若い人に知ってほしい、子宮頸がんワクチンと婦人科がん検診 - あなたの人生の舵は、あなたのもの - 提供:公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会

「ワクチンで予防できる唯一のがん」とも呼ばれる子宮頸がんが近年増加する日本で、今年度からHPVワクチン定期接種の積極的勧奨が再開されました。 これにより、妊娠・出産が可能な時期の女性や幼い子どもを持つ母親の命を奪うこともある子宮頸がんの、予防と早期発見が進むことが期待されます。日本婦人科腫瘍学会の片渕秀隆理事長と、YouTubeでの性教育チャンネルが好評なSHELLYさんが、女性の身体と人生を守るために大切な婦人科検診やHPVワクチンについて語り合いました。

* HPV(ヒトパピローマウイルス)……セックスの経験のある女性であればおおよそ50~80%が生涯で一度は感染するとされる一般的なウイルス。子宮頸がんをはじめ、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、腟・外陰がんなど多くの病気の発生に関わる。

身体やセックスについて
伝える場がほしかった

片渕
SHELLYさんの性教育チャンネルを拝見しましたが、正しい情報を楽しくわかりやすく発信しておられるのが素晴らしいと思います。月経カップと他の生理用品との違いや実際に使った時の感想を紹介した回など、私も臨床の現場で経験できなかった内容もあり勉強になりました。
SHELLY
専門家の先生にそう言っていただけてうれしいです。女性が自分の人生の決定権を持つために、自分自身の舵を誰かに渡さないために、身体やセックスについて知ることが大切なんだよ、ということを伝える場を持ちたいとずっと思っていました。タレントになった一番のきっかけがそれですし、私のライフワークでもあります。
片渕
第1回の動画でその話をなさっていましたね。そこにも非常に共感しました。私も教授になってからの目標のひとつは、若い人に正しい知識を伝え正しい判断をしてもらうことであり、自分の看板が役立つならそのためにどんどん活用しよう、という思いがありました。
SHELLY
実は、日本婦人科腫瘍学会というのをこれまで知らなかったんですが、「女性の」「腫瘍」というのはそれだけ専門的な独自の対応が必要なんですか?
片渕
名前を聞いても何のことかピンと来ないですよね(笑)。この学会は婦人科の3大がんである、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんをはじめ婦人科で扱うがんを専門とする医療従事者約4,000人で構成されている公益社団法人で、会員には産婦人科医の他に病理診断医、放射線治療医や腫瘍内科医、看護師などの専門職もいます。婦人科のがんの心配がある場合には、私たちの学会が認定する「婦人科腫瘍専門医」にまずは相談してほしいと思います。(記事下部リンク①ご参照)

「産婦人科は怖い」という
強い刷り込み

片渕
ところでSHELLYさんは、産婦人科にどんなイメージを持っていますか?
SHELLY
私は高校生の頃から現在まで、毎年婦人科検診を受けています。生理で悩んでいた時に、母から「それは産婦人科に行きなさい」「子宮がん検診を受けたほうがいいよ」とアドバイスをもらったからです。そうでなければ自分から産婦人科というのは思いつかなかったかもしれません。
片渕
高校生などの若い人たちに聞いてみると、産婦人科というと妊娠・出産のイメージしかないんですね。婦人科の病気を扱うところ、ましてや子宮や卵巣のがんの治療をするのが産婦人科医であるというようなことを知っている人はほとんどいません。

そして家庭や学校でいつも「妊娠しないように、性病にかからないように、妊娠中絶手術を受けないように」ということが強調され、産婦人科に行くのは決して良いことではなく、産婦人科医はむしろ怖いという刷り込みも強いようです。
SHELLY
実際に怖いお医者さんもいますからね(笑)。私は普段から少しでも心配なことがあると、かかりつけの産婦人科の先生に相談していますが、それでも下着を脱いで内診台に上がる時は、毎回「よし!」と気合を入れる必要があります。それは先生が男性であっても女性であっても同じです。

先生方にとっては日常の仕事でも、そこに来る患者さんは全員必ずそういう思いをしているんだということは、ぜひ忘れないでほしいと思います。

妊娠・出産が可能な時期の
若い女性に増えているがん

片渕
今日はがんについてもSHELLYさんと話をしたいんですが、そもそも日本では年間にどのぐらいの人ががんになっていると思いますか?
SHELLY
想像もつかないです。でもかなり多いんじゃないかと思います。
片渕
ちょうど100万人ほどです。1980年は年間約25万人だったので、40年間で4倍に増えたことになります。その最大の原因は高齢化です。日本人の平均寿命が最初に報告された1947年は、女性が53歳、男性が50 歳で、当時はがんにかかる前に心筋梗塞や脳出血・梗塞で亡くなる人が少なくありませんでした。現在はその年代を乗り超えて長生きできるようになったために、がんにかかる人が増加しています。

その中で重要なことは、高齢化とは別の視点で、「AYA(アヤ)世代」(Adolescent and Young Adult:思春期および若年成人・15歳から39歳まで)のがんが増えていることで、特に若い女性に多いのが子宮頸がんです。SHELLYさんは子宮頸がん検診を受けておられるんですね?
グラフ:小児・AYA世代の年齢別のがん患者数
SHELLY
はい、18歳から毎年受けています。特に気がかりなことがなければ、2年に1回というのが国の勧める受診間隔のようですが、冬の初めにインフルエンザワクチンとセットで検診を受けるのが私の習慣になっています。産婦人科でインフルエンザを打つと、いつも空いているのでおすすめです(笑)。

自分のチャンネルでもよく話すのが、子どもがほしくなって産婦人科に行って、そこで初めて病気が見つかることもあるんだということです。そうなれば治療を優先する必要があるので、妊娠できる時期が数年も遅れてしまうかもしれない。人生設計が大きく変わることになります。そうならないために、普段から婦人科検診を受けることが大切だと思っています。(記事下部リンク② ご参照)

早期のうちに発見できる
子宮頸がん検診

片渕
まさにそこがポイントで、子どもを持つか持たないかは個人の自由ですが、やはりほしいとなった時に、それが可能な身体の状態を維持しておくことが重要です。先ほど話したように、子宮頸がんは20〜30代の患者さんが多くいます。つまり子どもがほしいのに子宮を摘出しなければならない人や、小さな子どもを残して亡くなる若いお母さんが少なくないということです。

しかし子宮頸がん検診を受けて見つかる場合、ほとんどが「がん」に進む前の「前がん状態」*ですので、子宮を全摘出することにはなりません。ぜひ検診を受けて早期発見に努めてほしいと思います。
*自治体が行っている検診で見つかった異常のうち、浸潤がん(子宮を全摘出する場合が多い状態)は約4%で、残りは前がん状態(子宮頸部上皮内腫瘍:CIN)と報告されている(厚生労働省 令和2年度地域保健・健康増進事業報告)。

グラフ:恋愛、結婚、出産、人生の大事な時期の子宮頸がん[女性の出産年齢と年齢別子宮頸がん発症率(2012年)]
SHELLY
子宮頸がん検診については費用の補助が受けられますよね?
片渕
ええ、自治体によって違いますが、自己負担額はおおよそ1,000〜5000円ほどで、それ以外は公費でまかなわれます。がん検診には「対策型」と「任意型」の2種類があり、国が推薦して自治体からお知らせが届くのが「対策型」で、胃がん・子宮頸がん・肺がん・乳がん・大腸がんという5つのがん検診がここに含まれます。このうち他の4つは40歳以上または50歳以上が対象ですが、子宮頸がんだけは20歳から受けることができます。

また2009年には子宮頸がん検診の受診率を上げるために無料クーポン券制度が始まりました。こちらは20歳から40歳までの5歳刻みでクーポンを発行する自治体が多いようです。

将来、子宮頸がんで
亡くなるのは
日本人だけ?

SHELLY
私は自分のチャンネルで話すために子宮頸がんについてかなり調べたんですが、今世紀中に人類は子宮頸がんを撲滅できるという見方があるそうですね。ただしそのためには15歳までの女性の90%がHPVワクチンを接種し、子宮頸がん検診も受診する必要があるのに、日本だけは接種率も検診受診率も飛び抜けて低くて、近い将来子宮頸がんで死ぬのは日本人だけになるという言葉もあってショックでした。
片渕
日本でも2013年にHPVワクチンの定期接種(国が接種を勧奨し公費で負担する)が始まりましたが、わずか2か月で積極的勧奨を中止してしまいました。当時中高生の女子生徒さんが、接種後に重い後遺症に悩まされていると大々的に報じられ、批判が高まったためです。

しかしその後、専門家が時間をかけて検証した結果、他の定期接種ワクチンと比べて大きな問題があると判断される医学的根拠はありませんでした。もちろん、その方たちはとてもつらい経験をしていらっしゃると思いますが、今回のコロナワクチンをみても分かるように、安全とされるワクチンでも人によっては強い副反応が出ることもあります。残念ながらどんな医療もリスクがゼロということはありません。HPVワクチンの接種後に生じた症状については、適切な診療を提供するため、各都道府県において協力医療機関が選定されています。
SHELLY
リスクと効果を考えて何を選択するかですよね。そのためには正しい情報が必要なのに、私は今の報道にも問題があると思います。4月から定期接種の積極的勧奨が再開されたことや、キャッチアップ接種が始まったことをもっと知らせてほしいです。
片渕
中断されていた8年余りの期間に接種をしなかった女性の中では、今後子宮頸がんになる人が約26,000人、亡くなる人は6,600人以上になるという専門家の推計もあります。キャッチアップ接種を含めて、少しでもワクチンの接種率を上げていくことが重要です。
*キャッチアップ接種……積極的勧奨が中断されていた期間に接種の機会を逃してしまった人のため、1997年4月2日~2006年4月1日生まれでHPVワクチンの3回接種を完了していない女性に公費で接種を支援する。期間は2025年3月まで。

HPVワクチン接種が
必要なのは
女性だけではない

SHELLY
HPVでがんになる可能性があるのは女性だけでないですよね? なのに定期接種の対象になるのは小学6年から高校1年までの女の子だけ。それに現在の2価・4価ワクチンよりも効果の高い9価ワクチンがせっかく日本でも承認されたのに、接種は全額自己負担です。この辺りも国にはどうにかしてほしい! って、さっきから私、文句ばっかり言ってますけど(笑)。
片渕
でも本当にその通りです。HPVは子宮頸がん、腟がん、外陰がんといった女性特有のがんだけでなく、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどの原因にもなるので男性も注意が必要です。そもそも男性がHPVを持っていれば、それがセックスで女性に感染することもあるので、本来なら男子にも接種を勧奨しなければ不十分です。

また子宮頸がんの原因となるウイルスのうち、主な2種類(16型、18型)の予防に効果のある従来の2価・4価ワクチンで子宮頸がんのおおよそ70%を予防できるとされますが、9価ワクチンの予防効果は90%です。ぜひ多くの人が利用できるようになることを願っています。一方で、現在のどのワクチンも100%予防できるわけではないので、接種していても定期的ながん検診は欠かせません。
SHELLY
もちろんキスやセックスが悪いことではないけれど、人と接することにはリスクもある。だからそのリスクを知って病気の予防に努めようね。そんなふうに自分の娘たちには話をしたいと思っています。そして対象年齢になったらHPVワクチンについても一緒に調べて、接種を勧めるつもりです。(記事下部リンク③ご参照)

日本社会に特有のタブーを
変えていきたい

片渕
最後にSHELLYさんに特にお聞きしたいことなのですが、欧米に比べて日本では産婦人科を日常的に受診する人も、がん検診を利用する人も非常に少ない状況を、どうすれば変えていけると思いますか?
SHELLY
私はアメリカの文化や考え方の影響を受けたことが大きいと思いますが、日ごろ女性や病院の先生方とたくさん話をして感じるのは、日本では腟まわりのタブーが強すぎるということです。そもそも生理を話題にすることすら嫌われます。

最近私は、タンポンをどこに入れればいいかわからないと話す40代の女性と会って衝撃を受けました。でも自分の性器をじっくり見たこともないとしたら、知らなくても不思議ではない気もします。清潔好きの日本人が生理用品といえばナプキンしか知らない、タンポンや月経カップを試してみようとも思わないというのも、考えてみれば不思議です。それもタブーのせいかもしれません。

すごく軽い言い方をすると、「え、ワクチン受けてないの? ダサ」みたいな空気に変えていくことですよね(笑)。自分で自分の身体を守るのは当然だよね、それができて初めて大人だよね、という空気があれば、「検診に行く」「産婦人科に相談する」ということをポジティブに捉えられるはずです。子宮を持つすべての人たちへの、そんなエンパワメントが重要だと思います。
片渕
まったく同感です。日本婦人科腫瘍学会では、ホームページをリニューアルし、HPVワクチンや婦人科がん検診をはじめ、いろいろな情報についてわかりやすく紹介するアニメーションを制作しました。HPVワクチンについては詳細なQ&Aも掲載しています。(記事下部リンク④ご参照)

繰り返しになりますが、何より大切なことは正しい情報による正しい判断であり、それを伝える教育です。私たち医師だけでは力およばずの部分もあると思いますので、SHELLYさんには今後もぜひ正しい情報の発信を続けていただければと思います。本日はありがとうございました。

PROFILE

公益社団法人日本婦人科腫瘍学会 理事長 片渕秀隆さん

かたぶち・ひでたか/1982年熊本大学医学部卒業。 米国ジョンズ・ホプキンス大学で婦人科がんの研究に従事した後、97年熊本大学医学部産科婦人科学講座講師、 2003年准教授、2004年から教授。21年熊本大学名誉教授、くまもと森都総合病院特別顧問に。 若い人たちに身体と性についての正しい知識を伝えるため、 熊本県内の高校を中心に100回以上の授業を実施するなど教育活動にも精力的に取り組む。

タレント SHELLYさん

シェリー/1984年横浜生まれ。 幼少期を父の母国・米国で過ごし、小学校から日本へ。 雑誌モデルをきっかけに、TV、ラジオなどタレントとして活躍の場を広げ、現在はNTV「ヒルナンデス!」金曜レギュラーも務める。 2021年からYouTubeで性教育をテーマとする公式チャンネル「SHELLYのお風呂場」をスタート。 チャンネル名の由来は、性や身体についてオープンに、裸の心で話したいとの思いから。

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