ネクストリボン がんとの共生社会を目指して

社員とその家族の健康を守ることが世界中の患者さんへの健康支援につながると信じて
社員は“仲間”。がんに罹患しても
寄り添うことで“働く”を応援し続ける
(PR)大鵬薬品工業

がん領域に取り組む製薬会社がまだ少なかった半世紀以上前から抗がん剤の研究開発を手がけている大鵬薬品は、がんに罹患(りかん)した社員の就労支援にも長年、力を入れている。その支援の成果と共に、実際にがんにかかった社員に対してどんな思いでどのようなサポートを行っているのか、医療職(看護師、保健師)スタッフを内包する人事部健康支援課のメンバーにお聞きした。

前列左から人事部 健康支援課 保健師 久我佳奈氏、
同 課長 末成美奈子氏、同 保健師 奥田淳美氏、
後列左から同 看護師 鈴木碧氏、
人事部 執行役員部長 白石和義氏

人は財産。がんになっても働き続けてもらいたい

大鵬薬品は設立当初から社員を“人財”として捉え、社員一人一人が活き活きと働くことができるようさまざまな取り組みを行っている。その一つが、がんなどの疾患に罹患した社員の就労支援である。罹患しても会社を辞めることなく、安心して働き続けられる職場環境づくりに力を注いでいる。

「がんだけでなく、病気になったからといって私たちは優秀な人財を諦めません。大切な仲間だからです。何より、治療しながらでも安心して働き続けられる職場や、さまざまな背景を持った人が働きやすい職場というのは、優れた人財を保持することができ、企業の競争力アップにもつながります。また、罹患しても働き続けている人がいることは、周囲の社員への刺激となり、意欲向上にも結びついていきます。その結果、生産性も上がるのではないかと私たちは期待しています」。人事部 執行役員部長 白石和義氏は、これこそが大鵬薬品の社員への思いだと語る。

「治療しながら社員が活躍し続けることは、会社にとって非常に有益なことです」(白石氏)

がんに罹患した社員の支援は家族と協力し合って行う

では、具体的にどのような支援を行っているのか。健康支援課では病気を患った社員に向けて、その治療と仕事の両立について支援している。課長の末成美奈子氏は「まずは本人の希望を聞くことを第一に考えています」と語る。

「健康支援課は保健師や看護師といった医療職チームと、キャリアコンサルタントや両立支援コーディネーターなどの資格を持つ相談員チームによって構成されています。がんなどになった社員に対し、医療職チームのメンバーが窓口となって話を聞きます。その後、本人の同意のもと両立支援コーディネーターなどと連携し、その人の状況や希望に合わせたサポートを行います」(末成氏)。

「私たち人事部の社員は、医薬品を通じて直接社会貢献をしているわけではありませんが、社員が活き活きと働けるよう支援することで、より良い社会づくりに間接的に貢献していると思っています」(末成氏)

看護師の鈴木碧氏は入社以来約10年、がんに罹患したさまざまなケースの社員と向き合ってきた。担当した社員の多くは病気を克服し、今なお大鵬薬品の一員として活躍している。「末成が話したように、私たち医療職はまずその人自身がどうしたいのか、必ず気持ちを聞きます。場合によっては既存の制度では対応できないことを希望されることもあります。その際は、今ある制度をどう駆使したらその人にとってベストな状態を実現する援助となるのか、健康支援課が一丸となって模索します」と鈴木氏。

制度はがんに罹患した社員のためだけにつくられているわけではない。だからこそ臨機応変に融通を利かせ、いかに今ある制度をその人の希望や状況に合わせて、ベストな状態で活用できるかがポイント。そんな柔軟な対応をした一例を鈴木氏が話してくれた。

「数年前、放射線治療のため、短時間の休みを多く必要としている社員がいました。現在は時間単位有給制度がありますが、当時は半日有休しかなく、取得回数にも制限がありました。そこで治療計画に基づき、その人については上限回数を撤廃して対応しました。さらに、別の社員のケースでは、当時は週1回しかリモートワークができない制度でしたが、その人が抗がん剤治療を受けた後に免疫力が低下することを考慮し、人事部内で話し合って治療後から連続してリモートワークを行えるようにしてもらいました。また、場所についても自宅以外での実施は認められていませんでしたが、実家での実施を認めてもらうなど、本人の希望を聞きながら会社としてできることをしてきました」(鈴木氏)。

ただ、いくら本人の希望とはいえ、仕事をすることで体調を悪化させてしまうことがあってはならないと鈴木氏は日々気をつけているという。「仕事をしてもらうことが本当に良いことなのだろうかという葛藤は常にあります。それもあって、その人自身の気持ちの変化も敏感に察知できるよう、こまめに連絡を取るようにしています」(鈴木氏)。

「看護師や保健師は、患者である社員に一番寄り添える存在。だから、社員の思いを会社に伝え、会社の考えを伝えるのも私たちの役目だと考えています」(鈴木氏)

保健師の奥田淳美氏は、がんに罹患し終末期を迎えた社員の支援に携わった。「コロナ禍ということもあり、お亡くなりになるまで直接お会いすることができず、オンラインや電話で意思疎通を図りました。上司もご家族もどうしていいのか分からないという中で、私がその調整役として関わらせていただきました」と奥田氏。

定年間近の社員で、体調もかなり悪くなっていたのだが、本人に「会社とつながっていたい」という強い思いがあり、人事部内や主治医とも連携して、勤務時間を限定した契約社員として働いてもらったという。当時はまだ入社して間もない奥田氏だったが、その都度、健康支援課のメンバーに相談できたことでその社員と向き合い続けることができたそうだ。

「さらに体調が悪化した以降は、ご家族とのやりとりがメインになりました。残念ながらお亡くなりになられましたが、ご家族からは『会社の皆様のおかげです。心からありがとうございます』と、感謝の言葉をいただきました。多少は本人とご家族の希望に寄り添う支援ができたのではないかと思っています。一方で、本人の思いとご家族の意向が必ずしも同じというわけではないということも分かり、そんな中でもしっかりとご家族からお話をお聞きし、寄り添うことが大事だと実感しました」(奥田氏)。

役員から「杓子定規(しゃくしじょうぎ)な対応はしないように」と応援してもらったこともあり、フレキシブルな対応が実現できたという。こうしたソフト面でのケアのほか、大鵬薬品ではハード面からの援助にも力を入れている。その一例が男性用トイレへのサニタリーボックスの備えつけと、オストメイト対応トイレの設置だ。

「男性用トイレのサニタリーボックスは、ストーマ(人工肛門)をつけている社員がいるところには必要だと考え、適宜備えていました。現在は、本社ビル移転に伴い、オストメイト対応トイレを設置しています。必要な社員が現状でいるわけではありませんが、設置してあること自体が、病気になっても働けるんだという安心感につながればと思ってのことです」と語るのは末成氏。言われたからというのではなく、“相手の思いをくんで対応する”という大鵬薬品ならではの精神がこういうところにも息づいている。

本社に設置されているオストメイト対応トイレ

卒煙推進プロジェクトも終盤。今年こそ喫煙者ゼロに

大鵬薬品ではそもそもがんにならないよう、予防支援にも力を入れている。特筆すべきは、“卒煙”への取り組みだ。担当の保健師・久我佳奈氏は「これまで全社員を対象に、たばこの害に関する情報発信や、各事業所での禁煙ポスターの掲示などの啓発活動を展開してきました。11年には26%だった全社喫煙率が20年には15%まで下がりましたが、全国平均並みで穏やかな減少でした。社長の小林および役員が『がんで亡くなる社員を出さない』との強い思いから、20年に『2023年喫煙率ゼロ』を宣言したのを受けて、2023年までに社員の喫煙率ゼロの達成を目標に、喫煙社員の卒煙支援と、卒煙に関する社内ルールの強化・徹底を図ってきました」と語る。

就業中および休憩時間も禁煙とし、役職社員登用などの際の考慮要素の一つにすることや、新規採用において喫煙者は採用しないといったメッセージが打ち出された一方、卒煙希望者全員への費用補助といった全面的に卒煙を支援するメッセージも打ち出された。こうした施策が功を奏し、20年時点で15%だった喫煙率が21年には9%、22年には5%まで低下した。

「とはいえ、この卒煙推進は決して強制ではなく、あくまで自主的に卒煙していただきたいというのが私たちの考え。健康支援課ではメンバー10人で担当を割り振り、喫煙者への面談を行いました。喫煙を続ける人も気持ちが揺れ動いているようです。でも、23年にゼロという全社目標があることを頭の片隅で意識していただいているので、私たちは少し背中を押すつもりで卒煙の支援をしていければと思っています」(久我氏)。

「喫煙者ゼロにするのはこれまでとは次元の異なる難易度だ」と語るのは白石氏。「誰一人吸っていないという状況にするわけですからね。でも、喫煙はがん罹患のリスクを高めるものだけに、抗がん剤をメインに扱う企業としては喫煙者をゼロにすることは対外的にも極めて重要です。喫煙はがんの原因になるだけでなく肺機能の低下をもたらします。この施策は何より社員の健康増進が第一の目的であり、社長の小林も『絶対に喫煙者をゼロにしたい』と強い意志を示しています。私たちも決して諦めずに目標を達成すべく推進し続けていきます」。そして白石氏は「健康支援課のメンバーが丁寧に対応してくれているのでその思いは届くものと信じている」と言葉を添えた。

「喫煙者の中には『自分の意思でここまで喫煙してきたのだから、卒煙のタイミングも自分で決める』と言い、その後、卒煙されたという人も少なくありません」(久我氏)

社員と家族に向けた「健康経営」パンフレットを作成

さらに、健康支援課では22年に「健康経営」というパンフレットを作成した。「社員一人一人が心身共に健康で活き活きと自由闊達(かったつ)に働ける環境を実現するために、健康支援課で実施している健康支援に向けた施策がいくつかあります。ただ、それらはすべて点でしか社員の皆さんに伝わっていませんでした。そこで社員だけでなく、そのご家族にも全体像をつかんでいただけるよう一つにまとめたものを制作しました」と語るのは担当した奥田氏。

「冒頭には社長のメッセージを載せ、大鵬薬品にとっての『健康経営』とは何か、生活習慣・運動習慣のアシストとして導入した運動習慣支援アプリの紹介、各種検診のサポート、そして治療と仕事の両立支援体制、卒煙推進の進捗(しんちょく)と禁煙効果、さらに社員とご家族のためのさまざまな健康サポートについての実施時期や内容、費用などがひと目で分かるよう一覧表にしてまとめたものなど、かなり盛りだくさんの内容をできるだけ分かりやすくコンパクトにまとめました。すべてに思いを込めて制作しています」と奥田氏。「治療と仕事の両立支援を含む健康サポートがどの時期に実施されるのかが一目瞭然で分かるのがいい!」と社員からの評判も上々。なお、こうした“健康経営”に関するパンフレットを制作している企業が少ないということもあり、外部からの注目も集まっているそうだ。

「すべての内容に思いを込めて制作した自信作です。どのような就労支援があるかをご家族にも事前に把握していただけるツールとなっています」(奥田氏)

がんと仕事の両立支援は福利厚生ではなく、経営的な視点で実施

大鵬薬品ががんに罹患した社員の就労支援になぜここまで力を入れているのか。その理由を白石氏は次のように語る。「わが社は生命関連企業です。根底には、がんを患った社員にきちんと対応していかなければ、世界中にいるがん患者さんのことも理解できるはずはないという思いがあります。また会社の経営的な視点から見て、大事なのは社員のエンゲージメントの向上です。こういう会社で働きたいと思う社員の比率を上げることで、会社全体のエンゲージメントも上がっていく。だからこそ、がんになっても働くチャンスはあるのだということを会社として示し続けることはとても重要だと考えています」。

末成氏も「一人一人が心身共にいいパフォーマンスを発揮できるようにしていくことが、会社全体の事業活動を活性化していくことになります。それによってよりよい薬剤が世界中の患者さんに届くようになれば、大鵬薬品のコミュニケーション・スローガンである『いつもを、いつまでも。』につながっていく。社員の支援だけでなく、間接的に世界の患者さんに健康支援をお届けできているという、それこそが私たちの社会貢献であり、存在意義。みんなが笑顔でいられる生活づくりをこれからも続けていきたいです」と話す。

医療技術の進歩によってがんは早期発見・早期治療が可能になってきており、もはや治癒できる病気という認識も広まりつつある。「そういう中でがんに罹患した社員が会社を辞めることになってしまったら、貴重な労働力の流出につながり、会社としては大きな損失になります。だから、私たちは就労支援を単なる福利厚生としてではなく、経営上非常に重要なことと認識しています」と白石氏。

今や日本人の2人に1人ががんにかかる時代。がんになっても働けるということを大鵬薬品が自社社員に示すことで、世の中にも広がっていくことを白石氏たちは願っている。