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特別養子縁組

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インタビュー

「おかえり」と迎えてくれる「家庭」があること

福岡市こども総合相談センター えがお館
所長 藤林武史さん

多くの人の心に響いた先進的な取り組み

実親が育てられなくなった子どもに家庭的な環境で育つ機会を与えるためには、どれだけ多くの人に里親や養子縁組を理解してもらい、子どもを迎えるための登録をしてもらえるかが大切です。福岡市では、専門性の高い職員を多数配置して、里親や養親が安心して相談できる窓口や的確な支援ができる体制を整えてきました。同時に、多くの市民に里親や養子縁組を待っている子どもたちがいることを知ってもらうため、かみ砕いた表現と親しみやすいイラストを使ったHPで里親や養子縁組へのイメージを一新したり、NPOと連携して10年以上前からフォーラムや出前講座を行ったりしてきました。承諾いただいた当事者や家族の協力を得て、里親や養親家庭の雰囲気が映し出されたDVDも作成しました。このようにして、たくさんの人に実情を知らせたことで、関心を寄せる人が増えてきたと感じます。

いつも同じ人がそばにいる安心感

子どもにとって、出かけるときに「いってらっしゃい」、帰ってきたら「おかえり」、朝は「おはよう」、夜は「おやすみ」と言ってくれる大人がいつも同じ人であることは、とても重要な意味を持っています。

乳児院や児童養護施設の職員には、もちろん親身になってケアしていただいていますが、交代制なので24時間いられるわけではありません。職員は自分たちの家に帰っていくわけで、施設は「家庭的」ではあるけれど、「家庭」ではないんですね。

その点、里親や養親家庭では、いつも同じ人がそばにいてくれて、その場所から子どもが出かけたり、帰って来たりします。ここが自分の家だと思えること、いつも見守ってくれる信頼できる大人がそばにいることは、子どもの健全な成長には欠かせません。なかでも、特別養子縁組は、親子であることが法的にも保障され、将来にわたってずっと家族であるという意味で、子どもにとってはとても安定した関係といえるでしょう。

特別養子縁組は子どものための制度

ただ、特別養子縁組だけが唯一のゴールというわけではありません。実親と離れて、施設や里親で暮らす子どもにとっての、第一番のゴールは、実親と一緒に暮らせる道を探ること。それが難しい場合は、親族の家で暮らせないかを考えます。それでも難しいと判断した場合、次の選択肢の一つとしてあがるのが養子縁組になります。こういった成人後も続く法的に安定した人間関係を子ども時代に保障することは、子どもの育ちにとってとても重要なことなのです。

養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の二とおりがあります。一番の違いは実親との法的な関係です。相続や扶養などの法的関係が残るのが普通養子縁組、関係が残らないのが特別養子縁組です。親族が養子縁組を組む場合のように、実親との法的な関係や交流を大事にする場合は、普通養子縁組が選ばれることが多いようです。一方、実親との法的関係を残しておくことが、子どもの安定した育ちに良くない影響を与える場合には、特別養子縁組が望まれます。子どもと実親との関係は様々な要素がありますので、その状況に応じて普通養子縁組も特別養子縁組も両方のチャンスが、子どもの年齢にかかわらず、あるということは重要なことだと思います。

現時点では特別養子縁組が成立するのは原則6歳未満という年齢制限があるために、特別養子縁組が必要であるにも関わらず、その機会が奪われている子どもたちが大勢います。法律が見直され原則15歳までに引き上げられれば、チャンスが広がりますので、子どもにとって大きな利益になるでしょう。とはいえ、法改正はスタートに過ぎません。特別養子縁組制度が、子どもにとって本当に意味あるものにしていくための取り組みを重ねていく必要があると思います。

特別でも特殊でもない、普通の親子として

最近は、養子縁組をごく普通に受け入れる人が増えてきています。血のつながりよりも親子の絆をつむいでいくことの方が大切という発想を持って来られる方が増えてきた印象があります。昔のように「血のつながらない子どもと本当に親子になれるのだろうか」と不安に思う人は少なくなり、血縁を超えた家族のあり方が広がってきたのを感じます。

特別養子縁組が成立した親子に会ってみますと、特別な親子でも特殊な親子でもなく、普通の親子関係を築いています。養子で迎えられたある女性の言葉が、とても印象的でした。その女性は、自分の出自や実親のことを知りたいとは思ったけれど、いつもそのことばかり考えていたわけではないと言うんです。思春期頃に「髪形はこれでいいのかな」と悩むのと同じように、出自や実親のことを悩んでいたと言われます。

血のつながりよりも親子の絆をつむぐ

福岡市の特別養子縁組成立件数は、年間6〜8人と、年々少しずつ増えています。その要因として、子どもの育ちにとって最善の環境は何かを考えたとき、養子縁組を一つの選択肢とする、職員の意識が変わってきたことがあげられます。

もう一つの理由は、NPOとの連携ですね。年齢が低い子も高い子も、障害がある子もいるので、さまざまなタイプの養親さん候補が必要になります。それを児童相談所が単独で探すのは不可能です。同時に、養親が一人で悩みを抱え込まないように、理解して協力してくれる地域コミュニティーも必要です。そうすると、福岡市全体に、里親制度や養子縁組制度への理解を広げるといった取り組みが欠かせなかったと思います。行政とNPOが、それぞれの専門性を生かし、情報を発信するために協働してきたことは、里親や養子縁組を進めるうえでとても大きな力になっていると思います。

特別養子縁組には、制度面でわかりにくいところもたくさんありますから、疑問や悩みに応えられるよう、適切かつ正確な情報の提供が必要と思っています。そのためには、児童相談所は、養子縁組を希望する大人はもちろん、当事者である子ども自身にも、相談したり問い合わせができる開かれた場でありたいと思っています。

ふじばやし・たけし/精神科医師。虐待やトラウマで苦しむ人たちをケアした経験をもとに2003年から現職。先進的な取り組みで注目されている。

福岡市こども総合相談センター えがお館
http://www.city.fukuoka.lg.jp/kodomo/egaokan/

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