幸福度「世界47位」日本人は不幸せ?
「VUCA(ブーカ)」と言われる予測不可能な時代。日々のできごとをウェルビーイングの視点でとらえ直せば、困難を乗り越えるヒントが見えてくるかもしれません。このコーナーでは、ウェルビーイング研究の第一人者である前野隆司・慶応義塾大教授が、話題のニュースをウェルビーイングの視点で読み解きます。第1回は、3月20日の「国際幸福デー」に合わせて発表された「World Happiness Report 2023(世界幸福度報告書)」についてです。
【World Happiness Report(世界幸福度報告書)】
国連と連携する研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)が毎年発表する。各国の人々に「最悪の人生を0点、最高の人生を10点としたとき、あなたの人生は何点ですか?」と質問し、国ごとに平均してランキングにしている。2023年版の日本のスコアは6.129で、137カ国中47位(前年は6.039で54位)。トップはフィンランドでスコアは7.804だった。報告書はウェブサイトで公表されている。
G7で最下位? 気にする必要なし!
――2023年版の世界幸福度調査で、日本の幸福度ランキングは世界47位でした。前年から七つ順位を上げました。
順位が上がったということは、本当にいいニュースだと思います。ウェルビーイングがブームのようになっているのが影響して、「健康に気をつけるのと同じように幸せに気をつける」という人が少しずつ増えてきたからじゃないかな、と喜んで見ています。
――主要国では米国が15位、ドイツが16位、フランスは21位などで、日本はG7(主要7カ国)では最下位です。日本人は不幸せなのでしょうか。
「G7で最下位」というのは極端な言い方ですね。というのも、日本人は謙虚な人が多いので、アンケートには低めの点数で答える傾向にあるんです。自己肯定感が低い、あるいは会社でのワクワク感が低いといったように、ほかの調査でも「日本はダメだ」と言われることがありますが、どれも謙虚に答えているからという面もあります。ですから「最下位」というのは話半分に聞いて、あまり気にしないほうがいいと思います。
137カ国のなかの47位ですから、全体ではかなり上のほうで、しかも上昇傾向にある。このように、いいところだけみればいいじゃないですか。悪いデータを見てシュンとすると、余計に不幸せになってしまいますから。

幸福度を上げるきっかけに
――上位をみると、6年連続トップとなったフィンランドをはじめ、北欧の国々が多くを占めています。これらの国と日本には、幸せに関してどんな違いがあるのでしょうか。
そんなに違いはないと思います。フィンランドに行ってみると、結構おとなしい国民で、日本と同じようにサウナ好きなんですよ。「フィンランドがずっと幸福度1位だね」と言うと、現地の人はみんな笑います。「それは国連の冗談だと思うよ」なんてジョークを言う人もいたぐらいです。日本人が謙虚で高い点数をなかなか付けない、というのに加えて、フィンランド語と日本語では質問のニュアンスが違うということもあるんじゃないかと思うんですよね。
欧米には個人主義的な考えをする人が多く、このような人たちは自分の意見をはっきり持って、自立して主体的に生きることが正しいと考えるので、アンケートに対しても「私はもちろん幸せです」と高い点数を答える傾向にあると考えられます。そのため、点数が高くても、その人が幸せなのか、それとも個人主義的な人なのかはわからないというのが、この幸福度調査の難しいところです。
――日本独自の傾向もあるそうですね。
幸福度(0~10点)の分布をグラフにすると、ほかの国はピークが一つの正規分布になるのに対し、日本は二つのピークができます。統計学的には、正規分布でなければ一つの集団とはみなせません。
日本がなぜ「ふた山」のグラフになるのかは研究中ですが、「日本には欧米的思考の個人主義的な人と、アジア的思考の集団主義的な人がちょうど半々ぐらいいるからだ」と考えると説明がつきます。
――私たちは「世界47位」ということをどう受け止めたらいいでしょうか。
ほかのデータも見てみてはいかがでしょうか。たとえば、オランダの大学による調査「World Database of Happiness」では、日本の幸福度は先進国で中ぐらいでした。一つの結果に左右されてはいけません。
繰り返しになりますが、七つも順位が上がったことはすばらしい。喜んでいいんじゃないですか。ドイツは昔、幸福度が低かったので、幸福度を上げようというキャンペーンをして、いまでは上位に入っています。日本もこれをきっかけに、幸福度がぐいぐい上がるといいんじゃないでしょうか。すでに長寿国ですが、人々がより幸せになったらさらに寿命が延びるかもしれませんね。