2020 03. 16

CROSS TALK

視聴者に見やすく、選手に


とってはパフォーマンスを


発揮しやすい環境を整える

張敏賢さん
× 梶本琢程さん

麻雀のオリンピック正式種目化を目指す麻雀プロリーグ「Mリーグ」では「日本プロ麻雀連盟」「最高位戦日本プロ麻雀協会」「麻将連合μ」「日本プロ麻雀協会」「RMU」の5団体(設立年度順)に所属している選手の中からドラフト指名を行っている。

これまでは各プロ団体の公式戦においては、立会人はいても「審判制度」が導入されたことは無かった。そこで今回は「審判制度」が初めて導入されたMリーグで、審判という立場から試合を支えているおふたりにインタビュー。

元プロ雀士という立場で、専門的かつフラットな視点で、Mリーグルールを制定した張敏賢さんと、Mリーグルールを遂行する審判として、試合を見守る梶本琢程さんに話を聞いた。

——Mリーグルールを制定する際に最も意識されたことは?

 Mリーグルールのベースは、麻雀愛好家のマジョリティとなっている「全自動卓・自動配牌システム」と「赤牌」を採用しています。審判制度の導入にあたっては、各種スポーツのルールブックを参考とし、サッカーJリーグ同様にイエローカードとレッドカードを導入しました。そしてスムーズな試合進行を促すため「打牌スピード」に関して、視聴者が見やすく感じられるためのガイドラインを作ることにしました。

もともとタイトル戦やリーグ戦の決勝等は、現在のように視聴者が映像で見られる環境にはなく、長考ひとつとっても各プロ団体によって捉え方が異なり、対局進行スピードや査定に関しても様々な解釈があったからです。ただカード導入は、厳しく取り締まることが目的なのではなく、よほど守ってくれない時にはカードが出されることもありますという、あくまでも予防であり、防止策の意味合いです。だから打牌スピードが遅すぎることが度重なった場合は、カードを提示する前に、口頭で警告を出すこともあります。現ルールが絶対というわけではないので、試合を積み重ねていくうちに審判として気づいたことや、選手からの意見等も含め、ルール改定も視野に入れていくつもりです。

◎主なイエローカードの対象行為
・発声行為を黙って行ったと審判が判断した場合。
・局面と関係ない場面での強打・長考が度重なる場合。
・時間が掛かる自摸(ツモ)の動作が度重なる場合。
・過度なため息やぼやきなど、相手を惑わす可能性がある言動が度重なる場合。
・2枚以上の見せ牌をした場合(山・手牌共通)。

※Mリーグにおける罰則規定には、アガリ放棄・チョンボ・イエローカード・レッドカードの4種が規定されている。イエローカードは当日のみ累積し、1日2枚でレッドカードが提示される。レッドカードが提示された者は、チョンボと同様の罰則を受ける(個人トータルポイントから20ポイントを減算)。

——麻雀の審判とは、具体的にどのようなことをされるのでしょうか?

 「場決め」から始まります。場決めとは、対局時の座順となる東家、南家、西家、北家といった座る位置を決めることです。そして試合用の2セットの牌を審判が混ぜた上で、卓にセットしています。

梶本 試合は審判ルームで見ています。審判ルームには実況解説席同様に、4人の対局者の手牌と卓全体を真上から撮影する天井カメラの5画面があります。親が第一ツモを取ったかどうか、ツモり間違いがないか、アガリが正しいかどうか、点数のやりとりがあっているかどうかを見ています。審判を始めた当初は「何か起こるんじゃないか」とずっと身構えていたので、試合内容や展開を見る余裕はなかったですね。

——Mリーグにおける適切な打牌スピード基準とは、どういうものなのでしょうか?

梶本 アガリが発生せず、流局となれば基本的には70打。目安としては流局までいったら1局7分を適正スピードとしています。1局8分は遅いほうで、10分超えたら遅すぎます。全29選手の打牌スピードを計測していますが、基本的にリーチをかけた後、リーチ者は牌を持ってきてから切るまでに約4秒かかります。対局者のペースが4選手全員一定であれば、流局までにかかる時間は約4分半となります。ただ実際には視聴者にとっても、これは悩むよねという場面も出て来るものです。でも考えているというより悩んでいるだけといったようなことが何度も続いたり、毎回毎回ツモってくるたびに過度なリアクションを行って時間をかけてしまうのは、視聴者にとってストレスになっていまいます。選手の皆さんには考える時間を確保するためにも、その他の時間をできる限り短くするようお願いしています。

——審判として心がけていることは?

 視聴者に見やすく、選手にとっては安心してパフォーマンスが発揮出来るよう、環境を整えることを心がけています。そのためにもいきなり起こったことに即反応しなければなりません。そして即座に裁定しないと、視聴者に不安を与えてしまうので、そこには細心の注意を払っています。その礎を作るために、プロ経験者であり、どの団体にも所属していないフラットな立場として取り組んでいます。

梶本 ゴルフのルールブックには、ボールを鳥がくわえていったらどうするのかといったところまで細かく規定されています。麻雀の場合も想定外の事例が起きた時の対処法は、判例のようにストックしていく必要性を感じています。ゲーム自体に関するルールとは別に、想定外の対処法も選手と共有していくうちに、リーグ全体が磨かれていくものだと思っています。

PROFILE

ちょう・としまさ/1973年、東京都生まれ。O型。山羊座。法政大学経営学部卒。26歳の時に最高位戦日本プロ麻雀協会にプロ入りし、第31期・第32期最高位、第19期最強位を獲得。15年間のプロ生活にピリオドを打った2014年、株式会社RTDを立ち上げ、麻雀発展のために麻雀番組やイベントを仕掛けている。好きな役はホンイツ。


かじもと・たくのり/1971年、鳥取県生まれ。A型。山羊座。神戸大学文学部卒。麻雀評論家。21歳の時、101競技連盟でプロデビュー。2004年に最高位戦日本プロ麻雀協会に移籍後、日本プロ麻雀協会立ち上げに参画。現在は都内で麻雀店「麻雀ロン」、大阪「ブッキングアオバ」を経営しながら「モンド麻雀プロリーグ」の解説や「近代麻雀」への原稿執筆など幅広く活躍している。好きな役は七対子。 

(文・福山純生)

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