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特別養子縁組

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インタビュー

養子縁組は家族のかたちの一つ

一般社団法人 アクロスジャパン
代表・ケースワーカー 小川多鶴さん

この状況をなんとかしなければ

アメリカでは不妊治療を開始するときに、「あなたは今こうだから、こういう選択肢がありますよ」という説明を受けます。その選択肢の一つに養子縁組があり、養子を迎えることはごく一般的なこととして定着しています。幼稚園から養子縁組に関するクラスなども始まるなど、養子縁組は特別なことではないものになっています。

私もアメリカに住んでいたときに不妊治療をしたのですが、妊娠に至らなかったことから、日本から養子を迎えることができました。当時、日本では養子縁組の制度がきちんと活用されておらず、情報もとても少なかったです。私が日本から養子を迎えたことは瞬く間に口コミで広がり、いろいろな方からたくさん相談がくるようになりました。私一人では皆さんのお力にはなれないので、サンフランシスコの養子縁組団体におつなぎしたところ、法務はいいが日本の文化や制度はわからないから手伝って欲しいということになり、養子縁組コーディネーターとしてアメリカで仕事を続けていました。

あるとき、たまたま仕事で日本に戻ったときに妊婦さんから相談を受けました。経済的な事情からやむなく養子縁組に託すことを決めたけれど、あっせん団体から不当な扱いを受けていると。産んだ赤ちゃんがどんな人の元に行くのか教えてもらえないし、団体の言いなりになるしかない状況である。行政にも相談したけれど、窓口がはっきりせず相手にしてもらえない。助けて欲しい、というお話でした。日本のあまりの遅れと法整備が整っていない実情に愕然(がくぜん)として、2009年に日本に帰国しアクロスジャパンを立ち上げました。私自身が当事者でもあるので、相談に来られる方に近い立場でのアドバイスを心がけています。

子どものもつ背景にも深い理解を

私たちのところに相談に来られる夫婦の90%以上は、不妊治療がきっかけで養子縁組を考えるようになった方たちです。「いつから育てられるのか」「子どもは選べるのか」「障害や病気が見つかったらどうすればいいのか」と聞かれることも多いですが、自然に授かった子どもと同じように限りなく考えてほしいと願っております。性別も外見も選べない、病気にならない保証もないのは、自分が産んだ子どもでも同じこと。違うとしたら、子どもが持つ“背景”です。

子どもには本来、守ってくれる親の存在が必要ですし、世界中の子どもたちはその権利を持っています。「あなたはよく夜泣きをしたのよ」と、幼い頃のエピソードを聞かされたりしながら、その親のもとで守られ、安心して育っていくのです。養子縁組は、さまざまな理由で実親による養育が難しくなった子どもを、一生実の我が子として迎える制度であり、その子どもたちには3歳なら3歳なりの、0歳にも0歳なりの物語があります。そうした“背景”にも深い理解が必要です。

こんなケースがありました。赤ちゃんができたことで夫婦仲が悪くなり、男性は子育てにまったく関与しようとしませんでした。二人の間には、すでに高校生の子どもがいたのですが、その子が「家族が崩壊したのはこいつのせいだ」と、次第に赤ちゃんを虐待し始めたのです。これ以上自分たちでの養育は難しいからと女性から相談を受け、子どもを保護したのですが、2歳近くになっていた赤ちゃんは喃語(なんご)もなく、歩行もおぼつかず、とてもおびえていました。それでもその子をぜひ養子として迎えたいという、被虐待児の養育に詳しい育ての親さんが見つかり、その家族のもとで愛情を受け、現在では利発でスポーツ万能な子に大きく成長しました。育て親のかけがえのない愛情と理解、努力が子どもの人生を救ったのです。

相談に来る人が最良の選択をできるように

私たちのところでは、産婦人科クリニックや弁護士とチームを組んで、プライベートなカウンセリングルームで相談をお受けしています。不妊治療中の人や妊婦さんでも安心して相談できる雰囲気のなか、さまざまな悩みを伺い、ご自身にとって最良の選択ができるようお手伝いをしています。

相談に来られる方のなかには、「私は子どもが欲しかったのではなく、妊娠する自分に憧れていただけだった」と、養子縁組を考え直す人もいます。誰かに話を聞いてもらうことで、子どもを授からないことへの心の整理ができるようになったのだと思います。

養子縁組をした人たちの交流会を年1回開いていますが、みなさん明るく、不思議なことですが養親子で顔つきなども似てきています。同じものを食べ、同じように感じ、日々暮らしていると、自然とそうなるのかもしれません。

子どもを迎えてからのサポートをするなかで、養親子特有の悩みと思って相談に来られたけれど、お話を伺っているうちに、ご自身が悩まれていたことは「子育て」に関することであり、養子であるとかないとかはあまり関係ないことだった、と気づかれる方もいます。

思春期に「養子にもらってくれなんて言った覚えはない!」と子どもに言われ悩む方もいますが、自分で産んだ子であっても「産んでくれなんて言ってない!」と言われることはありますね、とお話しすると、はっ、とされています。きっとその子どもたちは私たち「親」を試しているのかもしれません。「そうじゃないよ」って言って親に抱きしめてほしいのかもしれません。私は、むしろ、養子にそう言われたら、子どもが思いのたけをぶつけられるほど、ぶつかり合える親子である証拠と思っていいと思っています。そこで親が不安になったり心が揺らぐと、子どもも不安になったり、揺らいでしまうかもしれませんね。子どもに自分らしく生きてほしいと願うように、親もまた、自分らしく育てていける親であることは大切ではないかと思います。

養子縁組は家族のかたちの一つ

日本は自分と異なるものや、少数派を受け止めるのに、とても慎重な国だと思います。欧米では、文化も言語もさまざまな人たちが集まっているので、違って当たり前という感覚を必然的に持ち合わせています。

世界共通、日々家族づくりは社会情勢と密接に関わっていますが、家族のかたちは人それぞれ、一つとして同じかたちはありません。多くの人に養子縁組への理解を深めてもらうためにも、多様な生き方を受け入れられる社会になるよう願っています。

おがわ・たづる/在米中に日本での養子縁組支援の遅れを知り、2009年にアクロスジャパンを設立。年間400件以上の相談にのっている。

アクロスジャパン
http://www.acrossjapan.org

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