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特別養子縁組

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インタビュー

子どもたちの問題は、
私たちの社会の問題

三菱UFJリサーチ&コンサルティング
主任研究員 家子直幸さん 研究員 古賀祥子さん

総合シンクタンクとして、幅広い政策研究・提言に携わる三菱UFJリサーチ&コンサルティング。特別養子縁組家庭の実情や当事者の体験について調査するなかで、見えてきたこの取り組みの意義やまだ残る課題について、同社研究員の家子直幸さんと古賀祥子さんに聞いた。

一般家庭と比べて「遜色ない」以上の親子関係

──特別養子縁組について、御社でどのような調査を行ったのか教えてください。

家子 当社では以前から、女性の働く環境や子育て、社会的養護をテーマとした調査を行うことがありましたが、特別養子縁組の問題にかかわったのは、2016年に日本財団様「ハッピーゆりかごプロジェクト」の調査委託を受けたのが最初です。

調査設計にあたり、まず参考となる過去の文献をずいぶん探しましたが、子どもを含む当事者を対象として、縁組成立後の暮らしまでを追った調査というのはほとんど前例がありませんでした。そこで、私たちは子どもが15歳未満の家庭と15歳以上の家庭、それぞれに対して民間あっせん機関の協力を得てアンケート票を配布し、養親と養子の双方から回答を得ました。

──調査の結果、何か注目すべき結果や傾向が見られましたか。

古賀 調査では、一般家庭と養子縁組家庭の比較もひとつの目的としました(「養子縁組家庭に関するアンケート調査結果報告書」(2016年、日本財団))。調査の時期や手法が違うので単純に比較はできませんが、そうすることで養子縁組についての理解をより深められると考えたからです。「全国学力・学習状況調査 」(文科省)や「親と子の生活意識に関する調査」(内閣府)など、対象者の大半が一般家庭やその出身者と考えられる既存の調査結果と比較したところ、興味深い知見が多く得られました。

たとえば「子どもに本や新聞を読むようにすすめている」という項目を見ると、私たちが行った養子縁組家庭を対象とした調査では「あてはまる」が47.3%、「どちらかといえばあてはまる」を含めると80%を超えているのに対して、一般家庭を対象とした既存調査では「どちらかといえばあてはまる」を含めても60〜70%です。また「子どもが小さいころ、絵本の読み聞かせをした」という項目では、「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」の合計が一般家庭の約70%に対して、養子家庭は94.7%という結果が得られました。養親さんが積極的に子どもとかかわる時間を持っていることがうかがえます。

子ども本人への質問でも「自分自身に満足している」という項目で「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した子の合計が養子の場合は70.7%で、50%を切る一般家庭の子どもを大きく上回っています。「親から愛されていると思う」については、「そう思う」の割合が養子では63.6%、一般家庭の子どもでは45.5%です。こうしたことから、実親のもとで育つことが難しい子どもにとって、特別養子縁組というのは重要な選択肢になりうるのではないかと思います。

家子 調査開始前には、養子縁組家庭というのは、子どもを育てる環境として一般家庭と「遜色ない」ことが示せればいいなと考えていましたが、実際は多くの項目で一般家庭以上にポジティブな回答が得られました。これは私たちにとっても予想外で、大いに注目すべきことだと思っています。

密接な関わりが、高い自己肯定感につながる

──子どもが15歳以上の場合も傾向は同様ですか。

家子 たとえば養子家庭で育った既卒者の最終学歴を国勢調査結果と比較すると、高校卒の割合は低く、大学卒の割合が高くなっています。また社会的養護施設や里親出身者と比較しても、「専門学校、短大、大学等への進学率」の割合が高い傾向が見られました。

対象が15歳以上ですので、すでに就職や大学進学をしている人もいますが、父母との関係性については、49.0%が現在も「一緒に住んでいる」という回答でした。離れて暮らしている場合も互いに行き来をしたり連絡をとりあったりしている人が大半で、「連絡先を知らない」はわずか1.0%です。養子縁組がパーマネンシー(永続的解決)に大きく寄与していることが、こうした調査からわかります。

また、「自分自身に満足している」という項目では、「そう思う」と「どちらかといえば」の合計が一般の若者で45.8%であるのに対して、養子では65.8%ですので顕著に高いといえるでしょう。思春期のさなかにある、あるいはその時期を通り過ぎた人たちが人生をこれほど肯定的に捉えられているというのは、示唆に富む事実だと思います。

──特別養子縁組の有用性を示すデータがこれだけありながら、日本では施設養護が中心で家庭養護が広がっていないのはなぜだと思いますか。

古賀 要因はひとつではないと思いますが、特別養子縁組の取り組みが進んでいる国では、日本の児童福祉法や養子縁組あっせん法にあたる法律が早くから整備され、各種の基準やガイドラインが充実しているところが多いです。社会の理解や関係者の思いはもとより、制度としてしっかりできあがっているということはいえるでしょう。

家子 日本でも2016年に改正された児童福祉法で家庭養育の優先やパーマネンシーの推進が明記され、翌年には有識者により「新しい社会的養育ビジョン」が取りまとめられました。また、昨年施行された養子縁組あっせん法により民間あっせん機関の許可要件や役割が明確化され、今年1月には法制審議会が特別養子縁組制度の見直しを提言しました。まだ途上かもしれませんが、社会的養護が必要な子どもたちを取り巻く状況は、日本でも確実に良い方向に向かっていると期待しています。

私たち一人ひとりが、この問題の当事者

──特別養子縁組や子どもの社会的養護の現状について、見えてきた課題や問題点はありますか。

家子 先ほど紹介した15歳以上が対象の調査で、養子であることで嫌な思いをしたことが「あった」「とてもあった」と回答した人の合計が25%を超えています。もちろんそんな人が一人もいないことが理想ですので、社会の支援はまだ必要だと痛感すると同時に、なかなか声を上げづらい当事者のためにも、こうした調査を多くの方に知ってもらいたいと思いました。

古賀 調査に携わるなかで私が感じたのは、里親や特別養子縁組で育った子どもたちが特別視されない世の中になってほしいなということです。彼らをことさら「かわいそう」と思うことさえも、きっと必要ないんだと個人的には思います。

法制審議会の提言を受け、これまで原則6歳未満とされてきた特別養子縁組の対象を、15歳未満に引き上げることが検討されています。それが実現した場合には、誰もが自我の確立に悩む思春期に、新しい家族との生活を始める子どもが増えるかもしれません。学校の同級生なども含め、周囲の人みんなが彼らの生育環境にとらわれず、ただその子自身とまっすぐに向き合うことが、ますます重要になっていくのではないでしょうか。

家子 どんな経緯でどんな環境で育ってきた子どもであれ、その子たちが大人になって暮らすのは、私たちと同じ社会の中です。だとするなら、彼らの問題は間違いなく私たち自身の問題でもあります。

養親になるということももちろん、そうした活動に対して応援の声をあげるとか寄付をするという関わり方もありますし、ただ理解し見守るというだけでも大切なことです。子どもたちの問題に対しては、私たち一人ひとりが「当事者」であるということを、こうした調査を通じて考えていただけたらと思います。

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