COLUMNコラム

【女性編】 100㎞歩けた自信が、新たな挑戦へ誘う

2023.5.26

ウォーキングを指導するやりがいについて、笑顔で話す柳澤さん 第5回「東京エクストリームウォーク100」のスタートを待つ諸橋奈美子さん=2022年10月、小田原城址公園

100㎞を26時間以内に歩ききる「エクストリームウォーク(XW)」の参加者男女比は3対1。トライアスロンのそれは9対1と言われ、東京マラソンはXWとほぼ同じくらい。やはり、100㎞を歩くという挑戦は、体力的に非常に厳しい印象がある上、夜道を歩く不安が、女性の参加を躊躇させているのかもしれません。しかし、「100㎞ウォークにはまっている」女性は確実にいます。何度も大会に参加した女性に大会の魅力を聞きました。


2019年の第1回大会から東京大会5大会にはすべてに出場している諸橋奈美子さんは、この春も挑戦する。「長距離ウォーキングはそれほど男女差が出ないと思う。耐久力のある女性は多いし、むしろ体重が重い男性の方が不利かもしれないですね」。


きっかけは友人からの誘いだった。しかし、友人は抽選で落選し(第1回は抽選で500名定員。倍率は3倍強だった)、結局その友人のお母さんと二人で参加した。もちろん、100㎞を歩き続けることがどんなことかまったくイメージがつかなかったし、どんな服装や装備がいいのか、夜間、歩き続ける状況もいま一つ想像できなかった。しかし、2012年から毎年夏、富士登山をしていたので、「できるかな」と思って挑戦したという。


会場に到着すると、トレイルランなどに参加するような「カッコイイ」いでたちの参加者が多く、気分も高揚した。スタートしてしばらく行くと、ゼッケンをつけた人が次々と歩いていくのを見た通りがかりの人に、「何をしているんですか?」と尋ねられた。「東京まで100㎞を歩くんです」と答えると、驚かれて応援の言葉をもらったのはうれしかったし(その後、XWに参加する度に、同じように聞かれるのがちょっとおもしろい)、チェックポイントでの「お疲れさま」の声がけもとってもうれしかった。

第1チェックポイントに到着した諸橋さん(左)=2022年10月、神奈川県平塚市
第1チェックポイントに到着した諸橋さん(左)=2022年10月、神奈川県平塚市

藤沢を過ぎて陽が落ち、いよいよ夜間のウォーキングに入ったけれど、コース上には誘導係のスタッフの姿があり、前後には同じゼッケンをつけた参加者の姿もあった。「一人で参加したとしても、夜間ひとりぼっちで歩くような怖さはないな」と、安心して歩いて行けた。
コース上にコンビニも多く、食べ物やトイレの心配も少ないのも良かった。


辛くなったのは50㎞を過ぎてからだった。
ペース配分が分からず、最初から頑張って歩いていたので、50㎞地点に到着したときには疲労もたまってきていて、「まだ半分しか来ていない」としか思えなかった。歩いても、歩いてもゴールに近づかないような、遠く長い道のりに感じた。


それでも、マメもできず、思った以上に身体のダメージが少ない状態で、23時間台でゴールした(その後は21時間台に!)。拍手で出迎えられて、本当にうれしかったし、ゴール会場で会話した男性参加者が、「走った方が楽だった、二度とやりたくない」と話したことで、「すごいことができたんだ!」と、改めて認識したという。

富士山の頂上に到着!=2022年8月、諸橋さん提供
富士山の頂上に到着!=2022年8月、諸橋さん提供

その後、XW以外の長距離ウォーキングの大会にも参加するようになった。「まさかこんなに、はまるとは思わなかった」。
はまった理由は「自信がついたからかな」と話す。100㎞を歩く前は、どちらかというと消極的だった。「できることなんて特にないです、という感じだったかな」。でも今は違う。 「ウォーキングと全く関係のない時でも、『私は100㎞歩けるんだ』と思うと自信がわくし、何でも気になることは積極的にチャレンジするようになった」。
昨年(2022年)、富士山を32時間以内で1周(125㎞)する大会にも挑戦。諸橋さんにとって、最長の距離の挑戦となったが、27.5時間でゴールできた。
その2カ月後、夏の富士登山でも新たな挑戦をした。1合目まで10㎞ほど離れた「富士山駅」(富士吉田市)からスタートしたのだ。午後2時ごろからスタートして、頂上で朝を迎えて再び下山、という約21時間の道のりだったという。


「大人になるとプライベートの目標がないことが普通、と言う人がいますが、私は今、やりたいこと、やってみたいことが多すぎて、すごく忙しい」。

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