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特別養子縁組

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インタビュー

大切なのは、子どもにとって信頼できる存在であること

公益社団法人 家庭養護促進協会 神戸事務所
主任ケースワーカー 米沢普子さん

永続的な家族関係が自己肯定感を育む

私たちの協会が立ち上がった昭和35年当時、養子縁組への社会の理解度はとても低いものでした。専門家のなかでも、里親は子どものための制度だけど、養子縁組は「後継ぎがほしい」「老後の安心のため」といった親都合の制度ではないかという意見もあったほどです。

親が育てられない子どもたちを保護する児童養護施設も、大勢の児童が一緒に生活を共にするような大舎制の施設でした。私たちは、もっと家庭に近いかたちで暮らせる環境を整えていこうと、神戸市のサポートを受けて小規模施設(家庭養護寮)をつくり、並行して里親や養子縁組の支援を続けてきました。新聞やラジオで里親を求める「愛の手運動」も、そのころ始めた活動の一つです。

「愛の手運動」が20年経ったとき、3年以上里親家庭で育った子どもたちと、養子縁組で育った子どもたちの調査をしたのですが、興味深い結果が出ました。どちらも家族への帰属感はあるものの、養子縁組の子どもたちの方がより自己肯定感が高いという結果が出たのです。成人したら育ての親の元を離れなければならない里親では、将来への不安から落ち着きがなくなったり親の愛情を試す行動に出たりする時期やケースが見受けられます。一方の養子縁組は、親子関係が法律的にも守られた永続的な家族形態のため、安心できる環境でのびのびと育つことができたということでしょう。ですから、私たちも特別養子縁組がかなう状況が整っているなら、なるべくそうできるよう支援しています。

家庭で育つことには、もう一つ重要な意味があります。それは、家族や親のモデルを持てるようになるということです。

例えば児童養護施設にいる子どもたちは、自立するために自分のことは自分でするよう学んでいるので、洗濯物が山ほどあったとき自分のものだけを引っ張り出してたたもうとします。でも、家庭では家族みんなが協力し合うのが基本なので、親やきょうだいの分もたたむのが普通です。あるいは、施設では毎日献立が変わりますが、家庭では前の日の残り物を食べることもよくあります。こうした世間の「当たり前」は、実体験を通してより身につきやすいといえます。そういうことを知らないまま大人になると、将来自分が家庭を持ったときどうしたらいいのかわからなくなってしまったり、子どもができたときにどう育てたらいいかわからなくなってしまったりして、同じことを繰り返してしまう可能性があります。社会性を身につけるうえでも、家庭はとても大切な役割を担っているのです。

子どもを育てたい——夫婦で思いを一つに

親を必要とする子どもたちのバックグラウンドはさまざまです。特別養子縁組を希望する夫婦へは、何よりもまず養子縁組は子どものための制度であることを理解していただきたいと思います。

特別養子縁組をするうえで大切なことの1つは、「自分自身で子どもを迎える決断をした」とはっきり言えることです。妻に言われたから、夫に言われたから協力するというスタンスでは、いつか夫婦や親子関係に亀裂が生じかねません。

私たちのところへ相談に来られた夫婦で、男性は積極的に話すのに、女性はいつも黙っているケースがありました。そこで女性だけに話を伺うと、子どもを育てたいけれど、まだ気持ちの整理がついていないということだったのです。それなら、気持ちが固まったときに改めてスタートを切りましょうと、そのときは帰られました。

1年半後にまた相談に来られたときは別人のようでした。心臓手術が必要な子どもを引き取ることになったのですが、女性は手術が済んでからではなく、手術前に引き取りたいというのです。子どもがつらいときにそばにいてあげたい。だから自分たちの家から手術に向かわせたいのだと。気持ちが熟したからこその真摯(しんし)な思いが伝わってきました。

多様な家族のかたちが当たり前の世の中へ

特別養子縁組は、血縁はなくてもまぎれもない家族のかたちです。ただ、子どもを育てるなかでは、養子縁組だからこその悩みも出てくると思います。例えば、生みの親が別にいることは事実です。ここを否定すると、生い立ちそのものを否定することになるので、子どもには年齢に応じて丁寧に伝えていかなければなりません。

あるいは、子どもが大きくなって生みの親を探したいとなったとき、幸せな面会ができるとは限りません。そのとき、子どもにどう声をかけるべきか。

こうしたことを理解したうえで、それでも子どもを第一に考えて育てていきたいという強い思いを持つことが大切です。悩みに直面したら、自分たちだけではなく、支援機関の専門家が客観的な立場からその子に話すことも重要です。いまは支援団体もたくさんありますから、ひとりでなんとかしようとせず、ぜひ相談してください。

私たちの協会では、養子縁組を希望する人に向けて年3回講座を開いています。そこでは、制度の紹介だけではなく、養子縁組をした人から直接体験談が聞けるようにしています。なかには、前から講座があることは知っていたけれど、何回も開催の広報を見てやっと参加する決心がついたという人もいます。同じような立場の人がたくさんいて安心したという参加者もいます。

さまざまな家族のかたちがあり、特別養子縁組はその一つです。大切なのは、多様な家族のあり方が認められることであり、子どもにとって信頼できる存在であり続けることなのです。

よねざわ・ひろこ/ソーシャルワーカーとして、40年以上にわたり養子縁組や里親の支援を続けている。著書に『里親のためのペアレントトレーニング』がある。

公益社団法人家庭養護促進協会
http://ainote.main.jp/wp/

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