元舞台俳優のファンドマネージャーに聞く

日本の株はいま、どうなんですか?

START!編集部

まもなく2017年も終わりを迎えます。今年の干支である”酉年”の株式市場は、昔から「騒ぐ」といわれ大きな値動きがあるそうです。たしかに日経平均株価もTOPIX(東証株価指数)も26年ぶりにバブル崩壊後の高値を更新するなど、株価が大きく上がった1年でした。

しかし、給与が上がったり、景気がものすごくよくなったりという実感を持たない人も多いのではないのでしょうか。それはいったいなぜなのか。元舞台俳優という異色の経歴を持つ、さわかみ投信最高投資責任者(CIO)兼ファンドマネージャーの草刈貴弘さんに日本の株と投資について話を伺いました。

日本株が上がる理由とは

―――まずは「株価」というものについて教えてください。

「株価をものすごくわかりやすく分解すると、1株あたりの利益とPER(株価収益率)をかけ算したもので表すことができます。企業の業績が良くなると、1株あたりの利益も大きくなってくる。これはなんとなくイメージできると思います。多くの企業が好業績になると、株価も上がっていきます。PERは「今の株価が1株当たりの利益の何倍か」を表しています。PERが高いと株価は割高、低いと割安と一般的に言われています」

―――日本企業の業績は、なぜ良くなってきているのでしょうか。

「大きな理由として、まず円安があげられます。2008年のリーマンショック後に円高が進み、11年10月末には1ドル=75円を記録しました。日本企業は利益を確保するために、海外へ工場を移転するなどコストを徹底的に削り、ものすごい努力を重ねました。結果として今は円安になってきたので、より利益が出る構造になったわけです」

「もう一つはしっかりとした世界経済の成長があげられます。リーマンショック後に各国が利下げや金融緩和をして、マーケットにお金をジャブジャブ流しました。そのお金が不動産や株式など金融商品に流れ、価格を押し上げました。たとえばロンドンの不動産は古めのワンルームでも何千万円と、この数年で驚くほど値上がりしました。アメリカの株価もトランプ大統領の経済政策を受け、史上最高値を更新しています。このように世界経済が堅調に成長し続けているので、グローバルに活動する日本企業やその恩恵を受ける企業の業績がよくなっていると考えられます」

―――日本株が上がっている要因は他にもありますか。

「企業が『自社株買い』を進めていることがあげられます。業績が良くなると、企業に入ってくるお金が増えてきます。入ってきたお金をそのまま置いておくのではなく、配当として株主に還元する、もしくは自社株買いする、この両方を株主のためにしています。いまは多くの日本企業が自社株買いを進めており、株価を押し上げる要因になっているといえます」

―――自社株買いとは何でしょうか。

「発行している株の一部を企業が自ら買うことです。自社株買いをすれば、自由に売買できる株は減ります。買える株が少なくなるので、需要と供給の関係から価格は上がる、つまり株価が上がるというわけです。自社株買いは株価対策、株主対策でもあります」

―――なぜ従業員には還元されないのですか。

「連結の決算を見ると日本国内ですごい収益が上がっているわけでなく、収益の中心は海外という企業が多いです。経営者の視点から考えると、収益を上げている海外にどうしても投資せざるを得なくなり、経済成長の可能性が比較的低い日本国内には分配しづらいのです。それは働いている従業員への投資という意味でも同じです。なかなか賃金として分配しづらい。株主には還元するけど、実質的な賃金はあまり上がらない、これが現状です。だから株価が上がったからといって、すぐに景気がよくなったという実感が湧かないのはおかしなことではありません」

草刈 貴弘(くさかり・たかひろ)さん
さわかみ投信株式会社 取締役最高投資責任者(CIO)兼ファンドマネージャー
2008年10月さわかみ投信入社。10年1月からファンドマネージャー。13年1月からは最高投資責任者も兼務している。

個人の強みは「待てる」こと

―――株価がどんどん上がるのは、バブルではないのですか。

「前述したPERで考えてみると、いまの日本株は割高でなくバブルとは言えないと思います。日経平均株価のPERは、バブル期は60倍台でしたが、いまは15倍程度の水準です。アメリカの株価も高くなってきた、格付けの低い債券の金利も下がってきた、ヨーロッパの不動産は上がっている。ふと見たら日本はまだ割安なんじゃないか、もっと上がってもいいんじゃないかと海外の投資家が考えて、9月下旬ごろから日本株を買っています」

「一方でバブルとは言えないけれど、株価が下がらないという保障もありません。海外の投資家は収益を出すためにどんどんお金を移動させていきます。日本株もその1つの選択肢でしかありません。たとえ日本企業の収益力がもっと上がっても、投資家の興味が次に移って売られてしまえば株価は下がっていきます」

―――ファンドマネージャーはどう考えて投資をしているのですか。

「今の金融業界はすごく短期的に物事をみざるを得ない環境にあります。私みたいに長期で考えている運用者はかなり例外で、多くの企業では四半期ごとに結果を出さなければすぐにクビを切られてしまいます。そうすると、悪くなったらすぐ売る、よくなったらすぐにもっと買う、こんな感じで短期間に値が大きく動くようになっています。さらに、AIでニュースを自動に読み取り自動発注するなど、瞬時にみな同じ方向へ動く傾向も強いです。もはや人間の感覚を越えた戦いになっていると思います」

―――そんな中で個人投資家はどう考えていけばいいでしょうか。

「技術を駆使してコンマ何秒で勝負をするプロの投資家の動きに、個人投資家がついていくのは正直無理だと思います。そういう意味で長期での投資がより大事になってきています。なぜなら個人投資家の一番の強みは、「待てる」ということだからです」

―――株に投資する上で何かヒントはありますか。

「わが社では『生活者目線』と言っていますが、自分が使っている、あるいは自分が好きなサービスについて深掘りして、その強みを理解したうえで株を買うことが大事だと思います。値が上がりそうだからといって全く知らない製品やサービスの株を買っても、うまくいかないケースが多いのではないでしょうか。自分の暮らしの中で活躍する銘柄をしっかり研究して、長期で見て株式投資のリターンを享受する方が、成功する確率は高いと思います」

―――どうもありがとうございました。

草刈さんは、一つのジャンルにとどまらずに自分の興味が広がっていくところをどんどん調べていく仕事のスタイルだそうです。個別企業のこと、技術動向のこと、制度のことなど、「なんでだろう」と疑問に思ったことを次々とたどっていき、判断の材料としているとのことでした。今回紹介した株式投資への考え方や見方も含めて、個人で投資を始めようと思う方にも、既に投資を始めている方にも、参考になる話がたくさんあった取材でした。

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