チームメートと談笑しながらストレッチする本田=小田写す
地中海の青と、この地方特有の白い建物が、コントラストを生み出すスペイン・アンダルシア。海の向こうはアフリカという温暖な地で、CSKAモスクワに移籍したばかりのMF本田圭佑は戦っている。「そのプレーじゃだめ。相手に止められる」
チームは、2月24日の欧州チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦と3月のロシアリーグ開幕に向けてスペインで合宿中。そのセットプレー練習の一コマだ。様々なパターンを試す中、チームに合流して1カ月の新参者は「完璧(かんぺき)ではない」英語で考えを首脳陣に伝えた。「チームのためにも、はっきり言わないと」。勝ち気な性格の23歳は新天地でも「らしさ」を失っていない。
1月、袖を通すユニホームは、オランダ・VVVフェンロの黄色から、モスクワの青と赤に変わった。背番号は7。背中にはロシア文字で名前が書かれている。「僕がステップアップするには、フェンロであと1、2年を過ごすのは時間の無駄だと思った。モスクワはレベルが高い」。1911年に創設されたモスクワはロシアリーグで3度、旧ソ連リーグで7度の優勝を誇る。09年には一時、ジーコ元日本代表監督が指揮を執った。
フェンロは本田のチームだった。攻撃をつかさどり、彼を中心に回る。それを捨てた。「リスクはある。でもリスクを乗り越えた時には、それなりに見返りがある。それに挑戦したくなるのが僕の性格ですから」。挑戦を楽しむかのような口ぶりだ。
ただ、現実は楽しめるほど甘くはない。日本語の通訳はいない。時には練習内容が分からず、右往左往する。紅白戦ではフリーでいても、パスがこない時が多い。「ヘイ」と叫ぶ声が岩山に囲まれたグラウンドにむなしく響く。「こっちのプレーの引き出しを知ってもらっていない。試合で活躍しないと信頼が得られない」。攻撃陣にはセルビア代表のMFクラシッチ、チェコ代表FWネチドら欧州の代表選手に加え、ブラジル選手もいる。その高いレベルの中で、フェンロで築き上げたものだけでは通用しない。
だから、練習では妥協をしない。ダッシュやランニングでは先頭を走る。「1日1日が勝負。自分に勝たないと」。仲間がいいプレーをすれば「イエス」「ブラボー」と声を上げ、拍手する。これだけほめるのは本田だけ。「悪気はないんだろうけど、ロシア人は閉鎖的だから、こっちから近寄らないといけない」。自分なりのコミュニケーションを模索している。
練習でくたくたになった夜、本田はチームのホームページを作成する会社に呼び出された。「今季の重要な7人」に選ばれたため、写真を撮影しなければならなかった。カメラマンが言った。「右足でクロスをあげるように足を振り抜いてくれ」
間髪入れずに返した。「オレの利き足は左だ」。どの地に行こうが、本田は本田だ。(小田邦彦)
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オランダ |
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スペイン |
7月11日現在