近では97年に当時の江沢民主席と李鵬首相が返還式典出席のため香港を訪れたくらいだ。
胡主席の被災地訪問について、四川省成都の旅行会社員の男性(46)は「中央は今回の事態をすごく重視しているんだと実感した。温首相だけでなく、胡主席までもが現地に来た。北京で机の前に座って指示していてもいいのに。なかなかできないことだ」と称賛した。また、綿陽の女性会社員は「精神的に慰められた」と話す。
「建国以来最大の地震」(温首相)という惨事を前に、胡主席は出動を決意したと見られる。ネット上では、「72時間以内」に海外からの救助隊を受け入れなかったことや、救出や道路などの復旧が進まないことなどに不満が相次いでいるが、胡主席への批判はほとんど見あたらない。
ただ、被災地では被害が広がり続けているほか、避難民は厳しい生活を強いられ、余震や二次災害におののいている。「指導者の慰問はありがたいが、事態の根本的解決にならない」という声も出ている。
一方、胡主席がいつ被災地を離れるのかも、微妙な問題だ。早すぎると被災者を落胆させる恐れがある。温首相は5日間、被災地にとどまった。だが、ロシアのメドベージェフ大統領が23、24両日、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が27日から30日まで、それぞれ訪中するなど重要な外交日程も迫る。トップ慰問という最高の切り札を切った後、胡主席がどういう決断をするか注目される。
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