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特別養子縁組

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インタビュー

積み重ねた時間こそ、家族の証し

医療法人きずな会 さめじまボンディングクリニック
事務長 鮫島かをるさん

養子に託す選択も、母としての愛情

日本で特別養子縁組の法律が施行されたばかりの頃、産婦人科医である夫が予期せぬ妊娠で困っている高校生に出会ったことをきっかけに、30年以上にわたり養子縁組に取り組んできました。たとえ予想外の妊娠でも、妊婦が安定した環境で出産を迎えることが、赤ちゃんにとっても妊婦のその後の人生においても大切であることから、実母ケアを第一に考えた養子縁組をしています。

養子縁組に対する誤解の一つに、実母が子どもを捨てたような印象を持つ人がいます。でも、育てたくても育てられない事情があり、養子に託す選択をするのも母としての深い愛情の表れであることを理解してほしいと思います。ですから私たちは、実母の思いを理解してもらえる方に養子を託すようにしています。

産婦人科医療が立ち上がらなければ

2006年に開業したさめじまボンディングクリニックには、予期せぬ妊娠をした妊婦さんを長期に預かる部屋があります。以前、他のあっせん団体からある妊婦さんを預かってほしいといわれたのですが、その団体は生まれた赤ちゃんと実母を接触させず、その場で養父母に渡す方針をとっていました。私たちは、たとえ赤ちゃんを手放すとしても、赤ちゃんに対してできることをしたという実感が実母の立ち直りにも再発防止にも重要な意味を持つという観点から、実母が赤ちゃんと過ごす時間を数日間とっています。団体の考え方とは180度違うので、本人の意思に任せるという条件で受け入れることにしました。

妊婦さんは、「赤ちゃんに会いたい」と泣きながら訴えてきました。よくよく話を聞くと、団体との間に「気持ちを変えないこと」「赤ちゃんに会わないこと」と誓約書を結ばされていたんですね。でも、本当は赤ちゃんに触れたいし顔も見たいのだと。

当時の養子縁組は、養父母にとって都合の良いかたちで進むケースが多くありました。このままでは、たとえわずかでも実母が子どもを育てられるようになる可能性や、子どもが実親に育てられる権利を剝ぎ取られてしまいます。

もちろん、育てられない事情がある人はいます。でも、なかには育てられる人もいます。私たちのところに予期せぬ妊娠で相談にくる人たちの30%は、自分で育てる選択をしています。先ほどの妊婦さんも、家族の協力を得て自分で育てる道を選びました。

特別養子縁組は、何よりもまず子どもが実親の元で育てられる可能性を探り、それでも難しい場合は養子として迎えてもらおうというものです。この経験は、養子縁組には実母に寄り添う産婦人科の視点が入ることが重要であることを改めて気づかせてくれました。

幸せな我が家で、この子に幸せになってほしい

子どもを迎えたいと相談に来られるご夫婦のなかには、悲しい流産や死産を繰り返した人もいます。不妊治療で子どもを授かることができず、我が子の代わりのような気持ちからスタートすることが多いです。でも、出発点はそうであっても、それだけで子どもを託すことはできないんですね。親に育ててもらえない子どもの現状を知って、どれだけ開眼するかなんです。

「自分たちが不幸なのは子どもがいないから」「赤ちゃんが来れば幸せになれる」と考えているご夫婦には、もう一度考えてほしいと思っています。そのままいくと、子どもに何かあったとき必ず「こんなはずではなかった」となってしまいますから。「自分たちには子どもがいなくても幸せになる術(すべ)がある。幸せな我が家に子どもを招き入れることで、その子を幸せにしたい」と思えることが大切です。

登録には、地元の児童相談所で里親研修を受け、里親認定を受ける必要があります。そのうえで、養育歴、夫婦仲、里親研修の感想、子どもを育てたい理由などいくつかの質問への回答と、3カ月以内の健康診断書、女性の場合はがん検診の結果などを提出してもらいます。

マッチングですが、それぞれのケースには実父母の背景があり、養父母それぞれの生育歴があり、また子どもの性別によっての相性がありと、さまざまな角度からの熟慮があり決まっていきます。ただ、赤ちゃんがこの人の元なら幸せになれると選んできているのかなと感じることも多々あります。多くても10家族くらいから、少ないときは3家族くらいからマッチングをするのですが、条件に合う夫婦が1組しかいないこともあるからです。

実母を思う気持ちは、子どもを思う気持ち

子どもを託すときは、「教育入院」といって夫婦で病院に泊まってもらいます。そこでは、分娩(ぶんべん)室で赤ちゃんを胸に抱いてもらい、実母から養父母に宛てた手紙を代読しています。「この子が本当にかわいい。でも、私にはこういう理由があって育てられない。だからお願いします」という思いを受け、養父母の皆さんは思いを新たにするようですね。

なかには「実母の影がちらついてつらかった」という養父母もいると聞きます。でも、私たちのところで縁組をした養父母は、「実母の姿がちらついて何が嫌なんですか?」とおっしゃいます。「だって子どもを産んでくれた人ですよね」と。いろいろな考え方があり、どれが正解ということはありません。ただ、これだけはいえます。実母に理解を示すことは、子どもの将来にとってもプラスの循環を生みます。中絶しないで子どもを守り抜いてくれた実母への感謝、その実母への思いは、そのまま子どもを思う気持ちでもあるからです。

この教育入院では、沐浴(もくよく)の仕方やオムツの替え方などもお伝えします。日中だけではなく夜間の授乳や夜泣きへの対応もするので、初めての子育てでも安心してスタートを切ることができると思います。

三者の悲しみに寄り添う

養子縁組が成立した後の養父母さんは、表情が明るくなりますね。特に不妊治療をしていた方は、ある意味、自然に逆らうことをしていたわけですから、とてもきつかったはずです。ところが、赤ちゃんを育てることで輝き出すんです。内面の幸せがにじみ出てくるのでしょう。

ただ、養子縁組は必ずしも幸せな側面だけではなく、三者の悲しみに寄り添うという側面があることも覚えておいてください。我が子を育てられなかった実母の悲しみ。実母に育ててもらえなかった子どもの悲しみ。自分で赤ちゃんを産めなかった養父母の悲しみ。このすべてを理解して、寄り添えること。そして、どんなに養父母が愛情を持って育てても、養子にはどこかでパズルの一片が外れている感覚があることをわかってあげる必要もあると思います。

いろいろ不安もあると思いますが、まずは養親説明会に参加してみてください。養子を迎えた当事者の話を聞けば、不安は解消していくと思います。

親子とは、ともに生きる最も身近な存在であり、ともに笑い、泣き、楽しみ、悲しみ、歩んでいける関係です。縁あって一緒に生きることになった親子は、最良の絆を育めると思います。積み重ねた日々の重さは、何事にも変えられない事実であり、紛れもない家族の証しなのですから。

さめじま・かをる/産婦人科医療施設が特別養子縁組にかかわる必要性を説き、連携病院とのネットワーク作りにも尽力している。

さめじまボンディングクリニック
http://bonding-cl.jp

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