(W杯11日、スペイン1―0オランダ)
スペインが通したパスは542本で、オランダは294本。決勝でも圧倒し、パスサッカーの真骨頂を見せた。
パスを通すには相手やコースがなければいけない。両チームの選手で動いた距離が14キロを超えたのは、スペインの中盤の要、シャビ、イニエスタの2人だけ。パスを出しては動いている。
2人をはじめ、スペイン代表には、バルセロナ所属の選手が7人おり、オランダ戦は6人が先発した。スペイン代表のサッカーはバルセロナのやり方で機能している、とされるゆえんだ。バルセロナのあるカタルーニャ州サッカー連盟技術部長のジョアン・ビライボスクさんも「いまの代表はバルサを見るようだ」と言う。
その神髄は攻守の動きにある。バルサで18年間ユース指導に携わったビライボスクさんはスポンジにたとえる。「ボールを奪われた時はスポンジが縮むようにボールに向かって集まり、ボールを運ぶ時は広がる」。守る時には相手のパスコースを限定し、運ぶ時は自分たちの選択肢を多くするという発想の上での動きだ。「守る時には前に出る」という動きも含めて、普通は逆を考えるものだが、発想をあえて逆転させている。
これらの考え方は選手、監督としてバルサを率いた元オランダ代表主将クライフがもたらしたという。それがこの決勝でオランダを倒す原動力になるとは歴史の皮肉だ。
オランダ発バルセロナ経由がスペイン全土に歓喜をもたらした。フランコ独裁時代に深まった地域対立を念頭に、デルボスケ監督は「スポーツは多くのものをもたらす。我々が地域の関係にも良い影響を及ぼすことができればうれしい」と連帯感が強くなることを期待した。バルサの宿敵、レアル・マドリードで成功した監督の言葉だから重みがある。
オランダの荒っぽいプレーにパス回しで向かい続けたデルボスケ監督は「優勝は美しいサッカーへのご褒美だ」。アパルトヘイト後の人種融和、国家建設もテーマだった今W杯。ピッチの内も外も進歩に意欲的なスペインが初優勝を飾るにふさわしい場所だった。(村上研志)
◇
イニエスタ(ス) 「言葉にならない。本当に驚きだ。まだ信じられないよ。ただただ幸せだ。早く家に帰って、喜びたい」
![]() オランダ |
0 | ― | 1 |
![]() スペイン |
7月11日現在