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住まう・集う大切な場所 建築は、未来への手紙

モデル 知花くらら さん
インテリアや民芸品が好きで、2級建築士の資格を持つ知花くららさん。WFP(国連世界食糧計画)の活動で世界各地を訪れ、現地の暮らしや文化に触れてきた知花さんが考える理想の住まいや暮らし方とは——。

島の景色になじむ場を
自分でデザインしたい

沖縄・慶良間諸島にある島の一つ慶留間島にある祖父の生家を受け継いだことをきっかけに、2019年に大学の建築学科に進学し、2級建築士の資格を取得すべく勉強を始めました。慶留間島はもともと人口が少なく、手付かずの自然が多く残っている島ですが、島に住む人たちにとっては、人口や観光客の減少は大きな課題。そこで、祖父から譲り受けた古い家を再建し、人が集まる場を創出できないかと考えたのです。

島の人に話を聞いたり、島の人たち、そして私にとって「残したいものはなんだろう」と考えたりしているうちに、「この風景になじむものを自分でデザインしたい」と思うようになりました。入学する際にはそれほど深く考えなかったのですが、子育てをしながら建築の勉強をすることは想像以上に大変で、家族のサポートなしにはできなかったことだと思っています。授乳しながら、課題のレポートを書いたり、子守唄を歌いながら文献を読んだり――。人間切羽詰まると結構色々なことをこなせるものだと実感しました。

その土地の匂いや風を
感じることができる家

22年に2級建築士の資格を取得し、祖父の生家の再建プロジェクトが少しずつ動き始めました。建築を学ぶ前と学んだ後では、島の景色や集落の見え方も違ってきたんです。その土地の歴史や地理的な理由などを色濃く映し出す「住まい」は奥深く、あれこれと思いを巡らせる時間はとても楽しいです。

07年から約15年間WFPに関わり、世界各地の様々な民族の暮らしに触れる機会をいただきました。地面にじかに座り、火をたくような生活では、その土地土地の匂いや風を感じることができます。

現代的なホテルはとても快適に過ごせるのですが、「どこの国や地域に来たんだっけ?」と思ってしまいます。私が住まいに求めるのは、そういうものではなく、ゆるやかに外とつながり、土地の匂いを感じられる場所。日本家屋で言えば、ぬれ縁や庭に面した長い廊下などでしょうか。

慶留間島の祖父の生家の再建プロジェクトでは、島に住む人と外から来た人とのつながりが生まれるような、島の未来に貢献できるような新たな場を作れたらいいなと考えています。

海辺のコミュニティーでの
心地良い暮らし

第2子出産を機に決めた
海の見える場所への移住

私も夫も海が大好きで船舶の免許を持っているほど。もともと週末などにのんびり過ごすために、海辺に部屋を借りていました。ですが、コロナ禍でどこにも出かけられなかった時に、そこで過ごす時間が多くなったことや次女の出産のタイミングで「ベースがこちらでもいいんじゃないか」と移住を決めました。

都内から移住してきて感じたのは、都内でベビーカーを押していた時には、なんとなく今より緊張していたなということ。子どもの泣き声や足音が迷惑になっていないかなど常にピリピリしていた気がします。現在暮らしているのは、海辺の小さなコミュニティーなのですが、子育てに関しておおらかな環境で、地域の人の目が行き届いており、私にとっては安心できる場所です。文化的なものへのアクセスが便利な都市部と異なり、気になる企画展や友人の個展などに簡単に足を運べないのを不便だと感じることもあります。ですが、今の私と家族にとっては、のびのびと子育てができることを優先することが大切なのだと感じています。

また、色々な大人の目があることは、子どもたちの成長において大切だとも感じています。近所のお店の方が頻繁に声をかけてくれたり、砂浜で好きな貝殻を拾ったり、海岸に散歩にくるワンちゃんを触らせてもらったり――。海という世界に開かれた環境の近くで、自然を感じながらたくましく育ってくれたらと願っています。

民芸品やアンティーク
好きなものに囲まれて

物件情報を見るのが好きで、常に「いいところはないかな」と探していました。そして、2023年夏、1階が飲食店、2階が住居として使われていた現在の我が家と出合ってしまったのです。築10年ちょっとの建物でしっかりとしており、耐震構造も問題なさそうでした。内見に行くと目の前が海で、富士山も見えるというぜいたくな立地。すぐに決めて秋頃からリノベーションを始めました。

リノベーションにおいてこだわり、大切にしたのが、民芸品やアンティークがなじむ空間にすること。このリノベーションにおいてポイントとなったのは、エントランスの扉です。賃貸でインテリアを模様替えする際には決して手を出せなかった建具から考えることができるのがうれしかったです。特に家の顔となる玄関扉はなかなかピンとくるものに出合えなかったのですが、ふと、お気に入りのアンティークショップの奥に古い扉が飾られていたことを思い出して足を運んでみると――。一目ぼれとはこのことでした。イメージもサイズもぴったりで、一目見てこの扉を我が家の玄関に迎えることを決めました。インドのお城に使われていたというこの扉を開けて、見える景色を描いていくように、リノベーションを進めていきました。

エントランスの扉。150年から200年ほどのアンティークチークで、扉の枠には手彫りの鎖のレリーフが施されている。海辺の環境での劣化を防止するため、テンパードアを設置した。

家族とともに過ごす家なので、デザインだけではなく安全で安心して過ごせることももちろん大切です。古い家具でも滑ったり転倒したりしないように配置を工夫し、窓から近いところには、ベッドを置かないようにするなどもしもの時に安心な空間であることも意識しました。「建築は、未来への手紙」。建築士の勉強をしてあらためてそう思うようになりました。日々の生活を送る空間であり、好きなものを生かし、私の大切なものを表現する場にもなっている。子どもたちの成長とともに、この家も変化していくのだと思います。

左/キッチンのバックボードにもインドの建具を使用。3組のペアドアのうち、2組をスライドドアにして食器を収納するスペースに。 右/インドの古い家で使われていた窓枠を絵画のように壁に掛けて。
エントランスの扉の裏側(部屋側)。アンティークの建具は、表と裏で色味が全く異なっているものも多い。

モデル 知花くらら さん

ちばな・くらら/1982年生まれ、沖縄県出身。多数の女性ファッション誌でモデルを務めるほか、コメンテーター・俳優・歌人として幅広く活躍し、数多くのTV・ラジオ・CMなどへ出演。上智大学を卒業した2006年にはミス・ユニバース世界大会で準グランプリに輝く。07年から約15年間、国連世界食糧計画(WFP)で活動し、オフィシャルサポーターや日本親善大使として世界各地を訪問。プライベートでは、第1子妊娠中の19年に京都芸術大学通信教育部建築デザインコース入学。22年2級建築士試験に合格。また、2人の子どもの母として、海辺の町に移住し、ライフスタイルを充実させている。

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