いいモノを作るのは、意思の力だと思う。クルマでいい例を探した時、思い浮かぶのが中部イタリアで誕生したメーカーのランボルギーニだ。
機械づくりに長(た)けていた創業者が、最高のスポーツカーを作ろうと決心して、第一号車を世に送り出したのは1963年のことだ。舞台は、欧州の自動車メーカー各社が新車を発表するトリノ・ショーの自動車ショーである。
創業者のフェルッチオ・ランボルギーニは、「聞いたこともないメーカーだなあ」といぶかしがるジャーナリストたちを隣の席に乗せると、自ら運転してジュネーブ周辺のカントリーロードを疾走し、彼らの度肝を抜いたそうだ。いまの言葉でいうと“スタートアップ”なのだが、こと自動車界では、ベンチャー的に起業して、現在に至る大きな成功を収めている例は極めてまれだ。
ランボルギーニの自慢は、ユーザーの平均年齢が30代であることだと聞いた。「競合他社よりはるかにユーザーが若いことは大きなメリットととらえています」。かつて、同社のステファノ・ドメニカリCEOは、私にそう語ってくれた。
若いユーザーにランボルギーニのクルマが好まれている理由はいろいろ考えられるが、ブランドのベストセラー「ウラカン」シリーズを見ると、ロジカルなボディーデザインの貢献度も大きいように思う。
ロジカルな、と表現したのは、機能とエモーションが見事に調和しているからだ。ウラカンは、空力など走りのために重要な機能を追求しつつ、ボディーラインや面の作りが、エモーショナルなようでいて、破綻なくきれいにまとまり、全体を作りあげているように感じられる。
大きなエアダムの開口部と、LEDライトを使った独自のデザインのヘッドランプは、シンプルな面と線で構成されているように見えるが、見飽きない。うまいデザインだ。
2019年春に日本でも発売が始まった「ウラカンEVO」は、そのなかでも注目のモデルだ。「ウラカン・クーペ」のマイナーチェンジ版だが、進歩は著しい。シリーズの頂点に位置する「ウラカン・ペルフォルマンテ」と同じ640馬力(470kW)の5204ccV型8気筒エンジンをミドシップし、フルタイム4WDシステムを組み合わせている。
ペルフォルマンテもEVOもサーキットがよく似合うクルマだが、両者の違いは、EVOはより操縦しやすさを重視している点と言えるだろう。
ウラカンEVOは、「LDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)」というシステムを新たに搭載している。走行中の車両の状態をコンピューターが常時チェック。ドライバーはこうするだろうと20ミリ秒前に予測し、車両制御に“先手”を打っていく技術だ。
さらに、走りに合わせて後輪に前輪と同位相の舵角を与える4輪操舵システムも採用している。高速では仮想のホイールベースを延ばして安定させ、低速では逆位相として取り回しを良くする仕組みだ。
より多くのひとが、大パワーのミドシップスポーツカーであるウラカンの走りを堪能できる仕立てになったことが、ウラカンEVOのエボ(進化形)たる所以(ゆえん)かもしれない。
ランボルギーニは、エッジの効いたプロダクトを常に提供してくれている。最近の好例の一つは、ウルトラスーパーといったぐあいに“超”をいくつもつけたくなるスーパー高性能の「ウルス」だ。かつて欧州でお披露目された場所がサーキットだったという話もうなずける、SUVのかたちをしたスポーツカーである。
現在は3996ccV型8気筒エンジンにフルタイム4WDシステムを組み合わせており、ドライブモードセレクターにはなんと「CORSA(レース)」モードまで設けられている。
何度か試乗させてもらったが、矢のように疾走する加速性能と、路面に張り付くようにカーブを曲がる操縦安定性に、ジュネーブを疾走した創業者の魂が息づいていると感じた。
特にアイスランドで試乗したときは、積雪路や、摩擦係数の低いブラックサンド(細かい玄武岩)ビーチなどでの、安心感の高い操縦性に感心した。
ウルスは、要するにオールマイティな1台だ。スタイリングも、クーペ的なシルエットの美しさは他に類がなく、ハニカムパターンを応用した細部までの徹底的なこだわりは、いいもの感にあふれている。
ボディーの大きさに(全長5.1メートル、全幅2.0メートル)にやや尻込みするひともいるかもしれない。しかし、さきに触れたように、ステアリングホイールの入力への反応のすばらしさをはじめとしたスポーツカーに引けをとらない操縦性を持っているので、街中の低速域でも、実はとても扱いやすいのだ。
昨今は、あらゆるディテールにいたるまで、自分好みの仕様にしてくれるサービス(ランボルギーニ・カーコンフィギュレーター:Lamborghini car configurator)が始まっていて、これは楽しい。11月には日本語版もオープンした。
ラグジュアリーな仕様のレザーやカラーを選ぶことも出来るし、人工スエード張りのシートやステアリングホイールにすれば、レースカー的なパフォーマンスを味わうのに最適だ。
量産車ではあるけれど、クラフトマンシップ感覚のオーダーが可能になっている。スポーツカーはその俊敏な動きゆえ“着る”と表現されることがあるように、ランボルギーニの製品は、SUVでもスポーツクーペでも、オーダーメイドがぴったり合うのだ。
[文・小川フミオ]








