VUCAな時代をウェルビーイング視点で刷新する

男性育休時代、幸せな子育てのカギは?

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目次
  1. 子育てとウェルビーイングの意外な関係
  2. 男性の子育てが「普通」な世界へ
  3. 「楽しむ」と「信じる」を心がけて

「VUCA(ブーカ)」と言われる予測不可能な時代。日々のできごとをウェルビーイングの視点でとらえ直せば、困難を乗り越えるヒントが見えてくるかもしれません。このコーナーでは、ウェルビーイング研究の第一人者である前野隆司・慶応義塾大教授が、話題のニュースをウェルビーイングの視点で読み解きます。第2回のテーマは男性育休(男性の育児休業)です。

【男性育休】
日本の男性育休取得率は上昇傾向にあるものの、2021年度時点で13.97%にとどまる(厚生労働省調べ)。育児・介護休業法の改正で2022年、企業が本人または配偶者の妊娠・出産などを申し出た労働者に対して育休制度の周知や取得の意思確認をすることが義務化され、男性向けの新制度「産後パパ育休(出生時育児休業)」も設けられた。2023年4月からは従業員数1000人超の企業に対して男性育休取得率の公表も義務付けられた。岸田文雄首相は2023年3月、男性育休取得率の政府目標を、従来の「2025年に30%」から「2025年度に50%、2030年度に85%」に引き上げる方針を発表した。

子育てとウェルビーイングの意外な関係

――小さな子どもがいる家庭は、外から見ると幸せそうです。子育てとウェルビーイングの関係について教えていただけますか。

実は、子どもが生まれると幸福度は下がり、子どもが巣立つと回復するという研究結果があります。だからといって、「幸福度が下がるから子育てをやめましょう」ということではもちろんありません。「仕事と子育てを両立するのは思いのほかたいへんなのですから、みんなで力を合わせて乗り切りましょう」。研究結果はそんなメッセージだと受け取ったほうがいいと思います。

離婚がいちばん多いのは子どもが0歳のとき、というデータもあるのです。女性は出産や授乳時に「オキシトシン」というホルモンが多く分泌されます。オキシトシンは「愛情ホルモン」と呼ばれ、子どもに対する愛情が深くなる一方、外敵への防衛本能も高まると言われています。だから、夫が「家事はやっておいて」といった態度をとると、妻の「敵」になってしまい、夫への愛情が冷める確率も高いわけです。

子どもが生まれると、夫婦は子育てのためのチームという面が強くなります。そこの切り替えがちゃんとできないと、夫婦仲はうまくいかなくなります。話し合って、いたわり合うことが大事でしょうね。

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男性の子育てが「普通」な世界へ

――男性育休への社会的な関心が高まっています。従業員に取得意思を確認することなどが企業の義務となり、政府も新しい目標を掲げました。

男性育休は当然の話で、それを強調しなければならない時点でまだ「正しい世界」になっていないということですよね。女性に育児の負担が偏っているのは時代遅れです。私がカラダノートとおこなった調査では、夫婦の家事・育児の負担率がどちらに偏るでもなくちょうど半々程度のときにいちばん幸せという結果が出ました。

男性が育休を取りにくい雰囲気が会社内にあるとしたら、それもまた時代遅れです。サイボウズの青野慶久社長が経営者自ら育休をとって話題になりましたが、そういうことがニュースにならない、「普通だね」という世界をめざすべきだと思います。

――「育休をとると出世に響くのでは」などと、キャリアへの影響を心配して踏み切れない男性もいるのではないでしょうか。

子育てと仕事の両立は、これから男女とも必要になることです。「育休をとると出世できないぞ」という雰囲気をつくっている経営層や管理職の意識を変えないといけません。「男は休むもんじゃない」なんていまだに思っている人、いないでしょうか?

キャリアが中断するという心配があるかもしれませんが、仕事だけでなく多様な経験が人を成長させるものです。私自身、子どもを育ててから、学生に対する愛情みたいなものが深くなったと感じています。他人は自分の思う通りにならないけれど、調和的にやっていかなければいけない――。育児は、そんなことを象徴的に学ぶいい機会です。

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「楽しむ」と「信じる」を心がけて

――育休期間中の幸福度を高めるために、どんなことを心がけたらいいでしょうか。

一つ言えるのは、「満喫力」の高い人は幸せだということです。だから、まずは楽しむことでしょう。やっぱり子育てはたいへんですよ。慣れないオムツ替えをして、手がうんちまみれになる。ケガをしたりイタズラをしたり、面倒くさいことがいっぱい起こる。子どもは本当に思い通りになりません。生まれる前に「こんな感じに育てよう」と思っていても、絶対にそうはなってくれず、子ども本人の個性に従って伸びていくものです。それを楽しむようにしてはいかがでしょうか。

もう一つは、子どもを本気で信じることです。「あれをしちゃダメ」「これをしちゃダメ」でなく、「この子は自立した子になるに違いない」と信じる。親に見守ってもらっているけれど、コントロールされてはいない、というのが子どもにとっていちばんいいことです。会社も同じですよね。命令型の上司は嫌われ、「信じてるぞ」「任せるぞ」という姿勢であるべきだと、組織論も変わってきています。

また、子育てのとき、おしっこしたらオムツを替え、おなかがすいたらミルクをあげ、と作業をこなすように取り組むと、「作業の奴隷」になってしまいます。そうならないために、我が家もしたのですが、子育てで何をめざすのかを夫婦で話し合ったらいいと思います。会社のミッション・ビジョン・バリューと同じですね。

もちろん子どもを産まない選択をする人や、子どもに恵まれない人たちもいて、そういった人たちは子育てとは違う楽しい活動をすればいいというのは、言うまでもありません。子どもを授かった人には、自分が成長したり人生を満喫したり、信じる力を身に付けたりするチャンスでもあると思って、子育ての機会をポジティブに生かしてほしいですね。

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