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特別養子縁組

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インタビュー

養子縁組は、
ゴールではなくスタート

日本財団 公益事業本部
国内事業開発チーム 新田歌奈子さん

多くの公益活動を展開する日本財団が、特に力を入れる取り組みのひとつに「ハッピーゆりかごプロジェクト」がある。毎年4月4日「養子の日」に合わせたイベントなどを通じて特別養子縁組制度の理解と普及促進に努める取り組みで、今年は初の試みとなる“縁組当事者の声を集めたリーフレット”を作成した。プロジェクトを担当する同財団の新田歌奈子さんに、リーフレット制作の意図や、そこから見えてきた問題点について聞いた。

養子と養親、そのリアルな声が伝えるもの

──「日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト」のめざすものと、現状について教えてください。

私たち日本財団は、「みんなが、みんなを支える社会」を合言葉に、国内外の公益事業団体に対して助成を行っています。一方で、自分たちでも主体的に事業を行う自主事業にも取り組んでいます。活動領域としては、子ども・障害者・高齢者・災害復興という主に四つの柱があり、「日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト」は、そのうち子ども領域の大きな部分を占める重要な取り組みです。

今から5年ほど前、高橋恵里子チームリーダーの発案から始まった「日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト」は、さまざまな事情で生みの親と暮らすことが難しい子どもに温かい家庭を与えるため、特別養子縁組や里親制度の普及啓発、制度を支える人材の育成、調査研究、政策提言などを行っています。スタートした当初は、特別養子縁組という制度そのものが世の中に知られていない、行政もあまり積極的には推進していないという状況でした。しかし今年の「養子の日」イベントは告知してすぐに満席になるなど、注目の高まりを感じます。

──制度への理解を促進するために、新たな冊子を制作したそうですね。

2016年に私たちは、4つの養子縁組団体の他、里親会や当事者団体などにご協力いただき、特別養子縁組の当事者である養親さんや、すでに成人した人を含む養子さんを対象とした大きなアンケート調査を実施しました。その結果をもとに花園大学の和田一郎先生に分析をお願いしました。調査結果と分析結果を元に、養親向けに作成したのが『養子縁組をした762人のこえ』という冊子です。

内容を少しご紹介すると、養子縁組で子どもを育てて「よかった」または「とてもよかった」という養親さんは95%以上、養父母に育てられたことが「よかった」「とてもよかった」という養子さんは90%以上にのぼっています。また、自分の「幸福度」を10点満点で評価してもらったところ、養子縁組家庭の子どもは平均7.6点で、一般家庭の子の6.41点を上回っています。親と子双方が、養子縁組という関係を大変ポジティブにとらえていることがわかります。

一方で、養子であるという理由で嫌な思いをしたことが「あった」「とてもあった」という人は26%(4人に一人)と、決して少なくはありません。もう少し学校や幼稚園などの理解があれば良かった、という養親さんの意見もありました。

真実告知と思春期、当事者はどう向き合ったか

──何か新たな気付きや発見はありましたか。

この冊子では、特にふたつのテーマについて当事者の声を詳しく紹介しています。それが「真実告知」と「思春期」です。そこにフォーカスした理由は、そのふたつの問題への対処で養親さんが悩みを抱えることが多いからです。

ひとつ注目していただきたいデータがあります。それは、真実告知をした時の年齢が若ければ若いほど、子どもが自分の境遇に幸せを感じ、親子関係もうまくいっている割合が高いということです。これははっきりとした傾向が現れています。特に印象的だったのが、自分はウソをついてはいけないといわれて育ったのに、養親が真実を告知してくれたのは18歳の時だった。じゃあ養親はずっとウソをついていたんじゃないか、という養子さんの言葉です。

ただし、あっせん機関の方もよくおっしゃるように、どんなことでも洗いざらい伝えるのが必ずしも良いわけではないようです。それぞれの年齢の子どもが受け止められる「ストーリー」として伝えることが大切なのだと思います。

──子どもの成長段階では、やはりさまざまな問題が現れてくるようですね。

ある程度の年齢になると、生みの親のことを知りたいと感じる子どもは少なくないものの、それを養親さんにどう伝えるべきかわからない、といった悩みもあるようです。

養親さんとしては複雑な気持ちかもしれませんが、子どもが自分のルーツを知る権利は、やはり尊重されるべきだと思います。この冊子のなかには、成人した養子さんのこんな言葉もあります。「生みの親のことを知りたいと言った時、悲しそうな顔をしないでほしい。それは自分を知りたいという意味なんだから」と。養子縁組をした子どもたちの多くは生みの親に対する感謝を口にしますが、素直にそれをいえるのは、いまが充実しているからではないでしょうか。幸せな人生を送るチャンスを自分にくれたことへの感謝であって、それは養親さんへの感謝とほぼイコールだと思います。

また思春期については、その時期を過ぎた人の多くが「とても苦しかった」「いちばん大変だった」と述べていますが、一方で「養子だから大変なんだと思っていたが、後になってみれば、多かれ少なかれどこの家庭にもある問題だった気がする」という声もあります。

真実告知や思春期の問題への対処について、これが絶対の正解ということはありませんし、私たちがそれを提示できるとも思っていません。ただこうして同じような悩みを抱えた人の声を聞くことで、何かヒントを見つけたり、気持ちが楽になったりすることはあるでしょう。この冊子をそのように役立てていただければと思います。

本当に必要な、縁組成立後の相談支援体制

──特別養子縁組制度について、見えてきた問題点はありますか。

この冊子の制作を通じて私が感じたのは、縁組成立後の当事者に対する継続的な相談支援体制の不足です。特に児童相談所の場合はどこもマンパワーが不足しているので仕方ない面もあると思いますが、縁組をしたあとは一般家庭と同じだからというので、それ以上の支援はしないことも多いようです。

しかし養子縁組は決してゴールではなく、親子関係のスタートですので、当事者が支援や相談相手を必要とする場面は、その後も何度もあるはずです。イギリスでは、ポストアダプション(縁組成立後)の支援に特化した活動をしている団体もありますし、日本でもそうした仕組みが必要ではないでしょうか。私たちの3月のイベントでは、養親さんや養子さんが顔を合わせて対話するカフェを企画したところ、想定よりはるかに多くの参加希望者が集まりました。当事者が率直に思いを語り合える場があるだけでも、状況は変わっていくかもしれません。

個人的に、今後は「子どもアドボケイト」のための人材育成や制度整備を支援する活動に取り組んでみたい気持ちもありますし、ポストアダプション支援のために私たちができることもまだあると思っています。特定のあっせん機関の「OB会」のような組織ではなく、当事者であればいつでも参加できる交流の場も、私たちのような第三者だからこそつくれるということがあるかもしれません。子どもたち、養親さん、実親さん、みんなの幸せのために日本財団として取り組みたいことは、まだまだあります。

※子どもの権利やニーズを、本人に代わって表明する人。

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