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特別養子縁組

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インタビュー

親になりたい人、その時は育てられない人に寄り添い続ける

医療法人社団諍友会 田中病院
母子支援室 佐藤美穂さん

予期せぬ妊娠をした女性たちを救いたい

産婦人科は、新しい命を迎える幸せな場所です。その一方で、予期せぬ妊娠をした女性が中絶というつらい決断をする場所でもあります。確かにあまりにも若く、相手の男性の支えもなく、一人で育てられるのだろうかと心配になるような女性はいます。でもその人たちを救う方法が、本当に中絶しかないのか。自分は正しいことをしているのだろうか。当院の院長は、昔からずっとそのことを考え続けていたそうです。

そうした長年の問いへのひとつの答えとして、当院で特別養子縁組の取り組みをスタートしたのが2013年。院長が鮫島浩二先生(さめじまボンディングクリニック)を何度も訪ね、一緒に「あんしん母と子の産婦人科連絡協議会(あんさん協)」を立ち上げ、院内には特別養子縁組支援外来を開設しました。妊娠に戸惑い不安を抱えた女性と、子どもを授かるために不妊治療を続ける人たち、双方にとって解決の選択肢を増やすと同時に、大切な赤ちゃんの命を救う意義ある取り組みだと考えています。

本人が決断するまで支えて待ち続ける

妊娠した女性のなかには、その事実を家族にも話せず、家を飛び出しホームレス同然で病院にくる人もいます。所持金もなく、母子手帳も持っていない。健康保険にも入っていない。だからといって、妊娠していることがわかっている女性に路上生活をしなさいというわけにもいかないので、病室のベッドを提供し食事も与えることがあります。コストは当院の手出しになりますが、「赤ちゃんが助かるためならお金なんて惜しくない」という院長に支えられ、できる限り柔軟な対応を心がけています。

追い詰められた状況で自尊感情が極端に下がり、自分なんかどうなってもいいという女性に少しでも心を開いてもらうため、妊婦さんとスタッフみんなで交換日記をしたこともありました。時間をかけ、少しずつこれまでの人生や現在の悩みを聞き出し、思いを共有していく。その間、私たちは何も強要しませんし、特別養子縁組に誘導することもありません。

一度は縁組を決意しても、生まれた赤ちゃんを腕に抱いたら心が揺れ動く人もいます。それも当然ですし、本人が納得し、自分で決断するまで私たちは寄り添い続けます。どちらを選択するにせよ、「最後は自分で決めた」ということが、本人のその後の人生にとってきわめて重要だからです。

養親の愛情を受けた子どもの姿に喜び

本音をいえば私たちも日々悩み、葛藤しています。自分の何げないひと言が、生母さんや養親さん、赤ちゃんの運命さえも左右することがあるかもしれない。そう考えると、重圧に押しつぶされそうな日々です。新生児の頃にはわからなかった心身の障害が、成長して初めて見つかることもあります。仮にそうなった場合も、養親さんは子どもを同じように愛してくれるだろうか。縁組が成立したあとも、どこかで不安は消えません。そんなとき、かわいいわが子を見てほしいと養親さんが山ほど送ってくださった写真を目にして、自分たちの仕事は間違っていなかったと涙がこぼれそうになることもあります。

特別養子縁組は、子どもと養親が法的な親子関係を結ぶ制度です。「法的な親子」である以上、将来は養親さんの財産を相続し一族の墓にも入ることになりますので、仮に親族でそのことに不満を持つ人がいれば、後々トラブルに発展する可能性もあります。ご夫婦の熱意だけでは乗り越えられないこともありますので、養子を迎えるにあたっては周囲の人たちとよくよく話し合い、十分な理解を得て欲しいと思います。

一人ひとりに異なる事情と思いがあり、たったひとつの正解などない。これまで多くの生母さんや、養親希望のみなさんと接してきた私たちの実感です。もちろん特別養子縁組だけが答えではありませんが、予期せぬ妊娠をした人や親になりたいと願う人たちは、こういう制度があり、苦しい時に頼れる場所もあるんだということを、どうか頭の片隅にでも置いていてください。

さとう・みほ/田中病院特別養子縁組支援外来の母子支援室にかかわる。同病院で成立した縁組は7組。

田中病院
https://www.tanaka-hospital.jp/

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