2019 09. 30

INTERVIEW

世界最高のゲーム「麻雀」


その魅力を広く伝えたい

Mリーグ チェアマン
藤田晋さん

2018年に始まったプロ麻雀リーグ「Mリーグ」。その幕開けは、麻雀のイメージを鮮やかに変えた。136枚の牌を巡るトップ選手の真剣勝負は、次々に名場面を生み、初年度から多くのファンを獲得。チームや選手が増え、さらに充実した2シーズン目が始まる。新しい舞台に込める思いを、Mリーグチェアマンの藤田晋さんに聞いた。

「ギャンブル」と決別し


まっさらな舞台をつくる

——Mリーグは2018年にスタートし、多くの方に麻雀の新しい時代の到来を感じさせました。改めて、チェアマンとして、Mリーグに込めた思いを教えてください。

麻雀は「世界で一番よくできたゲーム」だと思っています。実際、プレー人口も多いですし、街中には多くの麻雀店があり、たくさんの方が楽しんでいます。

しかしこれまで、プロが仕事として成り立ちにくい競技でもありました。国内の麻雀プロ選手は約2000人いるとされていますが、競技だけで生活できる方はわずかでした。Mリーグでは、各チームが所属選手に年俸を保証します。これまでの環境をがらっと変えて、麻雀の競技をプロスポーツとして確立させる場を作りたいと考えました。

麻雀には長らく、賭け事のイメージがあり、スポンサーがつきにくい要因になっていました。そこでMリーグでは「ノーギャンブル宣言」を掲げ、関係者に一切の賭博行為を禁じました。選手がギャンブルに関与したら、厳重な処分を課す決まりです。また対局では、カラフルなユニフォームを着てプレーし、対局場所も専用スタジオ「Mリーグスタジオ」を設け、費用をかけて豪華なセットにしました。

広告やマーケティングの世界では、企業やサービスに対するユーザーの認知や意識を変えることを「パーセプションチェンジ」といいます。Mリーグは、麻雀のパーセプションチェンジ、全く違う新しい競技として再定義していく取り組みでもあります。

——Mリーグの1年目を振り返って、周囲からの反響はいかがでしたか。

多くの方に驚かれたのは、1年目から、テレビ局や広告会社を含む大企業が参戦したことですね。また、JリーグやBリーグにかかわってこられた川淵三郎さんがMリーグの最高顧問に就かれたことや、大和証券株式会社や朝日新聞社が冠スポンサーについたこともサプライズでした。

おかげで、各チームの試合は注目を浴び、多くのファンを獲得しました。パブリックビューイングの会場は毎回にぎわい、AbemaTVで放送した対局生中継も屈指の人気コンテンツに育つなど、想像以上の反響を呼びました。スポーツ観戦と同じ興奮をお届けすることができ、対局がない日に「Mリーグロス」という言葉が生まれるほどになりました。

麻雀のポテンシャルの大きさは感じていましたが、この盛り上がりは予想以上で、私自身も熱中しました。仕事で夜遅くなる際も、SNSなどで結果を見ないようにして、帰宅後に対局映像を見直しています。スポーツの観戦と同じ感覚ですね。

各チームのファンミーティングなどのイベントも盛況で、Mリーガー自身も驚いているようですね。選手の皆さんも、改めて「特別な舞台ができた」と実感していると思います。

——2年目のMリーグは、昨シーズンから1チーム増え、8チーム29名のトッププロ選手が栄冠を競います。今シーズンの抱負や目標を教えてください。

2年目のスローガンは「熱狂を外に伝える」です。1年目の盛り上がりには手応えを感じており、2年目はこれまで以上に麻雀にあまり関心のなかった方にも、魅力をお伝えしていきたいと思っています。

今季は初の取り組みとなるテレビ朝日のレギュラー番組も始まりますし(2019年10月6日から毎週日曜24:59~25:30、AbemaTVと「熱闘!Mリーグ」を地上波同時放送)、幅広い方が楽しんでくださることを期待しています。

また今季から、8チームそれぞれが、必ず1名以上は女性選手を入れるようにルールを改めました。麻雀は本質的に男女差がないゲームですが、これまでの麻雀界は男性選手を主体に発展してきており、プロも男性の方が多い。もっと女性が活躍する場を増やして選手を育てたい、という思いがあります。今季は4名の選手のうち3名が女性のチーム(セガサミーフェニックス)もできて、活躍を楽しみにしています。

運と実力の絶妙なバランス


人生の学びが詰まった競技

——藤田さんにとって、麻雀の魅力はどのような面にあるのでしょうか?

一つは、運と実力のバランスが、実社会と近いことですね。麻雀は、運に左右されるゲームです。「競技として不平等ではないか」と言う方もいるかもしれません。しかし、世の中のほとんどのことは、運に左右されることもありますよね。

一方で、運だけだと、短期的にしか勝てないゲームでもあります。長い目で見ると、やはりきちんとした努力をした方が結果を残し、実力通りの成績になります。このような特徴はビジネスにも通じる面があり、私自身も、麻雀で得た経験が仕事に役だったこともあれば、経営者として培ったことを麻雀に活かしているときもあります。

人生の学びは麻雀の中にある——ともいえます。麻雀では、いかに正しいと思う打ち方をしても、理不尽に負けることもあります。文句を言っても負けは負けで、ぐっと耐えるしかありません。この点は、子どもの教育にも役立つと思っています。「平等ではない状態をもとに、運と実力で勝負する」という大切なことを学べる教材は、他にはあまりありません。私自身も小さいころから麻雀に親しみ、多くのことを学んできました。

もっとも今のところは、子どもが囲碁や将棋をすると親は喜ぶけれど、麻雀だと「留年するんじゃないか?」と心配されるかもしれません(笑い)。そういう認識も、徐々に変えていきたいですね。最近、Mリーガーが小学生に基本から麻雀を教える企画も始めており、次世代の育成にも力を入れるつもりです。

——Mリーグや麻雀の将来像を、どのように描かれていますか。

麻雀が頭脳スポーツとして親しまれ、もっと普及して欲しいですね。高齢化社会のなかで、手と頭を使って他人とコミュニケーションをする麻雀は、認知症予防の観点からも注目されています。

また将来は、麻雀をオリンピックの正式種目にしようという目標を掲げています。Mリーグの発展を通じて、五輪の場での対局をぜひ実現したいと考えています。ゴルフの「プロアマ戦」のように、幅広い層の方々とMリーガーが交流する大会なども企画して、機運を高めていきたいですね。

PROFILE

ふじた・すすむ/Mリーグチェアマン、サイバーエージェント代表取締役。1973年、福井県生まれ。青山学院大卒業後、1998年にサイバーエージェントを設立。2000年、東証マザーズに当時最年少(26歳)で上場。「21世紀を代表する会社を創る」をモットーに経営を続けている。
麻雀が特技で、学生時代から熱中。2014年には、全国のプロ・アマチュア約2700名が参加した「麻雀最強戦」で、一流プロらに競り勝ち日本一になった。2018年、Mリーグを発足し、初代チェアマンに就任。『仕事が麻雀で麻雀が仕事』(竹書房)など著書多数。

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