肺がん検診の受診者が減っています/コロナ禍でもためらわず検診で早期発見と適切治療を

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、肺がん検診の受診を控える
人が多くなり、その結果、肺がんと診断される人が減っています。
感染症が流行している期間も、がんの進行は止まるわけではなく、
発見や治療が遅れると、肺がんは治りにくいものとなります。
新しい生活様式においても、変わらず検診を受ける大切さについて、
肺がん診療エキスパートの光冨徹哉先生、弦間昭彦先生にお話をうかがいました。

光冨先生

光冨 徹哉みつどみ てつや

近畿大学医学部外科 呼吸器外科教授/ 世界肺癌学会理事長

1980年九州大学医学部卒業。86年同大学大学院修了。産業医科大学第二外科、九州大学医学部附属病院第二外科などを経て、95年愛知県がんセンター中央病院胸部外科部長。2012年近畿大学医学部外科学講座呼吸器外科部門就任。現在に至る。

弦間先生

弦間 昭彦げんま あきひこ

日本医科大学 学長/ 日本肺癌学会理事長

1983年日本医科大学医学部卒業。89年同大学大学院修了。同大学講師、助教授を経て、2008年主任教授内科学講座(呼吸器・感染・腫瘍部門)および大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授。13年医学部長。15年学長就任。現在に至る。

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コロナ禍で、肺がん検診の受診者が減っていると聞きました

 今年に入り世界的に受診者数が減少し、その結果、肺がん患者を見つけにくくなっている傾向にあります。アストラゼネカ、私が理事長を務める世界肺癌学会ほか4団体が、このたびLAA(Lung Ambition Alliance)を結成し、2025年までに肺がんの5年生存率を2倍に高めることを目的に世界的に協働して活動しています。
 受診者数は日本でも特に3~5月に大きく減少しました。緊急事態宣言中、集団検診や企業内健診が中止・延期されたこと、医療機関での感染を心配しての「受診控え」が要因と考えます。受診を控えた中には「自分は大丈夫、今年ぐらいは受診しなくてもよい」と思った人もいるかもしれません。しかし自覚症状はなくても、罹患者(りかんしゃ)は一定の割合で存在します。それを早期発見することが検診の目的です。(光冨先生)

 受診者数が減ることは、すなわち新規がん診断者数の減少や早期治療開始の遅れをもたらします。これらの問題が緩和されない場合、今後数年間は、進行がんで見つかる患者と死亡率は増加すると考えられます。肺がんは進行するにつれ治療手段が減ることもありますから、できるだけ早期に発見することが大切です。早期であれば根治を目指すことも可能です。しかしコロナ禍の受診控えの影響で発見が遅れると、「診断も治療もされない人」が増えることになり、より進行した状態で診断される人が増えることが予想されます。いわば「本来助かる人」が、厳しい状態になって初めてがんと診断されることが懸念されます。(弦間先生)

グラフ:がん検診の受診者数は激減している

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肺がんとは、どのような病気ですか?

光冨先生

 肺がんは、日本人のがんによる死亡数の第1位です。2018年統計では、男性は5万2401人(がんの中で1位)、女性は2万1927人(同2位)が肺がんで亡くなっています。罹患に対する死亡の割合が比較的高いのが特徴です。がんが肺の中にとどまっていれば手術で取り除けるのですが、肺がんが恐ろしいのは、血管やリンパ管に入り、遠くの臓器に転移しやすいこと。治りにくいがんであると言われるのは、転移が起こりやすいがんであるためです。
 初期段階では症状が表れないこともあるため、症状がないから安心というのは誤解です。「痰(たん)に血が混じる」「胸が痛い」といった症状を自覚した時点では、かなり進行している可能性もあります。たばこを吸わない人も、副流煙の影響などで罹患しうる病気で、喫煙と関係ない肺がんもあります。喫煙しないからといって、油断できるがんではないことを知っていただきたいです。(光冨先生)

グラフ:2018年の死亡数が多い部位

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肺がんは発見が遅れるとどのような影響があるのですか?

 肺がんのステージはⅠ~Ⅳ期に大別され、進行度によって治療方針も変わります。手術の対象となるのはⅠ期からⅢ期の一部まで。Ⅳ期は転移により手術できない状態なので、様々な薬を組み合わせて使います。治る可能性が高いのが、早期に見つけて手術をすること。発見が遅れるとⅡ期、Ⅲ期と進行し、治療成績も下がってしまいます。
 今や日本人の2人に1人は何らかの「がん」に罹患し、その中でも肺がんはいわば「ありふれたがん」になりつつあります。どうか他人事と思わないで下さい。肺がんから命を守るためには定期的な検診が重要です。「今年ぐらいは大丈夫」と思い受診を遅らせている人はちゅうちょせず、感染症対策をとった上で、がん検診を継続して下さい。(光冨先生)

 肺がんは、他のがんと比較すると5年生存率(5年後に生存している割合)が低いことが特徴です。生存率、生存期間ともに、がん検診による早期発見で大きく変わると言っていいでしょう。手術ができない症例でも様々な薬が進歩しており、生存率の伸びにも期待されますが、やはり手術をした方が治療成績は良いのが現状です。
 コロナ禍当初は、対峙(たいじ)する相手=コロナウイルスの全容がわからなかったため、検診はリスクがあると心配されていました。しかし今では、どう感染対策すべきかの情報は蓄積され、病院や診療所、検診施設は、しっかり対応策を講じた上で診療や検診を行っています。ですから安心して、肺がん検診のために医療機関に行っていただきたいです。(弦間先生)

グラフ:国が検診を推奨する五つのがんの5年生存率

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肺がん検診はどのように行うのですか?

弦間先生

 行政自治体による検診と企業内健診のほか、人間ドックでも受けられます。厚生労働省の指針では、40歳を過ぎたら男女とも年1回受診することが望ましいとされています。
 検診では胸部X線検査(レントゲン検査)を行い、たばこをたくさん吸うなどリスクの高い人は、喀痰(かくたん)細胞診も行います。検診の結果、「がんの疑いあり」「精密検査の必要あり」と言われた場合は放置せず、なるべく早く医療機関で精密検査を受け、さらに詳しく調べてもらいます。精密検査では、胸部CT検査や、口から気管支に内視鏡を入れがんの可能性のある部位を直接観察する気管支鏡検査などを行います。
 定年を迎え、企業内健診を行わなくなるなど生活環境が変化した時に、検診を受けなくなる人が多いように見受けます。行政の検診は幅広い医療機関で受けられます。身構えず、身近な場所で検診を受けて下さい。まずは自分の住んでいる地域で、どんな検診があるか調べてみるとよいでしょう。
(弦間先生)

グラフ:肺がん検診の流れ

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つづけよう、がん検診。

第61回 日本肺癌学会学術集会 11月 岡山で開催/コロナ禍での肺がん治療について専門医師で議論を深めました

11月12日~14日の期間中、岡山市内で行われた第61回日本肺癌(はいがん)学会学術集会(会長:木浦勝行先生 岡山大学病院 呼吸器・アレルギー内科)。「肺癌撲滅を目指して2020」をテーマに、日本の肺がん治療をリードする医師はじめ医療関係者が一堂に会し、最新の治療法について意見が交わされました。セッションの中には、緊急企画として「COVID-19流行下における肺癌治療」も設けられました。