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若い優秀な音楽家が集まる、ドイツ唯一の国立音楽団体、ドイツ・ナショナルユースオーケストラ(BJO)=BJ0提供 |
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高齢者の音楽ファンが運営する室内楽フェスティバル「シュパヌンゲン」の会場内部=岸写す |
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Dさん自宅に集まり、音楽の話に耳を傾ける人々=岸写す |
ドイツの義務教育から音楽の授業がほとんど消え去って四半世紀がたちました。これは文教予算削減のあおりを受けたものですが、音楽をしたい子、楽器演奏を習いたい子供は、放課後に校舎などを使って行われる、公的支援のムジークシューレ(青少年音楽学校)へ行けばよいというのが理由でもありました。
ムジークシューレは、ドイツのほとんどの市町村に設けられています。わずかな授業料で生徒は先生と1対1で器楽のレッスンなどが受けられます。このムジークシューレには幼児も通えるし、空きさえあれば大人も入学できます。
ドイツには年齢別の青少年コンクールがあります。小さな自治体のコンクールで選抜された子供は、その次は地区、そして州、国と段々と大きなコンクールを目指します。これが今日のドイツでは、音楽専門教育のひとつの核になっています。
才能ある子供たちは、この青少年コンクール段階からプロへの道を歩んで行きます。世界的ヴァイオリニストのアンネ・ゾフィー・ムターもフランク・ペーター・ツィンマーマンも、こうした国内の青少年コンクール出身で、どの国際的なコンクールにも出場していません。
これらコンクールの入賞者を集め組織したのが、ドイツ唯一の国立音楽団体、ドイツ・ナショナルユースオーケストラ(BJO)です。このオーケストラは16歳から19歳までの男女で組織され、年4回ほど合宿をして練習します。著名なオーケストラのメンバーなどから楽器ごとのパート・レッスンを受け、そのあと指揮者が加わり、コンサートの練習が続きます。これが終わると、ドイツ内外のコンサート・ツアーに旅立ちます。
BJOは、この7月に音楽監督のゲルト・アルブレヒトに率いられ、愛知万博とドイツ年の行事に参加するため初訪日します。ドイツの若者達の音楽がどれだけ新鮮か、この日本公演はお聴きになることをお勧めします。
ただ、この若い音楽家がみなプロになるかというと、そうでもないところがドイツ的です。音大に進まず一般の大学へ進学し、弁護士、検事等、法律家になる人、医師になる人、実業界に進む人等々と、メンバーの半分ほどは音楽とは別の道を歩んでいます。
こんなこともありました。かつてケルン市の助役が、先に亡くなったチェリストのジークフリート・パルムと一緒にチェロの二重奏をしたことがあります。これがプロ顔負けの素晴らしい演奏技量でほんとうに驚きました。60歳前後の行政官のトップが激務の間に、いったいいつ練習していたのでしょうか? ドイツには、こういう隠れた市中の名演奏家がたくさんいます。
高齢者の音楽ファンが多くいることも見逃せません。これらの人たちは手弁当で若い音楽家を支援しています。今月開かれたピアニスト、ラルス・フォークトが主宰する室内楽フェスティバル『シュパヌンゲン』は、リタイアした音楽ファンによって維持、運営されています。会社社長だった人、役人だった人、病院長だった人等々、みんなフォークトのファンであり、フェスティバルの組織づくり、スポンサー集めや広報、チケット販売やプログラム冊子の製作など、これら高齢者のパワー抜きにフェスティバルはあり得ません。
このフェスティバルはアイフェル山地の山間の水力発電所を会場に開かれます。この発電所は今年建設100年を迎えたユーゲント様式の美しい建物です。ここの古い2基の発電機の間にステージを設け、演奏中は全ての発電機を停めます。このフェスティバルは今年8回を迎えましたが、年々名声が高まり、今はチケットが早々と売り切れるコンサートも続出、近隣諸国からの訪問者も増えています。
私の知り合いに著名な公認会計士のDさんがいます。彼はいま70代半ばですが、10年前に引退し、大学の聴講生になり音楽学を学び始めました。そして最近は年2回、自宅に80人ほどの音楽ファンを招き研究発表をしています。今年のテーマはマーラー、来年はモーツァルトです。
この研究発表に集まる人は70歳前後ですが、大小フェスティバルの賛助会員などをしている人が多く、みんな熱心にDさんの話に耳を傾けています。発表のあとは広大な庭に出て、音楽の話に花を咲かせ、美味しいワインとカナッペを楽しみます。
ドイツの音楽は、経済停滞、財政逼迫の中で、こんな高齢者パワーがしっかり支えているのです。