朝日新聞デジタル

広告特集 企画・制作 朝日新聞社メディアビジネス局

特別養子縁組

SHARE

facebookにシェア
twitterにシェア
インタビュー

子どもの幸せを願う親から親への“バトン”

医療法人明日葉会 札幌マタニティ・ウイメンズホスピタル
副院長兼看護部長 佐々木紀子さん

不安や葛藤の末にたどり着いた答え

私たちは生みの親のことを「生母さん」と呼んでいます。これまで相談にきた生母さんの多くが未成年で、なんとなく妊娠に気づいていたけれど周りに言えず悩んでいた人や、妊娠すらわからなかったという人もいます。ほとんどは一緒に住んでいるお母様が体形の変化に気づき、一緒に相談に来られます。

妊娠とわかり驚くのは本人よりお母様の方が多いですね。でもそういうときって、みなさんしっかりしているんですよ。「なんてバカなことをしたんだ」と叱るのではなく、娘のことを受け止め、娘の将来や学業を続けるための最善の策を考えた結果、「養子に託したい。赤ちゃんをお願いします」とおっしゃいます。

ただ、最初の面接は親子一緒ですが、2回目からは生母さんとお母様は別の担当者が話を聞くようにしています。生母さんは生母さんなりの思いがありますから。本当はこうしたいとか、実はこうなんだとか。親には言えないことをポロポロと話し始めるんです。私たちは、そんな生母さんの思いに寄り添うことを何よりも大切に、特別養子縁組の支援をしています。

子どもの名前も生母さんが決めています。みんな最初は「えー」というけれど、産んだ後に「名前はなんて決めたの?」と聞くと、すぐに答えられるんですよ。名前の由来もきちんと考えていて。長い妊娠期間と陣痛を経験して出産するわけですから、確実に母性が芽生えているんですね。赤ちゃんを大切に思うからこそ「本当に養子縁組に託していいのか」と何度も自問しながら、最終的には自分が育てるより信頼できる相手に託した方がいいという強い思いでお別れをしているのだと思います。

子どもには、家庭で育つ権利がある

子どもを迎えたいと相談に来る人のほとんどは、不妊治療をしていたり、先天的に子どもが産めなかったり、病気で子宮を摘出していたりと、子どもを授かることがかなわなかった人たちです。私たちは、埼玉県に本部がある「あんしん母と子の産婦人科連絡協議会」の連携病院なので、登録にはまず児童相談所の里親研修を受け、「なぜ子どもがほしいのか」「どう育てたいのか」「自分はどう育てられたか」といったことを記した書面を本部に送ってもらいます。その後、私たちとの面接と本部での面接を経て、大丈夫と判断されたら登録が完了します。

子どもを授からなかった人の思いも切実です。その人たちの思いに寄り添うことも私たちの役目です。なかには「子どもを育ててみたいから」という方もいますが、「お金もあるし、体力もあるから」というだけではダメなんですね。子どもには家庭で育つ権利があり、そのための養子縁組なので、一つの人格を育てるとはどういうことか何回も話をして、養子セミナーにも参加してもらい、きちんと理解してから登録してもらうようにしています。

必ず夫婦で面接に来てくださいとお伝えしていますが、いつもどちらかの姿しか見られなかったり、夫婦で来られても温度差が感じられたりしたら、「今日は一度家に帰って夫婦でよく考えてからまた来てください」とお伝えすることがあります。他にも、子どもを育てる住環境が整っているかどうかや、親類との関係は大きくなるにつれ重要になってくるので、両親、兄弟、親類みんなの理解があるかも面接で確認しています。

子どもを迎えた後は、定期的に育児の様子を伝えてもらったり、こちらから連絡を入れたりして、密な関係を保つようにしています。小児科もあるので、医療機関ならではの安心感はあると思います。

「真実告知」の「真実」とは何か

生母さんと子どもを迎えるご夫婦が直接会うことはありません。でも、生母さんがどんな思いで子どもを託したかはお伝えしています。それから、20歳になった子どもに向けて生母さんが書いた手紙も。その手紙をどうするかは育てる側の判断になりますが、20年後、子どもが成人して自分の考えをしっかり持てるようになったときに渡してくださいとお願いしています。

養子縁組が成立すると戸籍上も実の親子になりますが、子どもにはいつか必ず告知をする必要があります。それを一般的には「真実告知」といいます。ただ、真実を告知するといっても、何をもって真実というかということですよね。生みの親が別にいることは事実ですが、子どもが「じゃあいまの生活は真実じゃないの?」と思わないような配慮が必要だと思います。ですから、私たちは「テーリング」と呼ぶようにしています。

同じように、「望まぬ妊娠」という表現も「予期せぬ妊娠」「予想外の妊娠」というようにしています。誰にも望まれず生まれてしまったから、養子に出されたと勘違いされないために。

養子縁組をきっかけに、新しい人生を歩む

生母さんのなかには将来は看護師や助産師になりたいという人もいます。自分の悩みを聞いてくれたのが看護師や助産師で、とても尊い仕事だと思ったから看護大学を目指しているのだと。

不妊治療を経て養子を迎える決断をしたあるご夫婦は、子育てには体力が必要だからとジョギングを始めたそうです。みんな養子縁組について本気で考えて、新しい人生を歩みだした方たちです。

世間ではいまだに「養子縁組をしてまで子どもがほしいのか」という心ない声も聞かれます。私たちは養子縁組を始めて2年ほどですが、相談件数は増えています。社会や家族が養子縁組の意義を理解し、安心して子どもが育っていける成熟した社会を目指す必要があると思います。

ささき・のりこ/2017年に特別養子縁組への支援事業を立ち上げ、それぞれの立場に寄り添ったきめ細かなサポートを続けている。

医療法人明日葉会 札幌マタニティ・ウイメンズホスピタル
http://www.smwh.or.jp

SHARE

facebookにシェア
twitterにシェア