Recipe
2026.07.30

ワタナベマキさん(料理研究家)
「今、賢く手間を抜く、“自炊力”ノウハウの更新どきです」

ワタナベマキさん

ワタナベマキさんの新著『ワタナベマキの大人はこんな自炊でいい』(主婦の友社刊)は、「 “賢く手間を省いて”作りやすくして、今よりもっとおいしくするテクを紹介した一冊です」(ワタナベマキさん)。

本書で紹介されている全74品の料理は、マキさんご自身の「自炊」の定番料理で、私たちも普段食べ慣れているものばかり。だからこそ掲載レシピには、これまでの常識を覆す小さな驚きと感動が詰まっていることに気づかされます。

料理が今よりラクに作りやすくなる→料理のキャパが広がり→自炊がもっと楽しくなって→また作ろうと次に繫がる。こんな“自炊スパイラル”を起こしてほしいと願うマキさんにあれこれうかがいました。

(写真提供:主婦の友社/撮影:福尾美雪/取材・文:岡本くみ子)

料理画像

Q そもそも、「自炊」をテーマにしたワケは? 込めた想いは?

コロナ禍の外出自粛生活のなかで、みなさんもこれほど自分の食生活と向き合ったことはなかったのでは? 毎日の「自炊」や季節を身近に感じる食の手仕事が、落ち込むメンタルの癒やしやストレスの和らげにもなっていました。でも、延々と続く「自炊」。どうせなら減らせる手間は減らして、もっとおいしく作るテクを知れたら「自炊」がもっとたのしくなるかも、と思った人も多いと思います。

気がつけば、料理研究家としての仕事歴は二十数年。季節の手仕事や祖母から習った手間を惜しまない料理は今も大好きですが、日々の「自炊」レシピはときどきに応じて作り方を変え、よりシンプルにブラッシュアップしてきました。生活環境や好みの変化、調味料、調理道具、昔はやっていたけど今はやらなくていい手間もたくさん見つけました。

『ワタナベマキの大人はこんな自炊でいい』は、仕事とプライベートを通して得た気づきや知恵をベースに、省ける手間はカットしてよりラクに、でもグンとおいしくなる「自炊」の簡単テクをまとめた一冊です。「これまでのやり方はちょっと面倒だったけど、これなら作ってみたい」と心を動かしていただけたらうれしいです。

自分の好みや苦手なものがわかってきた大人世代は日ごろのレシピの見直しを、料理ビギナーの若い世代は今どきの「自炊」の基本を知る教科書として活用していただけると思います。

Q 「自炊」がおっくうな日もありますが……?

料理は作る人の気持ちが味に反映されます。よく言われることですが、疲れていたりイライラしたりしていると味が塩辛くなりがちだし、嫌々作れば味もイマイチだし……。私だって常に平常心ってわけではありませんよ(笑)

でも、想像以上においしく作れたとき、しかも簡単な手間でこれでいいんだと思えたら、たぶん料理をすることが楽しくなると思うんです。知らなかったテクを試してうまくいったら、自分の料理のキャパが広がったようでワクワクするし、そういう気づきが「自炊」のフットワークの良さに繫がります。時間の効率最優先のイメージが強い「手抜き」とは異なる「賢い手間抜き」は遊び心も生まれます。

今の時代、みなさん知識も情報もたくさん持っていて、「そこそこおいしく」は出来ていると思うんです。でも、あともう一歩、賢く手間を省いたり、逆にこれだけは外さないほうがいいんだという手間に気づいたりすることで、「すごくおいしい!」が作れたら、おっくうな気持ちは少しずつしぼんでいくのでは?

Q 日々の料理で、抜いていい手間、抜けない手間。たとえば?

料理画像

賢く手間が抜ける道具なら、電子レンジです。うまく使いこなす自信がなくてずっと避けていたんですけど、数年前に仕事を通じて機能や性能を教わって、「下ごしらえをまかせてみようかな」とやってみたら大正解。ゆでたり、煮たり、蒸したりの下ごしらえで時間がかかる料理もレンチンでグッと手短になりました。時間が無いときって、湯を沸かす時間さえイライラしますもの。

たとえば、厚切り大根はレンチンで火を通してから煮れば調理時間は大幅短縮。味が沁み込むのも早い。茄子もレンチンの下ごしらえならふっくら、色よく、油も少量でいい。キャロットラぺのにんじんもゆでるよりレンチンのほうが簡単に程よい食感に仕上がる。

抜いちゃいけない手間としては、たとえば青菜を煮たり、炒めたりするとき、つい、水洗いしてそのまんま鍋やフライパンにポンと入れがちですが、必ず水切りはしてほしい。おいしさが格段に違います。ゆでたほうれん草はすぐに冷水につけて。きれいな緑色が保てるし、シュウ酸くささが取り除けるので味がランクアップします。

手を抜けば抜けちゃう小さなひと手間をちゃんとやることで、食材本来の旨みがグンと引き立つんです。

Q 目からウロコの、「昔の常識、今の非常識」的な簡単テクは?

私たちがレシピを見るとき、つい調味料の分量とか味付けに大きな関心を寄せがちですが、手間や段取りにも目を向けてほしいです。昔と違って、定番の一皿にも今どきの抜いていい手間、外せない手間があることに心を留めてほしいです。

シンプルな炒め物は「塩油」で

調理画像

塩は仕上げに味を調えるものと思っていませんか? フライパンにまず油と塩を入れて混ぜる「塩油」をしてから火をつけ炒めてみてください。中華料理や韓国料理ではよく使うテクですが、塩気をまとった熱い油で全体を軽くコーティングするイメージです。食感がキープできて、塩味が手早くまんべんなくからまります。具材から余分な水分が出るのも防げます。塩油で焼いた目玉焼きは、白身にまんべんなく味がまわって、おいしさは格別。黄身に塩をふらないから見た目もキレイです。

肉も魚も春巻きも「コールドスタート」で焼く

調理画像

「コールドスタート」は、私がもう何年も前から使っているテクです。ポークソテーやしょうが焼き、魚のムニエルなどを、フライパンも油も冷たい状態から焼くことです。これまでの常識なら油を熱してから調理するのですが、それだと身が反ったり縮んだりしがちで、肉や魚を無理に押さえる手間もありましたが、その手間は無しに。春巻きも皮が破れにくく、気軽に揚げられます。

書影『ワタナベマキの大人はこんな自炊でいい』

『ワタナベマキの大人はこんな自炊でいい』
主婦の友社刊(定価1,700円+税)

自分の好みや苦手がわかってきた大人世代。朝・昼・夕と好きなもの、心の底からおいしいと思えるものを食べたいから自炊ははずせません。ひと昔前と比べると、食材や調理器具が改良されていたりもします。このへんで料理をおいしく作るためのノウハウを更新しておきませんか? 本書にはワタナベマキさんが普段からよく作るメニューが詰め込まれています。

アンケートに回答くださった皆様に、
本書を読者3名様にプレゼント!