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認知症予防を考える

社会的に大きな課題となっている認知症の最新トレンドや、認知症に備えていくための準備などについて、アルツハイマー型認知症の世界的な研究者で、アルツクリニック東京院長の新井平伊先生に伺いました。

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第一部認知症の基礎知識の理解 (01:30)

Q.そもそも「認知症とはどういう病気」なのでしょうか? (02:23 )

認知機能は成人になるまで正常に発達します。それが脳の神経細胞が何らかの原因で障害を受け、元々ある認知機能、つまり記憶とか、思考、言語、判断などの機能が日常生活に障害をきたす程度に下がった状態を認知症と言います。ですから認知症は一つの状態であり、その原因はたくさんあるということになります。

Q.認知症も早期発見のサインなどがあるのでしょうか? (03:13 )

年齢とともに、高齢になると誰でも「ど忘れ」するということがありますが、初発症状は、置かれた環境によって変わってきます。たとえば男性の場合、仕事で今までにないミスが生じたり、お客さんとのアポイントを忘れたり、女性では家事のなかで献立がうまくできない、時間がかかるなど、一言で言うと「今までできていたものが変化する」というのが初期症状です。

もうひとつ、健常な場合と認知症の間に、軽度認知障害(MCI)と言われるもの、そして主観的な認知機能の低下(SCD)と呼ばれる「グレーゾーン」があります。その段階で早く見つけて早期対応すると、その後の進行が軽くなる、もしくは良くなる場合もあります。

軽度認知障害(MCI)場合は、5年のうちに50%が認知症になってしまうのですが、早いうちからいろいろ対応すると、10~15%は回復すると言われています。ですから早く見つけて、早く対応するというのが一番大事だと思います。一方、認知機能の低下(SCD)は軽度認知障害(MCI)よりも前段階です。このときは自分では物忘れに気づいて検査をしてもらっても、発見されない状態です。それでも早い段階から予防活動も含めて、認知症の心配をされているというのはとても重要だと思います。

Q.認知症について理解されていない点は何でしょう? (05:33 )

認知症というのは1つの状態なので、その原因はたくさんあるわけです。7割はアルツハイマー病なのですが、それ以外にもレビー小体型、血管性、そして前頭側頭型、の4大疾患がほとんどを占めます。アルツハイマー病は物忘れを中心に、わりと穏やかな経過で、15年、20年と経過していきます。血管性認知症の場合は、脳卒中や脳梗塞の後に起こるわけで、記憶は低下しますが、わりと日常生活はできる部分があり、マダラ認知症と呼ばれるような「できる部分」と「できない部分」があるのが特徴です。最近増えているレビー小体型認知症は、アルツハイマー病と似ているものの、見えないものが見える「幻視」と「抑うつ状態」という症状が目立ちます。前頭側頭型認知症は、物忘れはそれほどひどくないのですが、社会的な逸脱行為や、反社会的行為など、「ゴーイングマイウェイ」な行動が多くなってしまいます。

Q.「治療可能な認知症」もあると言われています? (07:24 )

初期の段階で治る認知症をきちっと区別する、医学的には鑑別すると言いますが、これが最も大事です。有名なのは脳外科的疾患で、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、そして内科的疾患では甲状腺機能低下、ビタミンBの欠乏、そういった治療すれば治る病気を最初に見極め、治療することが大事です。もう1つ、うつ病も認知症の観点から非常に重要です。何度も躁うつ病を経験してしまうと、認知症になりやすい場合があり、うつ病をきちんと治すことは認知症の予防につながると言えます。うつ病が治らないでダラダラ経過すると、認知症に移行する場合もありますから、うつ病もとても重要です。

Q.コロナ禍で、認知症とともにどう生きていけばいいでしょうか? (08:48 )

この誰も経験したことのない日常生活では、身体的および精神的ストレスが誰でもかかってきます。そうすると一見、認知症が悪くなったように周りの人から見えることがあります。しかしそれは認知症が悪くなったのではなく、ストレスがかかったことによって、精神的な不安をきたしていると言えます。大事なことは2つ。1つは精神的な支え。今までもよりコミュニケーションをとり、昼間の生活のなかで精神的な安定を目指しましょう。もう1つは運動不足になりやすいですから、室内で、座っていてもできるような体操などで、関節の固まりとか筋肉の衰えを防ぎましょう。このように昼間をきちんと過ごすことによって、夜の睡眠が確保されます。日中と夜の覚醒リズムを保つことが大事だと思います。

第二部認知症の世界を知る (11:15)

Q.認知症になった場合、どのような症状が現れるのでしょうか? (11:22 )

認知症というのは1つの状態ですから、様々な症状があり、「中核症状」と呼ばれる認知機能障害と、「BPSD」と呼ばれる行動・心理症状の2つに分けられます。中核症状は認知機能障害で、記憶の障害、判断がうまくできない、言葉がうまく出ない、計算がうまくできない、そういった症状があり日常生活に支障をきたします。BPSDは、人がそれぞれ持っている性格も反映しますが、喜怒哀楽、それから行動上の症状になります。もう1つ、レビー小体型だけ特別なのですが、中核症状のなかに幻視が入るのが特徴です。

Q.VRのテクノロジーを使って認知症の人が見えている世界をモデルの方に疑似体験していただいた様子をご覧いただきましたが、いかがでしたか? (16:32 )

認知症の関係で外界の認知がうまくいかないと、階段を降りられないとか、運転がうまくいかなくなってしまいます。そのとき周りの人は、焦らせない、時間をゆっくりかけさせることが大事。本人は必死になって解決しようかと思っていますが、そこで一休み入れるのが一番いいと思います。幻視についてですが、本人にはありありと見えている、これがレビー小体型認知症の特徴です。周りの人には見えませんが、このときも周りはあまり否定せず、気持ちを理解してあげて、本人を安心させてあげるのが一番だと思います。

第三部認知症予防の方法 (17:55)

Q.日常生活で備えていくことはあるのでしょうか? (18:00 )

「備えあれば憂いなし」という言葉通り、その観点では予防が一番大事だと思います。予防と言うと「病気にならない」ということばかりがイメージとして浮かびますが、じつはこれは一次予防です。他にも発症を遅らせるの「二次予防」、また病気になってからも進行を遅らせる「三次予防」があります。普段からできることは一次予防、二次予防の観点で、WHOや様々な学会で気を付けるべきことが提唱されています。そのなかで大事なのは、食事と運動、睡眠、生活習慣です。たとえば糖尿病、高血圧、コレステロール血しょうなどの生活習慣病と呼ばれる病気をお持ちの人は、それをきちんと治療しておくこと。そうすることによって血管性認知症やアルツハイマー病を防ぐことができます。

次に大事なのが食事、運動、睡眠です。運動は汗をかくくらいの運動を30分、週に3回くらい行うといいと言われています。運動だけではなく、デュアルタスク(二重課題)と言い、歌を歌ったり、計算をしたり、もしくは散歩をしながら俳句を考えたり、二つのことを一度にやるといいと思います。そして食事は、高血圧では塩分に気をつける、高脂血症では油に気をつける、そういった食生活をきちんとすることが大事です。

また睡眠が不足すると、慢性的な脳機能の回復に影響します。しかもアルツハイマー病に大事なアミロイドβたんぱくが寝ている間に掃除されるのですが、睡眠不足が続くと脳の中にアミロイドβたんぱくが溜まってしまう、そういった現象も報告されています。最低6時間半、もしくは7時間くらいの睡眠が認知症予防にいいとされています。そしてよく言われるのがお酒。毎日飲むと肝臓以外の神経にもダメージが出てしまいます。お酒は物忘れが気になった段階では、少し減らす、断酒、毎日飲まない、そういったことが認知症予防につながるのではと思っています。まとめると認知症に限らず、どんな病気でもそうなのですが、健康的な生活を維持することで病気の予防につながるといえます。

Q.認知症とともにどのように生きていけばいいでしょうか? (21:33 )

認知症になってしまうと、脳の機能が全部だめになった、人生が終わってしまう、というような恐れが頭をよぎりますが、実はそうではなく、認知症になって影響を受ける脳の機能はほんの一部です。数字で例えるのであれば9割5分くらいは正常。我々が持っている喜怒哀楽などの感情、人を推理して思いやる、そういった人それぞれの機能は正常です。それを周りはまず理解をしなくてはいけません。認知症は長い経過、15年、20年続きます。すると認知症を持った生活というのがまだまだ送れるわけです。そこで大事になるのが病気を持ってからも進行を遅らせる三次予防。三次予防の方法は二次予防と共通しますが、それらをさらに認知症になってからも続けることで、進行を遅らせることができます。そして認知症になってからも、ご家族と一緒に歩み、毎日を充実させていくことが大事です。我々医療関係者、介護関係者は、そういった理解をもとに、本人、そして家族などの介護者を、周囲から支えていくことがとても大事だと思います。

アルツハイマー病は、一次予防は難しいとしても、二次予防では生活を充実させて、人生をエンジョイし、三次予防では薬物療法も含めて、なるべく残っている機能を維持することがとても大事です。もう1つ予防と言う観点では、脳ドックなどで前もってきちんと調べておき、意味のある予防と合わせて生活していく、そういったことが大事になるのではと思っています。

Q.今回のお話をまとめていただけますでしょうか? (24:51 )

認知症は15年、20年長く続くものです。そこでいかに人生を充実させるか、というのがポイントになってくると思いますが、今日はその意味で予防というお話をしました。人生100年時代になります。人生を充実させるという意味では、予防とともに、社会制度の中で前もって準備しておくことも大事だと思います。将来を見据えて家族を話し合っておくとか、準備をしておくとか、いろいろな対策をとっておくことによって、認知症になっても十分生活を送れる、人生を大事にできる、そういった方向に進んでいければいいと思います。

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