透明なガラスが砂からできているというのは意外じゃろ?ガラスをつくるにはこの砂を1,700℃以上に熱して溶かす必要があるんじゃが、そんなに高い温度にするのは簡単ではない。そこで、もっと低い温度で珪砂が溶けるようにするためソーダ灰というものを入れ、さらに水に溶けないガラスにするため石灰も加える。つまり珪砂とソーダ灰と石灰がガラスの主な材料というわけじゃ。
ところで水はふつうの状態では「液体」、沸騰させて水蒸気になると「気体」、凍らせて氷になると「固体」と呼ぶのは知っておるね?ではガラスは何じゃろう?実は液体かもしれんと言ったら君は信じられるかね?
すべてのものは、原子と呼ばれるとても小さな「つぶ」でできておる。そして固体の場合、「つぶ」はその物質ごとに決まった並び方をするものなんじゃ。ところがガラスはこの「つぶ」の並び方がバラバラで、その様子は液体に近い。身近にたくさん使われておるガラスじゃが、液体とも固体ともいえるような、なんともふしぎな素材なんじゃよ。
透明なガラスが砂からできているというのは意外じゃろ?ガラスをつくるにはこの砂を1,700℃以上に熱して溶かす必要があるんじゃが、そんなに高い温度にするのは簡単ではない。そこで、もっと低い温度で珪砂が溶けるようにするためソーダ灰というものを入れ、さらに水に溶けないガラスにするため石灰も加える。つまり珪砂とソーダ灰と石灰がガラスの主な材料というわけじゃ。
ところで水はふつうの状態では「液体」、沸騰させて水蒸気になると「気体」、凍らせて氷になると「固体」と呼ぶのは知っておるね?ではガラスは何じゃろう?実は液体かもしれんと言ったら君は信じられるかね?
すべてのものは、原子と呼ばれるとても小さな「つぶ」でできておる。そして固体の場合、「つぶ」はその物質ごとに決まった並び方をするものなんじゃ。ところがガラスはこの「つぶ」の並び方がバラバラで、その様子は液体に近い。身近にたくさん使われておるガラスじゃが、液体とも固体ともいえるような、なんともふしぎな素材なんじゃよ。
しゅわしゅわと泡の出る入浴剤は気持ちがいいものじゃ。あれは重曹(炭酸水素ナトリウム)とフマル酸というものからできておる。重曹はスーパーやドラッグストアでは掃除用の洗剤コーナーなどで売っておるし、フマル酸は食品の酸味料などに使われることが多い。この重曹とフマル酸は、粉末のまま混ぜても何も起こらんのに、水に溶かすと化学反応が始まって二酸化炭素(CO2)を出すんじゃ。
重曹は掃除や洗濯用にも使われるぐらいじゃから皮膚の汚れを落とす力があるし、お風呂から上がったあとはその水で浴槽の掃除もできる。そして二酸化炭素は血管を広げて体を温めてくれる効果があるんじゃ。重曹というのは、実に入浴剤にぴったりの素材だと思わんかね?
重曹とフマル酸と片栗粉を使えば、泡の出る入浴剤はおうちでも簡単につくれるぞ。フマル酸が手に入りにくいときはクエン酸でもよい。好きな形と香りのオリジナル入浴剤をつくれば、お風呂の時間がきっとますます楽しくなるぞ。
〈入浴剤のつくり方はこちら〉
https://www.agc.com/hakken/seikatsu-iryo/027_bath-bombs.html
えんぴつの芯は、黒鉛という炭の一種を粉にして、粘土とまぜて焼き固めてつくる。そして紙というのは、ツルツルしておるようでも顕微鏡で見ると表面はけっこうでこぼこになっておるんじゃ。このでこぼこに黒鉛の芯をこすりつけると、削れてこまかい粉になり、紙のでこぼこにくっつく。これがえんぴつで字が書ける仕組みじゃよ。
ところでえんぴつには「H」や「B」という記号が書いてあるじゃろ?「H」は英語で「かたい」という意味を表す「Hard」の頭文字じゃ。「H」よりも「2H」「3H」と数字が大きくなるほど芯がかたくなる、つまり紙にこすりつけてもなかなか削れないので、書ける線の色はうすくなっていく。そして「B」は「黒い」という意味の「Black」の頭文字で、「2B」「3B」と数字が大きくなるほど芯がやわらかくなり、より黒い線が書けるというわけじゃ。
ちなみにえんぴつというのは漢字で「鉛の筆」と書くじゃろ?これはむかし、線を引くときに鉛の棒を使っていたことのなごりと言われておる。いまの鉛筆に鉛は使われておらんぞ。
今のように暑い季節になると、食べものはすぐ冷蔵庫にしまいなさいとおうちの人に言われたことがないかね?冷蔵庫に入れるのは、食べものを腐りにくくするためじゃ。では、「腐る」とはどういうことじゃろう?それには細菌が関係しておる。
細菌は身のまわりに無数にいる微生物の一種で、空気中にもたくさんの細菌がただよっておるし、君たちの体やおうちの食器にもたくさんの細菌がくっついておるはずじゃ。え、こわいって?大丈夫、ほとんどの細菌は人間にとって無害なんじゃ。乳酸菌や納豆菌のように役にたつ細菌もたくさんおるぞ。「腐る」というのは、人間にとって有害なものを出す細菌が、自分たちの仲間をどんどん増やしていくことを言うんじゃよ。
細菌が活動しやすい条件は三つある。栄養があること、水分があること、そして暑すぎず寒すぎないぐらいの温度であること。逆にいえば、この条件がそろわなければ細菌も簡単には仲間を増やせない。その点、冷蔵庫のなかは温度が低く、食べものはなかなか腐らないというわけじゃよ。ただしペットボトルや缶詰のように開けていなければ冷蔵庫に入れなくてもよい食品もあるので、保存法をよくたしかめるといいぞ。
ものが目に見えるというのは、ものに当たってはね返された光が目に届くということなんじゃ。このはね返りのことを「反射」といって、鏡はふつう、反射が起こりやすい二つの素材を使っておるぞ。それはガラスと銀じゃ。
銀は、当たった光をほぼ100%反射するという性質を持っておる。じゃがそこで気をつけなければならんのは、その銀がピンとまっすぐになっておるかどうかじゃ。アルミホイルにも顔はうつるが鏡のようにはきれいに見えんし、スプーンに顔をうつしても、ひっくりかえったりしてなんだかおかしな顔に見えるじゃろ?
鏡がきれいに見えるためには、光をまっすぐひとつの方向にだけ反射しなければならん。そのためには、たいらでゆがみのないガラスに銀をはることが重要なんじゃ。でこぼこのあるガラスや場所によって厚さのちがうガラスだと、スプーンやアルミホイルのような、あまり役にたたない鏡になってしまうぞ。
建物のガラスというのはふつう無色とうめいじゃから、どれも同じに見えるじゃろ?でも本当はガラスにもいろんな種類があって、目的や使う場所によってそれぞれちがったガラスが活躍しておるんじゃ。
たとえば君たちが通う学校では、たまに元気のよすぎる子どもが窓にボールをぶつけてしまったりもするじゃろう。その時すぐにガラスが割れたり、とがった破片が飛びちったりするようではとてもあぶない。それに災害時には学校の体育館が近所の人たちのひなん場所になることもあるから、台風や地震にも強いガラスのほうが安心じゃ。こうした理由から、学校では割れにくい強化ガラスや、2枚のガラスの間に特殊なフィルムを入れて割れても飛び散らないガラスが使われることが多いぞ。
じゃが、もしも火事が起こったときは、消防隊がすこしでも早くなかに入れるように、ガラスが割れてくれなければ困ってしまう。どこかで赤い三角のマークがついた窓ガラスを見たことがないかな?あれは「ここは割りやすいガラスです」という目印なんじゃよ。
建物の塗りかえをするときは、作業をする人たちが動くための足場を組んだり、壁や屋根をきれいに洗ったり、ペンキを塗る以外にもやることが多いんじゃ。ふつうの家でも工事には10日から2週間ほどかかるようじゃから、展望台のあるタワーや海にかかる橋のような大きな建物では、どれだけ手間と時間がかかるか想像もつかんのう。
東京タワーの場合、1回の塗りかえには1年以上、のべ数千人の職人さんが必要になるそうじゃ。では明石海峡大橋や東京ゲートブリッジのような大きな橋の場合はどうか。このふたつの橋では、フッ素樹脂という素材を使った特殊なペンキを塗っておる。ペンキが弱ってはがれてしまう大きな理由のひとつは太陽の紫外線なんじゃが、フッ素樹脂というのは紫外線にとても強い。つまり、ふつうのペンキよりもずっと長いあいだ塗りかえをせずにすむんじゃよ。
塗るのが難しい場所なら、どうやって塗るかで悩むより、なるべく塗り直さなくてよい方法を考える。君たちも何かで困った時は、こういう逆転の発想をしてみるのもよいぞ。
たとえばお店でもらうポリ袋の原料「ポリエチレン」は、石油を分解してできる「エチレン」という化学物質に熱や力を加えてつくるんじゃ。英語のプラスチックという言葉は「自由に形を変えられる」という意味で、身のまわりのあらゆる場所で色や形を変えたプラスチックが活躍しておるぞ。
じゃがそんなに便利なプラスチックも、ゴミとして捨てられると分解されず何百年も自然の中に残ったり、燃やすと有害物質を出したりすることがある。そこで最近では、微生物に分解されて土にかえるプラスチックや、植物由来の原料を使ったプラスチックのような環境にやさしい素材の研究も進んでおるんじゃ。
お店でもらうレジ袋が7月から有料になったのは、プラスチックのゴミを減らすことと、原料の石油をなるべく節約することが主な目的じゃ。また同じプラスチックでも、原料の6割が天然の塩からつくられる塩素で、石油は4割だけしか使わん「塩化ビニル」もある。こうした素材をうまく活用することも大切じゃよ。
うすい金属の板を手でゆっくり曲げていくと、はじめのうち手をはなせば板は元にもどるが、そのまま力を加え続けると曲がったままになってしまう。ではガラスの板で同じことをするとどうなるかわかるかね?
軽く曲げただけなら手をはなすとまっすぐになるのは同じじゃが、元にもどれる限界をこえるとガラスは「割れる」。曲がったままの状態では安定せずに、割れてしまうということがガラスの大きなとくちょうなんじゃ。ところが最近は折りたたみ式スマートフォンの登場にあわせて、日本でも曲がるガラスの開発が進んでおるぞ。
ガラスを曲げても割れないようにするには、1ミリよりももっと薄くしていく必要があるそうじゃ。それだけ薄くしながら、引っかき傷や曲げたときのシワがつかない強さにするのは簡単なことではない。じゃが、この曲がるガラスが一般的になれば、いずれスマートフォンはたたんで持ち歩き、使うときだけ開くというのが当たり前になっていくかもしれんの。ちなみにガラスを高温で熱すると、溶けることはあっても燃えることはないぞ。
「ヒートアイランド現象」という言葉を聞いたことがあるかな?ヒートは「熱」、アイランドは「島」のことで、地図のうえに気温を色分けしていくと、まわりよりも気温の高い場所が島のように浮かんで見えることからこう呼ばれるんじゃ。そしてこの現象は、自然の多い地方ではなく都会で起こることが知られておる。
その大きな理由は、地面や建物の表面がコンクリートなどでおおわれていること。土や植物は、なかに含まれた水分が蒸発するときにまわりの温度を下げてくれるんじゃが、都会では土も緑も川もすっかり少なくなったからのう。コンクリートは、夏の日ざしを受けると表面が50~60℃まで高くなり、空気を熱くしている。そのうえ、夜まで冷めずに熱を蓄えている。街なかでは夜になってもなかなか涼しくならんのは、建物や道路が空気をずっと温め続けているからなんじゃ。
●建物が密集していて熱が逃げにくい
高層ビルが密集していると、風通しが悪くなり、熱がこもってしまう。
●自動車からの熱
自動車は、ガソリンなどを燃やして走る。その熱がはきだされる。
●会社や家庭の冷房の熱
冷房は、部屋の中の温度を下げるが、その分の熱を外に出している。
●地面や建物が熱をためこむ
コンクリートやアスファルトで地面や建物がおおわれているため、熱をためこみやすい。また、植物や土も少ない。
●工場などからの熱
機械を動かすためなどに、大量のエネルギーを使い、熱を出す。
その他に、ビルがすき間なく建っていて風の通り道が少ないこと、自動車やエアコンなどからたくさんの熱が出ていることも都会の暑さの原因と言われておる。ヒートアイランド現象は、世界の大都市に共通のなやみなんじゃよ。
世界で最初の自動車が発明されたのは、なんと今から約250年前。そのころ日本はまだ江戸時代じゃ。フランスのキュニョーという人がつくった蒸気機関で動く自動車は、時速10キロほどしか出なかったものの、重く大きな車体は操作が難しく、テスト走行中に壁にぶつかってしまった。つまり世界初の自動車は、交通事故の第 一号でもあるんじゃよ。
その後、19世紀になってモーターが発明され、1873年にはイギリスで電気トラックが走っていたと記録されておる。ガソリン自動車の登場は、それからさらに10年ほどあとのことじゃ。電気自動車は最近の新しい技術のように思われておるが、実はガソリン自動車よりも歴史が古いというのは意外じゃのう。
20世紀になってガソリン自動車が世界中に広がったのは、エンジンが改良されてスピードが出るようになったことと、生産技術の工夫で安く大量につくれるようになったことが大きな理由じゃ。つまりこれからの技術の進歩によっては、将来は電気やその他の動力で走る自動車が主流になる可能性も大いにあるぞ。
水は、水素と酸素というものが結びついてできておる。中学生になると、水に電気を通して水素と酸素をとりだす実験を理科の時間にするはずじゃ。これを「水の電気分解」というんじゃが、燃料電池はその逆、つまり水素と酸素を反応させて水と電気をつくっておるんじゃよ。
ガソリンなどを燃やさないので、燃料電池は二酸化炭素や大気汚染につながる物質を出さない。なにしろ電気のほかに出るものは水だけじゃからとってもエコじゃ。また火力発電や水力発電ではタービンという装置を動かすことで電気を得ておるが、燃料電池は化学反応で電気を直接生み出すので、効率がとても良いこともとくちょうと言える。
燃料電池自動車の開発も進んでおるが、いまのガソリン車のように一般的になるには、ガソリンスタンドの代わりの「水素ステーション」がたくさん必要になる。それに自動車そのものの値段ももっと下がってくれんとなかなか買いづらい。こうした課題のかいけつにつながる技術の進歩が、これからのカギになるぞ。
一般に「石油」と呼ばれておるのはガソリンや灯油、重油、軽油などを全部ふくめた総称じゃが、石油は地中から「原油」をほりだしてつくる。では原油はどうやってできたのか。ここではよく知られておる「ケロジェン根源説」というものを紹介しよう。
いまから数億年から数千万年前、海にプカプカ浮かんでくらしておったプランクトンという生き物がじゅみょうを終えると、その死がいは海の底にしずんでどろにうまっていったんじゃ。この上からさらに長い時間をかけて大量の砂やどろがつもったことで化学反応が起こり、「ケロジェン」という物質に変わった。このケロジェンが地熱の働きで原油になったと考えられておるぞ。
①大昔の生き物が死んで、泥の中に沈む。生き物の入った泥が泥岩になる。
②泥岩は、圧力を受けてケロジェンになる。
③長い年月が経ち、熱や圧力で、ケロジェンから水、石油、ガスが発生。
④石油がガスや水と分かれて、砂岩の中にたまる。
石油は限りある資源じゃから、あと何年使えるのかということがみんな気になるじゃろ?一説には2065年ごろまでとも言われるが、ほりだす技術も進歩しておるからそれより長く使えるかもしれんし、反対にむだづかいをすればもっと早くなくなるじゃろう。つまり私たちしだいというわけじゃよ。
世界で最初のガラスが誕生したのは、なんと5,000年前の古代メソポタミアといわれておる。砂浜でたき火をしていた漁師さんが、落ちていた岩塩で風をよけようとしたところ、たまたま火に当たった岩塩と砂が溶けてガラスができたという説もあるようじゃ。その後エジプトなどにも伝わったものの、当時のガラスはつくるのに手間がかかり、王様など一部の人だけが持つぜいたく品だったと考えられておる。
日本では、弥生時代の遺跡から見つかったガラスビーズがもっとも古いと言われておるが、これが日本でつくられたものか海外から持ち込まれたのかははっきりしておらん。江戸時代になると日本でもガラス製の器がさかんにつくられるようになったが、そのころもまだガラス窓は外国からの高価な輸入品しかなかったんじゃ。
ふつうの家にもガラス窓が多く使われるようになったのは、大正12年の関東大震災より後のこと。それがいまでは日本のガラス技術は世界でもトップクラスだそうじゃから、大したものじゃの。
大人の人は知っておるじゃろうが、むかしの刑事ドラマでは、車がぶつかったりピストルでうたれたりすると、フロントガラスがこなごなになるというシーンがよくあったものじゃ。しかしいまでは、そういうことはまず起こらないようになっておる。日本では30年ほど前に、フロントガラスに「合わせガラス」を使うことが義務化されたんじゃ。
合わせガラスというのは、2枚のガラスの間に特殊なフィルムをはさんではり合わせたガラスのことで、割れても破片が飛びちりにくいという長所がある。このほかにも自動車のガラスには、紫外線やまぶしさをおさえたり、雨の日でも水をはじいて前を見やすくしたり、乗る人の安全と快適を守るためのいろんな工夫がされておるぞ。
合わせガラス ラミセーフ
ラミセーフの断面
ラミセーフが割れた状態 破片が飛び散りにくい
問題④の解説でも述べた通り、日本のガラス産業がさかんになったのはそんなに昔のことではない。じゃが今では世界中でつくられる新車の4分の1が、日本のAGCという会社のガラスを使っておるそうじゃ。もしかすると君たちのおうちの車もAGCのガラスかもしれんの。
みんなが大好きな日本の花火は、名前のとおりあの光を菊やぼたんのような「花」に見立てておる。どの方向からでもきれいに丸く広がって見えるように、昔の職人さんたちが工夫しながら技術を開発してきたんじゃ。外国ではあれが「花」だという発想がなかったので、誰も丸くしようと思わんかったらしい。きれいに丸く広がる花火は日本だけのもので、外国の人にもとても喜ばれるそうじゃよ。
ところで花火の色はどうやって出すのか。じつはいろんな種類の金属を使っておるんじゃ。金属のなかには、熱して高温になると決まった色を出すものがある。たとえばナトリウムは黄色、アルミニウムは白、カリウムは紫、銅は青緑というように。出したい色に合わせて、こうした金属の粉を火薬にまぜておるらしいぞ。
では開いたあとにだんだん色が変わっていく花火は、なぜそうなるかわかるかね?あれは花火のなかの「星」とよばれる丸い火薬が外側から燃えていくのを利用して、外のほうに銅、中心のほうにはアルミニウムというように中身を使い分けておるんじゃよ。
むかしから人間は、文字を書いて記録するためにいろいろなものを使っておった。そのなかには石やヤシの葉、ヒツジの皮、カメの甲らなどもあったらしい。じゃが今ではカメの甲らに字を書く人はだれもおらん。1,900年ほどまえ、中国の蔡倫という人が、それまでとくらべて簡単で大量生産もしやすい紙のつくり方を発明したからじゃ。
紙をつくるには、おもに木や草からとりだした「せんい」が使われる。このせんいを「パルプ」ともいうんじゃ。パルプをとりだすには、機械で木をすりつぶしていく方法や、薬品でせんい以外の成分をとかしていく方法がある。そのほかに、いちど印刷された紙からインクをとりのぞいて「古紙パルプ」にすることもできるぞ。
蔡倫よりもずっとまえ、古代エジプトでは草のくきをならべてかためた「パピルス」というものが使われておった。このパピルスが英語の「ペーパー」の語源じゃが、今の紙とはつくり方がずいぶんちがう。紙は、印刷技術、火薬、らしんばんとともに「古代中国の4大発明」のひとつとよばれておるぞ。
みんながマスクをしておる最近では、「感染症」といえば、せきやクシャミでうつるものというイメージが強いかもしれんの。じゃが水から病気になることもあるんじゃよ。日本のように清潔な水を十分に使うことのできない国では、いまでも飲み水が原因の感染症で毎日たくさんの人が亡くなっておるそうじゃ。
でも日本の学校やレジャー施設のプールは大丈夫だろうって?そんなことはないぞ、なにしろ君たちの体にも気づかぬうちに細菌やウイルスがぺたぺたくっついておることもあるんじゃから。みんなが安心して楽しめるように、プールの水には消毒液が入っておる。よく使われておるのは「次亜塩素酸ナトリウム」という薬品じゃ。塩素は水道水のほか井戸水や食べものの消毒にも使われて、みんなを感染症から守っておるぞ。
水道水は、じょうすい場できれいにしたあとお家にとどくまでの間にまた細菌などが入り込まないように、わざとじゃぐちから出たあとも塩素が残るようにしておるそうじゃ。じゃがこの塩素、蒸発しやすいという性質がある。また家庭用の浄水器では塩素をとりのぞいてしまうこともあるので、くみおきの水や湯ざまし、ろ過した水はなるべく早めに使いきるのがよいぞ。
自分のあしもとの地面をずっと掘っていくと、そのうち地球のうらがわの国に行けるんじゃないかと考えたことはないかね?じゃが本当にためしてみるのはあまりオススメせんぞ。なにしろ地面のいちばん深いところ、つまり地球の中心には、約6,000度という熱い金属のかたまりがあるんじゃ。
もしも地球を輪切りにできたら、その姿はゆでたまごのように見えるはずだと考えられておる。たまごのうすいカラにあたる部分が「地かく」、その下の白身が「マントル」、まんなかの黄身にあたるのが「核」とよばれ、この核は大部分が鉄とニッケルという金属でできておる。
じゃが実際には地球を輪切りにすることも反対側まで掘っていくこともできんので、だれもまだ自分の目で見たことはない。「白身」や「黄身」がどうなっておるかは、地震の波の伝わりかたを調べてわかったことなんじゃ。いまの技術では人間はまだ「地かく」の途中までしか掘ることができんので、「マントルは月よりも遠い」と言われるぐらいなんじゃよ。
地球は1日に1回転して、さらに1年をかけて太陽のまわりを1周するコマのような動きをしておる。この1日1回転を「自転」、年に1周を「公転」とよぶんじゃ。もしも自転の軸(コマでいう芯の部分)が公転する面に対してまっすぐに立っておったら、地球から見た太陽は年中いつでも赤道のうえにあって、季節の変化も起こらない。じゃが実際には自転軸はけっこうかたむいておるんじゃよ。
そのため、1年の間に「北極側が太陽を向く時期=北半球の夏」「南極側が太陽を向く時期=北半球の冬」「赤道の真上に太陽がある時期=北半球の春と秋」という違いが起こる。つまり、太陽が1年でいちばん頭の真上に近いところから当たる季節が夏、いちばん低いところから当たる季節が冬というわけじゃ。
そして光がななめから当たるよりも、真上から当たる時のほうが地面が受け取る熱の量は多くなる。これが、夏が暑いおもな理由じゃ。ちなみに地球が1年でいちばん太陽に近づくのは、なんと1月。夏は太陽とのきょりが近いから暑くなるわけではないぞ。
※夏が暑い理由には、太陽が出ている時間が冬にくらべて長いことも関係しています。
固定電話は機械のうしろから線がのびてカベにつながっておるが、携帯電話には線がない。じゃが携帯電話にも線のかわりをしておるものがあるぞ。それは電波じゃ。
まず電話がなぜつながるのか、固定電話を例にして説明するぞ。受話器の口をあてる部分にはうすい鉄板が入っておって、人が話をするとその音にあわせてふるえるんじゃ。そして受話器のなかには、最初はこうふるえた、次はこんなふうにふるえた、ということを電気の信号におきかえる装置がある。この信号が電話線を通っていって、相手が耳をあてるところにある鉄板を同じようにふるわせると、話した通りの音が聞こえるというわけじゃ。携帯電話もこれに似ておるが、「鉄板のふるえ」の信号を電波にのせてとどけるところが大きくちがうぞ。
人が携帯電話をもって移動するときに、「いまそっちへ行ったよ」「了解、これからこっちで担当します」という情報をやりとりして、いつでも電波が届くようにしてくれておるものを基地局という。普段は気づかんじゃろうが、まちのなかには基地局がすごくたくさんあるんじゃよ。
CMなどでこの言葉を聞いて、何のことか気になっておった人がいるかもしれんの。5Gというのは「第5世代移動通信システム」のことで、Gは英語で「世代」をあらわす「Generation」の頭文字じゃ。スマートフォンやタブレットだけでなく、いまの世の中ではいろんなものが電波を使って通信をしておる。その通信を支えるしくみが、第5世代という最新型に変わるんじゃよ。
5Gは、これまでよりはるかに多くの情報を、はるかに速いスピードで送ることができる。たとえば自動運転には、今のカーナビとは比べものにならんほどくわしい地図データが必要なんじゃが、そんなに大きなデータのやりとりは5Gでなければ難しい。また車どうしが5Gで通信をすれば渋滞をふせぐことにもつながるし、人がうっかり道路に飛び出してきても、その人が手にもっておるスマホと車が通信をして、早めにブレーキをかけることだってできるそうじゃ。
5Gの登場で、これまでは難しかったいろんな技術が実現できると言われておる。大いに期待したいものじゃ。
最近はきみたちの家でもお父さんやお母さんがリモートワークをしておるかもしれんの。リモートワークは「はなれて働く」こと、そしてリモコンはリモートコントロール、つまり「はなれて操作する」ものという意味なんじゃ。
家電などのリモコンの多くは赤外線を利用しておる。赤外線というのは、人の目には見えない光の一種と思えばいいぞ。君たちがリモコンのボタンを押すと、この光が長くついたり短くついたり、短く2回ついて3回目は長くついたり、いろんな光りかたをするんじゃ。このついたり消えたりのパターンで、リモコンは機械に信号を伝えておる。そしてそれを受けた機械の側では、「このパターンは……わかった、テレビを5チャンネルに変えるだ!」と判断してそのとおりに動くというわけじゃよ。
最近の家電はいろんなことができるようになっておるが、ふくざつな操作をさせようと思うと、送る信号はどんどん長くなっていく。じゃが赤外線リモコンは1秒間に4万回近くもついたり消えたりできるので、長い信号も一瞬で送れるんじゃよ。
建物や自動車のガラスも1枚に見えて2枚重ねになっておることはあるが、スマートフォンの画面に3枚も4枚もガラスが使われておるというのは意外じゃの。じゃがそれぞれのガラスにはちがう役割があって、ただ割れにくくするために重ねておるわけではないぞ。
写真や文字を表示する「液晶ディスプレイ」は、1枚の板のように見えて実はいろんな素材のサンドイッチなんじゃ。そのサンドイッチのパンにあたる「基板」という部分に2枚のガラスが使われることが多いぞ。液晶の上にあるのが指でスマホを操作するための「タッチパネル」じゃが、ここにも軽くて強いガラスが使われておる。
さらにいちばん上で画面を守る「カバーガラス」は、じょうぶでなければ困るが、そのために分厚くなったのではタッチパネルが操作しにくいし液晶も見にくい。つまり、じょうぶだけれどうすくて軽いガラスが必要というわけじゃ。スマートフォンというのは、画面ひとつをとっても最先端技術のかたまりなんじゃよ。
もしもガラスが光を通さなかったら、だれも窓やテレビの画面に使おうと思わんじゃろうから、ここは③が正解じゃ。でもガラスのコップにさわると冷たく感じるから、熱も通しやすいと思った人はおらんかね?実はガラスの「熱の通しやすさ」は金属などよりずっと低くて、コンクリートとあまり変わらないんじゃよ。ではなぜさわると冷たく感じるかといえば、ガラスは表面がツルツルで、手から熱をうばっていくからなんじゃ。
電気を通しにくいというのはたしかじゃが、まったく通さんわけでもない。ふつうは無理じゃがガラスが溶けだすぐらいまで温度をあげると、電気が流れやすい状態に変わるんじゃ。さらに言えば、低い温度でも電気を通すガラスがつくれるかもしれんというので、いま研究が進んでおる。この技術が実現すれば、自動車などに使われる電池をより安全で軽く小さくできると言われておるぞ。
ガラスそのものに電気が流れるわけではないが、表面に電気を通すとうめいな膜をつけた「導電性ガラス」というものもある。今回は、いろんなことを知っておる人ほど、ちょっと難しい問題だったかもしれんの。
すべてのものは原子や分子というとても小さな「つぶ」でできておる。ちょっと想像しにくいかもしれんが、この「つぶ」はじっと止まっておるわけではなく、いつもゆれ動いておるんじゃ。温度が高いものはこの動きがはげしく、低いものは動きが小さい。これを逆に考えると、「つぶ」を激しくゆり動かしてやれば、ものの温度は上がるということじゃ。
電子レンジは、マイクロ波という電波を使って食べものの中にある「水のつぶ」をゆり動かしておる。食べものにはたいがい水が入っておるから、その水が温まることでまわりにも熱が伝わり全体が温かくなるというわけじゃよ。
ただしお茶やコーヒーのような液体をレンジで温めすぎると、ふつうなら沸騰する温度をすぎてもさらに熱くなり続ける。この状態では軽くものが当たっただけでも液体が激しく噴き出すことがあるのでとてもキケンじゃ。またタマゴやウインナー、たらこのようにカラや膜でおおわれた食べものも、中身が熱くなりすぎていきなり破裂することがある。温めすぎにはくれぐれも注意じゃよ。
熱の伝わり方には「伝導」「対流」「放射」という三つの方法があるんじゃ。ふれあったものの間で温度が高いほうから低いほうへと熱が伝わることを伝導といい、水や空気がうごいて熱が伝わることを対流という。ところが太陽は地球とふれあっておらんし、宇宙は真空じゃから空気の対流もおこらない。太陽の光があたると温かくなるというのは、考えてみるとちょっとふしぎな気がせんかね?
太陽の熱は、三つめの「放射」という方法で伝わっておる。太陽光のなかにふくまれる赤外線という目に見えない光が、地球上のものの原子や分子という小さな「つぶ」を振動させることで温めておるんじゃよ。これは電子レンジと同じようなことじゃから、くわしくは問題⑥の解説を読むといいぞ。ちなみに赤外線は目に見えんはずなのにこたつの赤外線ヒーターが赤く光るのは、見た人が温かさを感じるようにわざと赤くしておるからなんじゃ。
太陽の直径は地球の100倍以上、体積は100万倍以上、そして表面温度は6,000度。とてつもない熱のかたまりじゃ。じゃが地球にはその熱が直接とどいておるわけじゃなく、ポイントは赤外線、つまり光のほうだったんじゃ。日が当たらない場所がすずしい理由がこれでわかったかな?
君たちのおうちにある食塩の多くは、いまでも海水からつくられておる。じゃからどうして海の水がしょっぱいかというのは、どうしてトマトはトマトジュースの味がするの?というようなものなんじゃよ。
いまから46億年前、できたばかりの地球はマグマのかたまりで、水はまだなかったそうじゃ。じゃがしばらくして、といっても3億年ほどたったころじゃが、マグマが冷えてくると水蒸気が雨になって地面にふりそそぐようになった。塩素を含むこの強い酸性の雨が岩を溶かし、岩から溶け出したナトリウムと一緒に低いところにたまっていって海になったんじゃ。そして塩素とナトリウムが結びついたものが塩化ナトリウム、つまり塩じゃよ。
世界の海の塩分の濃さは、おおよそ3.4%。じゃがアラビア半島の付け根にある「死海」という湖は、なんと30%というオドロキのしょっぱさなんだそうじゃ。水のなかに溶けておるものが多いほど、その水はものを浮かせる力が強くなる。じゃからここは、人が浮きわも使わずプカプカ浮かぶ湖として知られておるぞ。
木や草の葉っぱにたまった水滴は、どうして丸いつぶになるんじゃろう?コップに水をそそいでいくと、あふれそうになってもすぐにはこぼれず、コップのフチのさらに上まで盛りあがるのはなぜじゃろう?液体というのは、なるべく表面積を小さくしようとする、つまり球のように丸くなろうとする性質があるんじゃ。この力を「表面張力」といって、注意して見ると身のまわりのいろんなところで観察できるぞ。
水をはじくことを「撥水」といい、レインコートやバッグには「撥水加工」をされたものも多い。水よりも表面張力がとても小さいフッ素樹脂などで生地をおおうと、ぬれたときに水が丸くなって表面をコロコロ転がりおちるようになるんじゃ。これが「撥水加工」じゃよ。
宇宙飛行士の毛利衛さんがスペースシャトルのなかで行った実験の動画では、水が表面張力できれいな球になっておるのを見ることができる。地球のうえでは水滴は自分自身の重さでかたちがつぶれてしまうが、無重力の宇宙ではふわふわ漂う丸い球になるというわけじゃ。
画用紙に絵をかくときは、すきな色の絵の具をえらべば自由にいろんな色が出せる。じゃが色のついたガラスというのは、上から絵の具をぬっておるわけじゃないぞ。実はつくりかたにコツがある。ガラスの材料にいろんなしゅるいの金属を混ぜておるんじゃよ。
金属のなかには、「ガラスにこれをまぜるとこの色になる」ということがわかっておるものがいくつかあるんじゃ。たとえばコバルトをまぜると青いガラスができるし、鉄なら緑、マンガンなら紫のガラスになる。金というのは簡単に溶けるものではないが、「王水」という特別な薬品で溶かしてガラスにまぜると赤いガラスができるぞ。
沖縄では戦後にガラスの材料が不足しておったころ、職人さんたちが捨てられたお酒やジュースのビンを溶かして材料にすることを思いついたんじゃ。そうやってつくられた「琉球ガラス」の食器や置物は、どくとくの色とかたちで今では人気の工芸品になっておるぞ。最近は琉球ガラスもいろんな金属を使ってカラフルになっておるが、むかしはもともとのビンの色をじょうずに生かしておったらしい。その工夫とアイデアはすごいものじゃの。
えんぴつの芯は黒鉛という炭を粉にして固めたもので、君たちが紙に字を書くと、この粉が紙の表面にくっつくんじゃ。つまり、粉を紙から取りのぞくことができれば字は消える。それをやっておるのが消しゴムなんじゃよ。
ところでみんなふつうに消しゴムと呼んでおるが、最近はゴムではなくプラスチックでできたものも多い。ゴム製の「消しゴム」は紙の表面をうすく削りとってきれいにするのに対して、「プラスチック字消し」のほうには油がふくまれておって、その油が強い力で粉をすいとっておる。そして、すいとって黒くなった部分と粉をいっしょに消しカスとして捨てることで、新しい面が出て「プラスチック字消し」は何回でも字を消すことができるというわけじゃ。
ボールペンの字が消しゴムで消えんのは、インクは液体で紙の中までしみこんでしまうからなんじゃ。でも最近は消せるボールペンもあるって?あれは熱で無色とうめいになる特別なインクをつかっておる。ちょっと意外な気もするが、ゴムで紙をこすると「まさつ熱」で60度以上にもなるんじゃよ。
子どもたちが空き地で野球をしておると、大きなホームランが近くの家のほうに飛んでいって窓ガラスがガシャーン、おじさんがコラーッ……という場面がむかしのマンガにはよくあったものじゃ。これを超スローモーションで見ると、窓にあたったボールはガラスを外から家のなかのほうにむかってゆっくり押し曲げていく。そして曲げられる限界をこえるとガラスは割れるんじゃが、このとき最初に割れるのはどこかわかるかな?とうぜんボールがあたったところだと思うかもしれんが、実際は家の中のほうが先なんじゃ。
ボールがあたるということはその部分を押しておるわけじゃから、ガラスの外がわの面には「圧縮する力」がはたらく。じゃが一方が押されると反対の面は引っ張られることになるので、家の中がわの面には「引っ張る力」がはたらく。そしてガラスというのは、押されるよりも引っ張られることのほうが苦手なんじゃよ。
そこで最近では、表面にもともと「圧縮する力」を持たせた強化ガラスというものがある。さっきの例でいうと、ボールが当たったときに「圧縮する力」が「引っ張る力」と打ち消しあって、かんたんには割れんようにしてくれるんじゃ。強化ガラスの強さは、ふつうのガラスの3~5倍といわれておるぞ。
「水と油」という言葉を聞いたことがあるかな?仲がわるいことや、性質が正反対のものをあらわすたとえじゃ。実際、水と油というのは決して混ざりあわん。ドレッシングをふって混ぜあわせても、しばらくすると油の部分とそれ以外の部分にわかれてしまうのもこれが理由じゃよ。
君たちが手をあらうとき、水を流すだけで落ちてしまう汚れもあれば、それでは落ちん汚れもある。水で落ちないのは、主には油の汚れじゃ。人間は毛穴から「皮脂」という油を出して皮膚をまもっておるんじゃが、この皮脂に汚れがからまってしまうと水だけではなかなか落とせん。ところが石鹸は水とも油ともくっつきやすい性質をもっておるので、油汚れにくっついて包みこんだと思うと、次には水にくっついてそのままながれていくんじゃ。このように水にも油にもくっつくことができるものを「界面活性剤」という。
界面活性剤が使われておるものは石鹸のほか、シャンプーや化粧品、ぬり薬などいろいろあるぞ。AGCという会社では、洗顔剤用として界面活性剤のなかにシリカゲルという成分が入ったものもつくっておる。これは皮脂のベタつきをおさえてサッパリ感を出してくれるそうじゃ。みんないろいろ工夫しておるの。
人間が太陽の紫外線を浴びすぎると、目や皮膚の病気になることがある。じゃがありがたいことに、地球をつつむ大気にはオゾンというガスの層があって、紫外線を吸収してくれておるんじゃ。ところが今から50年ほど前、このオゾン層をこわしているものがあるらしいとわかってきた。それはフロンガスという気体じゃ。
当時フロンガスはエアコンや冷蔵庫などに広く使われておったが、オゾン層との関係がわかってからは、世界中が協力してフロンを使うことをやめにしたんじゃ。そしてオゾン層に与える影響の少ない「代替フロン」とよばれるものがいくつも開発された。ところが話はここで終わらん。今度はこの代替フロンが地球温暖化の原因になることがわかってきたんじゃよ。
現在は、この代替フロンも使わずにすむ技術の開発が進んでおる。そんなものはじめから使わなければよかったのにと思うかもしれんが、むかしはそれが環境に良くないなんてことはだれにもわからんかった。問題があれば見直して、もっと良い方法を考える。科学技術というのはそうやって一歩ずつ進歩していくんじゃよ。
病院で注射をするとき、消毒のために腕をふかれるとスーッと冷たく感じるじゃろ?あれはアルコールという液体が蒸発して気体になるときに、まわりの熱を奪っていくからなんじゃ。エアコンも冷蔵庫も、この仕組みを利用しておる。
まずエアコンについて説明しよう。エアコンは建物のなかにある室内機と外にある室外機でワンセットになっていて、このふたつはパイプでつながれておる。そしてパイプのなかでは「冷媒」とよばれるものがグルグルまわっておるんじゃ。冷媒は室内機に入るまでは低温の液体じゃが、部屋の空気にふれると気体になって、消毒のアルコールと同じように空気の熱をうばっていく。さらにパイプを通って室外機までいくと、今度は圧縮されて高温の液体に変わり、この熱を外にはき出すんじゃ。冷房を使用中に室外機から熱い空気が出ておるのはこのためじゃよ。そして冷蔵庫というのはこの室内機と室外機をひとつにまとめたような機械じゃから、後ろからはやっぱりたくさんの熱が出ておる。
エアコンや冷蔵庫の冷媒として、むかしは「フロンガス」や「代替フロン」とよばれるものが使われておった。じゃがどちらも環境に良くないということがわかり、最近では環境への影響が少ない冷媒の開発が進んでおるぞ。
冬になると息が白く見えるのは、雲が白いのと同じ理由だと言ったらおどろくかね?はく息のなかには水蒸気、つまり気体になった水がふくまれておる。これが体の外に出て急に冷やされることで水のつぶに変わり、目に見えるようになったのが白い息なんじゃ。
私たちの身のまわりの空気にも水蒸気が含まれておる。空気は温度が上がると軽くなるので、太陽の熱で温められると軽くなってだんだん上にあがっていくんじゃが、空の上のほうというのは気温がとても低い。そのため水蒸気は水や氷のつぶに変わり、集まって雲になるんじゃよ。やがてこの水や氷のつぶが大きくなりすぎると、もう浮かんでおれんほど重くなる。そうして地面に落ちてきたのが雨というわけじゃ。
空気のなかの水蒸気はもともと地面や川、海などの水が蒸発したものじゃから、それがまた雨になって地面や川にふるというのは、水が形を変えてずっとまわっておるということじゃ。地球上には地下水や南極の氷などいろんなすがたの水があるが、全部をあわせた量はこの先もずっと変わらんと考えられておるぞ。
この実験は自分でもやってみたことがある人が多いかもしれんの。太陽の光を虫めがねで1点に集めると、紙を燃やすことができるんじゃ。虫めがねのようにモノが大きく見えるレンズを「凸レンズ」といい、これは光を集めるようにつくられておる。どんなに夏の暑い日でも日なたに置いただけでモノが燃えだすことはまずないが、レンズで光を1点に集めると、紙が燃えるぐらい温度が高くなるんじゃよ。
古代ギリシャのアルキメデスという学者は、自分の国がローマに攻められたとき、王様にたのまれて敵をやっつける方法を考えたといわれておる。アルキメデスは王様の部下たちにたのんで、海の近くにたくさんの鏡を置いて待ちかまえた。そしていよいよ敵が近づいてくると、何十、何百という鏡で反射された太陽の光が相手の船に集中して、ぜんぶ燃やしつくしてしまったそうじゃ。なんともすごい話じゃの。
アルキメデスの話は言いつたえじゃから、本当かどうかはわかっておらん。じゃが光が1点に集まると、それぐらいすごいエネルギーになるということじゃ。くれぐれも虫めがねや望遠鏡のような凸レンズで太陽を見てはいかんぞ。
目の前においたモノを両目で見たときと、右目だけ、左目だけで見たときを比べると、モノの位置や見え方が少しずつちがうのがわかるはずじゃ。右目と左目は、それぞれちがう「像」を見ておる。それを脳がひとつにまとめることで、モノが立体的に見え、距離がつかみやすくなるんじゃよ。
シマウマの目も2つじゃが、顔の横の方にはなれてついておる。これはライオンなどの敵が横や後ろから近づいてきたときすぐに気づいてにげられるので便利じゃ。一方のライオンは、人間と同じ前に2つならんだ目をもっておる。にげるえものを追いかけていってつかまえるには、相手との距離がわからんと困るからの。動物のすがたというのは、進化のなかで生きのこりやすい形に変わってきた結果だと考えられておる。
人間のごせんぞはサルのように森の木の上でくらしておったそうじゃから、モノとの距離がつかめなかったら木の実をとることもできんし、いつも枝から落っこちて大変だったはずじゃ。目が2つならんでおって良かったの。
プールやお風呂では、じっとしておっても体が少し浮きあがりそうに感じることがないかね?水のなかではモノに上向きの力(浮きあがらせようとする力)が働いておる。これを「浮力」といって、浮力の大きさは「モノが押しのけた水の重さ」と同じになるんじゃ。
たとえば同じ重さの鉄のかたまりが二つあったとして、一方をかたまりのまま水に入れると、あまり多くの水を押しのけんので浮くことができない。じゃがもう一方はうすく広げてたくさんの水を押しのけるようにすると、大きな浮力が働いて水に浮かぶようになる。船というのはこれを利用して、「押しのけられた水の重さ」が「押しのけるのに使った鉄の重さ」と同じになるように形を工夫しておるんじゃ。
では潜水艦はなぜ浮かんだりしずんだりを自分で決められるかというと、なかのタンクに水を入れたり出したりして重さを変えておるからなんじゃ。沈む時は栓をあけて水を入れ、浮かぶ時は圧縮した空気を送り込んで水を押し出す。マッコウクジラもこれに似ておるが、沈む時はつめたい水を吸いこんで頭のなかの「脳油」という油の密度を大きくして、浮かぶ時は水をはき出し血管を通る血液で油を溶かし密度を小さくする。いろいろ面白い方法があるものじゃの。
もしも地球を輪切りにできたら、ゆでたまごのような3つの層に分かれると考えられておる。上から「地殻」「マントル」「核」といい、地殻というのはたまごのカラぐらいのうすい部分じゃ。じゃが人間がこれまでに掘ったいちばん深い穴は約1万2,000メートルといわれるのに対して、地殻は厚いところで3万メートル以上もある。私たちはまだカラに少しヒビを入れたぐらいというところかもしれんの。
この地殻、私たちがふだん「地面」とよんでおるところは主に何でできておるか。いちばん多いのは酸素じゃ。これはいろいろなものとくっついた「酸化物」というかたちで存在しておる。その次に多いのはケイ素。割合でいえばアルミニウムの3倍、鉄の4倍近くもあるんじゃよ。
でも鉄やアルミはよく見るけどケイ素なんて知らないって?そんなことはないぞ。ケイ素はガラスの主な原料として身のまわりにあふれておる。また、パソコンやスマートフォンに欠かせない「半導体」という部品にも、ケイ素は必ず使われておるんじゃ。地殻からたくさんのケイ素がとれるというのは人間にとってラッキーだったの。
人間の体は37兆個というとても多くの細胞でできておる。それに対して細菌は、たったひとつの細胞でできた「単細胞生物」という生き物の仲間なんじゃ。種類にもよるが大きさは1ミリの1,000分の1ほどで、栄養があれば自分でどんどん仲間を増やしていくことができる。
一方のウイルスは細菌よりもずっと小さく、自分では細胞を持っておらんので、他の生き物の細胞に入り込んで自分のコピーをつくらせるんじゃ。たんぱく質のカラのなかに核酸(※)が入っただけのとても単純なつくりで、ウイルスの種類によってはこのカラの外側にもうひとつエンベロープという膜を持っておることがある。最近話題のコロナウイルスも、そんなエンベロープウイルスの一種なんじゃよ。
そしてこのエンベロープは消毒用アルコールや石鹸でこわれやすいので、君たちが手を清潔にすることでウイルスを弱らせることができるんじゃ。細菌とウイルスはどちらも「微生物」の一種ということになっておるが、ウイルスはほかの生き物とあまりに違うことが多いので、生物ではないという人もおるぞ。
※核酸…細胞核のなかにある酸性の物質。DNAとRNAがある。
フッ素樹脂というのは面白い物質で、人の役に立ついろんなとくちょうを持っておる。たとえば熱にとても強く、マイナス100度から200度以上まで温度が変化する場所でもつづけて使える。強い酸性やアルカリ性の薬品にふれても溶けない。すべりやすく、まさつが起きにくい。汚れなどがこびりつきにくい。こうしたことから、身のまわりのものにたくさん使われておるんじゃ。
雨や紫外線で弱りにくく、温度の変化にも強いので飛行機の機体にぬるには最適じゃ。ほかにもこの性質を生かして、フッ素樹脂のフィルムがドーム球場の屋根などに使われることもある。強い薬品を使う必要のある工場では、薬品を入れるタンクや機械に送るためのパイプでフッ素樹脂が活躍しておる。また機械のぐるぐる回転する場所や、モノを送るためのレールにもフッ素樹脂のすべりやすい性質が役立っておるぞ。
AGCの高機能フッ素樹脂フィルム「アフレックス®︎」
粘着性(くっつきやすさ)が低いので、モノがこびりつきにくいというのは本当じゃが、だからといってギョウザの皮に入れるのはオススメせんぞ。ギョウザをこびりつかせたくないなら、フッ素樹脂でコーティングしたフライパンがあるんじゃ。君たちのおうちのフライパンも、フッ素樹脂コーティングかもしれんの。
放射線と聞くと、よくわからないけどなんとなく怖い、と思っておらんかね?じゃが私たちは宇宙や地面、空気、家や学校などの建物、食べるものからも放射線をいつも浴びておる。それでも特に病気になったりしておらんのは、ひとことで放射線と言ってもいろんな種類があるし、浴びる量が少なければ影響はほとんどないからじゃよ。
放射線のうち代表的なものにはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、エックス線といったものがある。そしてそれぞれの放射線は「ものを通り抜ける力」に差があるんじゃ。アルファ線は紙1枚で止まってしまうし、体の外から当たっても皮膚の表面より奥まで行くことはできん。ベータ線は人の皮膚は通り抜けるものの、体の奥深くまでは届かない。そしてエックス線は筋肉などは通り抜けるが、骨や歯では途中で止まってしまう。病院のレントゲン撮影でエックス線が使われるのはそのためじゃ。
上の図のように、日本では地面や食べ物などの自然から、1年間に1人当たり合計で約2.1ミリシーベルトの放射線を浴びている(シーベルトは放射線の人体への影響を表す単位)。
ただしアルファ線やエックス線でもすごく長い時間浴びたり、すごく力を強めて当てたりすると、体の細胞が傷ついてがんなどの病気になってしまうことがある。その一方で、がんを治す「放射線治療」というものもあるんじゃが聞いたことはないかね?強い放射線を集中的に当てることで、がん細胞だけをころしてしまうことができるんじゃ。使い方しだいで人の役にも立つ放射線は、ただ怖がるのでなく、まずは正しく知ることが大事じゃよ。
最近では、一年中食べられん野菜や果物がないぐらいじゃが、そのために農家ではいろんな工夫をしておる。たとえばみんなの好きなイチゴはふつう4~6月が旬なんじゃが、クリスマスのケーキに使いたいという人が多いので、農業ハウスを使った促成栽培で1年中食べられるようにしておるんじゃ。
露地栽培は天候に大きく左右されるが、ハウス栽培は作物がそだつ環境を人間がコントロールできる点が大きくちがう。じゃがハウス用のフィルムが弱って変色すると太陽の光がじゅうぶん入ってこなくなるし、破れてしまえば温度を一定に保てんようになる。そのため一般的な塩化ビニルのフィルムは、1~5年ではりかえる必要があるそうじゃ。
そこで最近では、太陽の光を通しやすく破れにくいフッ素樹脂の農業用フィルムが使われることも増えておる。AGCの「エフクリーン®️」というフィルムの場合、20年以上続けて使っておる例もあるそうじゃ。露地栽培と同じように元気においしく育ったものが1年中食べられるというのはありがたいことじゃの。
モノが酸素と結びつくことを酸化といって、鉄などの金属の場合はこれを「サビる」という。使い捨てカイロというのは、鉄のこなを酸化、つまりサビさせて、そのときに出る熱で手や体を温めておるんじゃ。でも柱のクギや公園の鉄棒もサビているけど熱くないって?本当はクギや鉄棒もサビるときには熱を出すんじゃ。ただふつうはとてもゆっくりとサビるので、熱が出てもすぐに冷めてしまっておるんじゃよ。
使い捨てカイロは、鉄が酸化しやすいようにいろんな工夫をしておる。まず鉄が細かいこなになっておるのは、表面積を大きくしてできるだけ酸素とふれ合わせるためじゃ。また、塩は酸化を助ける働きがあるので、塩分をふくんだ木や石のこなを混ぜておることもある。さらに空気をたくさん吸いよせる活性炭のこなは、酸化せずに残る鉄がないようにしておるんじゃ。
カイロの中袋には酸素をとりいれるための小さな穴が開いておるが、決して温度が上がりすぎんように穴の大きさや数を調節しておる。もしもこの袋を破ってしまうと、一気にたくさんの酸素と中身がふれてすごく熱くなるのでキケンじゃ。安全のため、そして服をよごさんようにするためにも、カイロの中身を見てみたくなっても袋を開けるのはガマンじゃよ。
ケーキやどら焼きをお店で買ってくると、原材料名のところに小麦粉、砂糖、食塩といった名前に混じって「重曹」と書かれておることがある。じゃが重曹はお風呂そうじなどに使うことがあると知っておる子は、そんなものを食べて大丈夫かと心配になるかもしれん。そこで今回は、この重曹について説明するぞ。
重曹は化学名を「炭酸水素ナトリウム」といって、熱を加えると反応して水蒸気と二酸化炭素を出す。お菓子をふっくらさせるのは、この水蒸気と二酸化炭素じゃ。ではなぜおそうじにも使えるかといえば、重曹のつぶは硬すぎずやわらかすぎないので、お風呂のタイルなどを傷つけずにみがけるからじゃよ。また弱いアルカリ性のため酸性の油汚れなどを中和して落としやすくする働きもある。
入浴剤や医薬品にも使われる重曹
二酸化炭素を出す重曹の性質は、ケーキに使えばふわふわにしてくれるし、入浴剤に使えばブクブクと気持ちのいい泡になる。ひとつの物質にもいろいろな性質があって、食べものに使いやすい部分、おそうじに使いやすい部分、入浴剤に使いやすい部分、というようにそれぞれ上手に利用しておるんじゃよ。
人間の体のなかで一番かたい場所はどこかわかるかね?足の骨?手のゲンコツ?いや、ぼくの石あたまが一番だって?正解は、歯の表面の「エナメル質」という部分じゃ。「モース硬度」というかたさの基準では、鉄のかたさが「4」、ガラスが「5」に対してエナメル質のかたさはなんと「7」だそうじゃ。
ところがそんなにかたいエナメル質でも、虫歯菌のつくる「酸」は穴を開けてしまう。虫歯菌は正しくは「ミュータンス菌」といって、人の口のなかに食べかすが残っておるとそれをエサにして仲間をふやし、糖分から酸をつくるんじゃ。ちなみに糖というのはチョコレートやキャラメルのようなお菓子だけじゃなく、パンやお米、うどんなどにもふくまれておる。今日は甘いものを食べてないからといって歯みがきをなまけておると、虫歯菌を喜ばせるだけじゃよ。
エナメル質には痛みを感じる「神経」がないので、痛いと感じた時にはもっと奥のほうまで虫歯が進んでおるということじゃ。そしてざんねんながら虫歯はほうっておいて自然に治ることはないので、すこしでも痛みを感じたら早めに歯医者に行くことが大切じゃよ。
問題⑦では虫歯になる理由を説明したが、もうひとつ歯のお話じゃ。君たちのおうちの歯磨き粉や口の中をあらう洗浄液には、「フッ素配合」と書かれたものがないかな?歯医者さんでは、虫歯予防のためにフッ素を歯にぬってくれることもある。問題②や④でも出てきたフッ素じゃが、歯に使うと何がいいんじゃろう。
歯にフッ素がいい理由は、おもに3つあるといわれておる。1つめは歯の「再石灰化」に役立つこと。虫歯菌のつくる酸はエナメル質の中にあるカルシウムやリンという大切な成分を溶かしてしまうんじゃが、フッ素はそれをもとにもどす働きがある。簡単にいえば初期の虫歯がそれ以上悪くならんように助けてくれるんじゃ。これが再石灰化じゃよ。2つめは虫歯菌の働きを弱めて酸の量を少なくすること。そして3つめにエナメル質と結びついて歯の質を強くしてくれることじゃ。
歯磨き粉などの場合、製品によってフッ素の濃度はちがうはずじゃが、濃度が高ければ高いほどいいわけではないし、たくさん使えばそれだけ効くというものでもない。特に子どもの場合は注意が必要じゃから、歯医者さんや薬局で相談して選ぶといいぞ。
たとえば1個の消しゴムをこまかく切っていくとする。はじめは指の先ぐらい、もっと切ってコメつぶぐらい、ゴマつぶぐらい、塩のつぶぐらいになってもまだまだ切っていく。そうやってどこまでも切り分けていくと、もうこれ以上は分けようがないという一番小さいつぶになるんじゃ。このつぶを「原子」や「分子」といって、世の中にあるものはみんなこの「原子」や「分子」でできておるんじゃよ。
いま「みんな」といったのは、固体だけではなく液体も気体もという意味じゃ。空気の78%はチッ素、21%は酸素、あとは二酸化炭素やアルゴンといったものが合わせて1%で、もしもこの中にすこしでも色のついたつぶが混ざっておったら空気も目に見えたじゃろう。しかし実際にはどれも色がないので、空気は目に見えんというわけじゃ。
たとえば私たちがものを見て「赤い」と感じるのは、ある波長の光が目に届いたときに脳が「赤い」と感じるからじゃ。「青い」と感じるのは、べつの波長の光が目に届いたときには脳が「青い」と感じるようになっておるからじゃ。人間が目で見て感じることのできる光を「可視光線」というんじゃが、光のなかには私たちには見えん「赤外線」や「紫外線」といったものもある。もしも赤外線や紫外線まで見ることのできる生きものがおったら、この世界は私たちが思う以上にあざやかな色でいっぱいかもしれんの。
フッ素が世の中のいろんな場所でかたちを変えて役立っておることは、君たちももう覚えたかもしれんの。フッ素樹脂は熱や薬品につよく形も変えやすいので、機械の部品やフライパンのコーティングなどに使われておる。フッ素ゴムは工場のパイプや電気コードをおおう「皮膜」に使われるし、エアコンなどの「冷媒」としては環境にやさしいフッ素系溶剤というものもある。
そしてもうひとつ、フッ素がとても面白い使われ方をしておる分野があるんじゃ。それは医薬品の世界じゃよ。フッ素の原子はすべての物質のなかで2番目に小さく、水素とほとんど変わらない。そこで化合物のうちの水素をフッ素に置き換えたニセモノを薬として体に入れると、体はよく知っておる「水素入り」の化合物だと思い込んで、「フッ素入り」のほうをそのまま取り込んでしまうことがあるんじゃ。
フッ素を利用した薬は、体のなかで安定して長く効きやすいというとくちょうもあるため、皮膚科の薬や抗菌薬、抗がん剤などにも使われておる。こうした研究をしておる科学者の間では「こまったときのフッ素だのみ」という言葉もあるそうで、今後も研究が進めばフッ素の活躍の場がますます広がっていくかもしれんの。