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森林という持続可能な資源を
「使い」未来へ「つなぐ」ために

林野庁 林政部 企画課長 山口 靖 さん
2019.01.01
日本の人工林を国土に有効に、そして持続可能な資源として未来へつないでいくためには、積極的に国産材を使い、植えて、育てていくというサイクルが不可欠だ。国産材を使うことのよさと、森林を未来へつなぐ重要性について、林野庁林政部の山口靖企画課長に聞いた。

地震や火災にも強い進化する木造建築

日本は、国土の約3分の2を森林が占める世界でも有数の森林国です。日本の森林面積の約4割がスギ、ヒノキ、カラマツなどの人工林であり、現在、その人工林の多くが利用期を迎えています。これらの森林資源を有効に活用し、「伐(き)る、使う、植える、育てる」といった森林資源の循環利用を確立させ、SDGsの取り組みを推進していくことが、地球温暖化防止、国土保全など、森林の公益的機能の発揮や、林業・木材産業の振興を通じた地方創生の観点からも重要であると考えています。
日本では、現存する世界最古の木造建築として知られる奈良県の法隆寺のように、木材は、昔から建築材料として用いられ、なじみのある資源ですが、火災や地震などの災害に弱いというイメージも根強くあります。しかし、実際には災害等で倒壊した家屋は「木造だから」というよりも「古い建物だから」被害が広がったというケースが多いと考えられています。建築基準法の耐震基準は、過去の震災などを踏まえて見直されているため、現行の基準を満たして建てられた建物であれば、木造だから弱いということはありません。木質耐火部材なども開発され、中層程度の集合住宅などにも使われるなど木材を利用する範囲や可能性は広がっています。
このような中で昨年4月、木材産業を地場産業とする江東区で、小中一貫の区立有明西学園が開校しました。同学園は、大都市の東京で5階建ての大型木造校舎(一部非木造)として注目されており、2018年度の木材利用優良施設コンクール(主催/木材利用推進中央協議会)において、最上位賞として新設された内閣総理大臣賞を受賞しました。今後、都市部における中大規模の木造建築物の普及に弾みがつくことが期待されます。

江東区立「有明西学園」図書室と校舎内の様子/森林・林業白書イメージキャラクター「きぐりー」

素材だけでなく成分利用にも期待

木材は、湿度が高くなると湿気を吸収し、低くなると水分を放出して、室内の湿度を一定に保つ働き(調湿性)があり、断熱性にも優れているため、年間を通して屋内を快適に保ってくれます。
コンクリートと比較して衝撃を吸収しやすく、そのクッション性は衝撃を緩和する作用もあるため、転倒時にケガをしにくいことなどから子どもや高齢者が生活する施設や空間づくりにも適していると言えるでしょう。
木の香りにはストレスを和らげ、心と体をリラックスさせる働きがあると言われています。アロマなどの香りが私たち人間の気分に影響を与えることは経験的に知られていますが、近年、血圧降下など身体計測データに基づく、木の香りによるリラックス効果が明らかになってきました。木の香りや木目の風合い、温かな手ざわりに安らぎを感じるという人も多いでしょう。このような癒やしの効果に加えて、木材は、加工・製造にかかるエネルギーの負荷が鉄やコンクリートと比べて小さいため、環境意識の高いマーケットからも持続可能な資源として注目されています。
また、木材の構成成分としての利用も注目を集めています。木材の40~50%を占めるセルロースや、25~35%を占めるリグニンは、セルロースナノファイバーや改質リグニンといった、次世代高機能素材としての利用が期待されています。

改質リグニンを内外装材に用いた自動車【実車搭載試験】森林研究・整備機構森林総合研究所/産業技術総合研究所/(株)宮城化成/(株)光岡自動車

国産材を利用して日本の森を元気に

樹木の根は、土壌をつなぎとめ、落ち葉や下草は雨などによる土砂の流出を抑制します。さらに、森林の土壌はスポンジのような構造になっており、そこに蓄えられた水はゆっくりと河川へ送られます。森林は豊かな水源を確保するとともに土砂災害や洪水を防ぐ役割も果たしているのです。
木は二酸化炭素を吸収し、炭素を蓄えて成長します。成長の過程で取り込んだ二酸化炭素は木材になっても閉じ込められており、炭素固定による温暖化防止の働きは、住宅や木製品となっても続くのです。
森林を健全に保つには、間伐などの手入れが必要です。そうした活動を支える資金は木を使うことで得られています。国産材は外国の木材よりも高価だと思われがちですが、その価格差はほとんどありません。日本の森林の未来のためにも、国産材が使われた住宅や家具を積極的に選んでほしいと思います。木材を使い森を資源として循環させていくことは、国連が採択したSDGsの考え方にも一致します。国産材を使った製品をもっと日常に取り入れて、健康的で心地よい暮らしをデザインしてみませんか。(談)

林野庁 林政部 企画課長 山口 靖 さん

やまぐち・やすし/山形県山形市生まれ。1992年農林水産省入省。食料産業局外食産業室長、経営局金融調整課長を経て2017年7月から現職。

※掲載内容は取材・作成当時のものです。

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