宇宙での日常生活は、地上とはどのように違うのでしょうか? そんな疑問を持った子どもたちと、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在している宇宙飛行士の若田光一さんが交信するオンラインイベントが、12月6日に開催されました。子どもたちは若田さんからISSでの生活の暮らしのエピソードを聞いた後に、宇宙での歯みがきを疑似体験。宇宙飛行士のミッションを身近に感じていました。

【第1部】国際宇宙ステーションでは水が貴重

【動画】 第1部 JAXA職員に聞いてみよう!「宇宙での日常生活って?」

オンラインイベントは、教えて!若田宇宙飛行士「宇宙と地上の生活ってどう違うの?」と題し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の全面協力のもと、朝日新聞社・総合プロデュース本部が主催。アルテミス世代の宇宙飛行士を支援する「Hello! EXPLORERS PROJECT」、ライオン株式会社の協力で開催されました。JAXA宇宙飛行士の若田さんとの交流を楽しみにしていた小学生ら約40人が、全国各地からライブで参加しました。

第1部では、司会の榎本麗美さんの進行のもと、宇宙飛行士の健康管理をサポートしているJAXAの三澤拡さんが東京のスタジオに出演。 宇宙での生活環境、宇宙飛行士の一日、宇宙食や生活用品などについて解説しました。

宇宙飛行士が6カ月滞在するISSでは、「水が非常に貴重なので、まずお風呂がないですよね。洗濯ができない、そして歯みがきも節水しないといけない」と三澤さんは説明します。そのような生活の不便さを解決するために、宇宙生活と地上生活に共通するアイデアをJAXAが募集し、「すすぎが簡単なハミガキ」を含む九つの生活用品が採用されました。

【第2部】ISSの若田さんと一緒に歯みがき体験

【動画】 第2部 教えて!若田宇宙飛行士「宇宙と地上の生活ってどう違うの?」
※宇宙との交信では音声に時間差が生じるため、一部遅れた音が反響して収録されています。

いよいよ若田さんとの交信がスタート。ISSの日本実験棟「きぼう」の中にいる若田さんの姿が画面に映し出されると、子どもたちは目を輝かせていました。

宇宙と地球の暮らしの違いを聞くと、若田さんが真っ先に挙げたのは、やはり水の貴重さ。「ISSでは水は1人当たり1日だいたい3リットルしか使えません。飲料水ですとか、食事やトイレ、運動後に体をふく時、歯みがきをする時、そういった水を全て含めて、約3リットルなんです」と話していました。

そこで今回は、宇宙で水を節約する生活を、子どもたちにも疑似体験してもらうことに。事前に参加者に渡された泡状のハミガキ(*)を使って、若田さんと一緒に歯みがきをしました。

泡状の「すすぎが簡単なハミガキ」をハブラシに付けた若田さん。手を離してみると、ハブラシは無重力空間でフワフワと浮いています。それでもハミガキはハブラシにくっついたままです。「それでは一緒に歯みがきをしてみましょう!」と若田さん。

しっかりブラッシングした子どもたちは、水を使わずにティッシュなどに吐き出して歯みがき体験が終了。若田さんは「通常のハミガキと同じように宇宙で歯みがきができますし、宇宙だと水を使用する量に限りがありますけれども、簡単に口の中がすっきりします」。参加した女の子は「初めての体験で不思議な感じですけど、口に残りにくくて面白かったです!」と感想を語っていました。

(*)ISSに搭載された「すすぎが簡単なハミガキ」とは異なります。

一緒にハミガキ
【写真】若田さんと一緒に、宇宙での歯みがきを疑似体験

「宇宙飛行士になるには?」「宇宙でムシ歯菌はどうなるの?」

続いて、若田さんへの質問コーナーです。「宇宙飛行士になるために小学生のうちにやれることは何ですか?」という男の子の質問に、若田さんは「小学生の頃からいろんなことに興味を持って、目標を持ってチャレンジしてほしいなと思います」と回答。「ムシ歯菌は宇宙でも地上と同じように増えますか?」という素朴な疑問にも丁寧に答えていました。

質問
【写真】あこがれの若田宇宙飛行士に質問する参加者

最後に若田さんは「宇宙ステーションの滞在中はムシ歯や病気の治療が難しいですから、地上にいる時以上に、健康の維持やオーラルケアなどの生活習慣を大切にしています。みなさんも健康に注意して、元気いっぱい頑張ってください!」と子どもたちにメッセージを送りました。

【第3部】「宇宙のくらし」を支える
「すすぎが簡単なハミガキ」ができるまで

【動画】 第3部 教えて! ライオンさん「宇宙と地上の歯みがきってどう違うの?」

第3部では、「すすぎが簡単なハミガキ」の開発担当者でもあるライオンの加藤妥治さんを迎え、宇宙と地上の歯みがきの違いについて学びました。

同社のキャラクターのライオンちゃんもお手伝いで登場。子どもたちは「宇宙でも歯みがきの後に、水を使って口をすすぐことができる?」などのクイズを楽しんだ後に、加藤さんによる詳しい解説を聞きました。

これまで、宇宙で歯みがきをするためには、「水がとても貴重」「物を運ぶのがとても大変」「今までの宇宙での歯みがきは気持ちがいいものではなかった」という三つの課題がありました。加藤さんによると、ISSに物を運ぶロケットの打ち上げ費用は1kg当たり330万円。さらに、何度も水を使ってすすぎをすることができないため、いつものハミガキだと完全に吐き出すのが難しく、飲み込む宇宙飛行士もいたそうです。

パネル
【写真】課題を一つずつクリアし、節水と快適な歯みがき体験を実現

三つの課題に対して、泡が口の中で素早く広がる「すすぎが簡単なハミガキ」は、歯みがきの後の口残りが少なく、節水と快適な歯みがき体験を実現します。そして、1本でISS滞在期間の半年をまかなうことが可能で、軽量化にも貢献することができます。

ハミガキの開発で苦労したのは、宇宙空間と似た環境で検証するのが難しかった点だと加藤さんは言います。若田さんにもアドバイスをもらって、課題を一つずつクリアし、ISSへの搭載が実現。「宇宙での毎日の歯みがきを、心地よく、前向きなものにしたい、そんな開発のメンバーの思いがこもっています」と語りました。

「ライオンは、宇宙だけでなく、いかなる環境においても適切なお口のケアを実践できるよう、“誰ひとり取り残さない”インクルーシブ・オーラルケアを実践しています」と、力強く語る加藤さんら開発チームは、今回のハミガキが、地上でも生活課題の解決に貢献できると考えているそうです。

たとえば、災害時に水道が使えない場合や、水が衛生的でない環境、医療や介護の現場、外出時やキャンプなど。宇宙での困りごとを解決するためのアイデアは、私たちの日常生活をより豊かにしてくれるかもしれません。

子どもたちに向けて、加藤さんは「これからも前向きに健康的に過ごせるより良い習慣作りを、挑戦していきたいと思っています」と締めくくりました。

すすぎが簡単なハミガキ
【写真】国際宇宙ステーション(ISS)へ搭載された「すすぎが簡単なハミガキ」

 

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