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ドイツ人と結婚したら…、名前はどうなるの?

2005年05月17日

 同じ職場の女性で結婚するという人たちのほとんどは、結婚後の姓をどうしようかと一度は悩むようで、最近よく「ドイツではどんな風になってるの?」と聞かれます。そんな相談をしてくる女性はたいてい、籍を入れないで自分の姓を貫く、もしくは籍は入れても、旧姓を通称として届け出て、職場をはじめ、仕事での呼び名はそのままにする、という二つの選択肢の間で揺れています。

 ドイツではどんな風になっているのでしょうか。ドイツの婚姻法にもとづきドイツ人と結婚したという個人的な体験をもとにお話しますと、例えば日本女性の朝日さんが、ドイツ男性のホフマンさんと結婚することになったとします。教会で式を挙げる場合でも、まず市役所の婚姻に関する契約専門の部署に届け出ます。すると、担当の係官は、結婚後の苗字をどうするかについて聞いてきます。

 選択肢は次の4つ。1)ホフマン、2)アサヒ、とそれぞれの苗字がまず可能性として挙げられます。それから、ドイツでは二人の名前をハイフンで繋いだいわゆるダブル・ネームが普及していますから、3)ホフマン・アサヒ(Hoffmann-Asahi)、それと順序を逆にした4)アサヒ・ホフマン(Asahi-Hoffmann)です。

 結婚後も、親からもらった姓を名乗りたいという女性(特に仕事をもつ女性に多いのですが)の場合には、このダブル・ネーム(ドイツ語でDoppelname)を選択することがよくあります。メディア関連、あるいは大学関連の職場でこのダブル・ネームの多いこと!。自立した女性のアイデンティティー確保という名目で、このダブル・ネームが急速に普及し始めたのは、70年代後半といわれています。

 でも、職場への女性進出が急速に増え始めた80年代初頭ぐらいまでは、長いダブル・ネームが煩わしくて、最初の方の姓だけを略して呼んでしまい、そう呼ばれた女性が抗議したり、言い直させたりといったこともよくありました。

 「とにかく長ったらしい名前は呼びにくいし、覚えにくいし、困るんだよねえ。自立した女性っていうのは、本当にやっかいだなあ、まったく」なんて思わずぼやく男性がいたらもう大変です。女性たちの顰蹙(ひんしゅく)をかっていた場面をよく見かけました。

 では、ダブル・ネームをもった人とダブル・ネームをもった人とが結婚したら、どうなるのでしょう。4つの名前をつないだ姓っていうこともあるのかと思うでしょう? それでは、「寿限無」の落語のように、長い長い名前になってしまいます。

 もちろん、そういうことは想定済みだったようで、ドイツでは夫婦共通の家族姓というのを役所に登録することになっています。それはどちらかの姓から選択することになっていて、先程のホフマンさんとアサヒさんの場合には、ホフマンかアサヒのどちらかを選ばなくてはなりません。子どもが生まれた場合には、それが子どもの姓になるということです。

 私の場合はどうだったか、といいますと、Suzukiを先頭にもってきたSuzuki-ooooooを選択しました。とはいえ、日本とドイツとの国際結婚(しかもドイツの婚姻法に基づくドイツでの結婚)でしたので、日本名の方は、鈴木を漢字のままで残しました。婚姻後、在ドイツ大使館を通じて、日本の家庭裁判所に届け出て、日本で親の戸籍から私の戸籍を独立させるときには、鈴木という姓で新たに戸籍を作ることになりました。

 日本では、外国人は戸籍に入ることはできません。ドイツ人某とドイツの婚姻法により結婚したという説明書きが添えられ、日本では私一人の戸籍が新たにできたわけです。

 ドイツ名の方はダブル・ネームにしたので、それからは、ドイツ語で署名すべきものはすべてダブル・ネーム。銀行の口座名義もダブル・ネームにしたので、大変です。最初に名義変更をしたときのサインが、その後も通用することになるので、自分の名前に加えて、相手の名前もきちんと添えられていないと、口座からお金をおろすこともままなりません。

 そうすると、サインも新たに必要です。欧米では、もちろんドイツでも、自筆のサインがハンコ代わりです。日本で、中学に入って初めて英語を習ったときに練習したあの筆記体のお手本通りに書いていたら、それこそあっさりサインを真似されます。

 そこで、ドイツでの結婚前、在独数十年の日本の知り合いの助言で、芸能人みたいな特徴をもったサインを考案しました。市役所での結婚式で、ちゃんとしたサインができるようにと、何回も何回も練習して、それは大変だった、ということを思い出しました。


プロフィールプロフィール

プロフィール

鈴木 晶子(すずき・しょうこ)

 京都大学大学院教育学研究科教授。上智大学文学部、同大学院文学研究科修了。1982年から1989年までドイツ・ケルン大学に留学。戸板女子短期大学助教授を経て、1997年から京都大学教育学部助教授、2003年から現職。専門は教育哲学、思想史、死生学。

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