WELL-BEING ACTION!

Well-being Journey vol.2|株式会社丸井グループ

「人の成長=企業の成長」から「フロー」へ
丸井グループが20年かけて育てたWell-being経営

丸井グループが20年かけて変えてきた企業文化

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WELLBEING AWARDSで、第1回から4年連続の受賞を重ねる丸井グループ。2026年には、仕事を通じて「フロー」を体験できる組織づくりを進める「フロープロジェクト」が、組織・チーム部門のGOLDを受賞しました。

しかし、その取り組みは、最初から「Well-being」という言葉を掲げて始まったものではありません。出発点にあったのは、会社そのものを変えなければ生き残れないという危機感でした。

2005年に始まった企業文化変革から約20年。社員が自ら手を挙げて挑戦する文化を育て、現在は「働く人の『フロー』を生み出す社会を創る」を経営戦略の柱に据えています。

丸井グループのWell-beingは、どのように企業文化へ根づき、経営や事業へとつながっていったのでしょうか。ウェルビーイング推進部の川上紀子さん、太田美穂子さんに、その軌跡を伺いました。

原点は、「自分たち自身が変化に対応できなくなっていた」という反省

丸井グループが企業文化変革に着手したのは2005年。その後、貸金業法改正やリーマンショックなどの影響を受け、2度の赤字決算を経験します。

しかし、川上さんは当時を振り返って、原因は外部環境だけではなかったと語ります。

「お客さまや世の中が変化しているのに、自分たち自身がその変化に対応できなくなっていた。そのことが大きかったと思います」

当時の社内には、過去の成功体験から、業績至上主義や同質性を重んじる価値観がありました。そこで企業文化変革の土台となったのが、経営理念に掲げた「お客さまのお役に立つために進化し続ける」「人の成長=企業の成長」という考え方です。この経営理念には、社員一人ひとりが自己実現を果たしていくことが、丸井グループの成長につながるという想いが込められています。

企業価値という目に見える成果を生み出すためには、その下にある「人の成長」「企業文化」「企業理念」を育てなければならない。丸井グループは、企業文化そのものを経営の土台として捉え直していきます。

特徴的なのは、Well-beingだけを独立した施策として進めなかったことです。企業理念、対話、働き方、多様性、手挙げ、グループ間職種変更異動、評価制度、そしてWell-being。複数の仕組みを同時に動かしながら、会社の“OS”ともいえる企業文化を変えていきました。丸井グループの資料でも、これらを「企業文化1.0」を構成する一連の施策として位置づけています。

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制度ではなく、「行ってこい」と言える文化をつくる

その象徴が、「手挙げの文化」です。

かつての中期経営推進会議は、役員や店長クラスが並び、経営からの話を聞く場でした。それを公募制へ転換。現在は毎月約1,000人が論文を提出し、匿名による選考を通過した約300人が参加します。自ら手を挙げて何らかの取り組みに参画したことのある社員は91%に達しています。

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ただ、制度をつくっただけでは文化にはなりません。

当時、販売職として店舗で働いていた太田さんも、手を挙げて会議に参加した一人でした。

「店舗を抜けて学びに行くとなると、『その間、店は誰が守るの?』となってもおかしくありません。でも、『すごくいいチャレンジだから行ってこい』と送り出してもらえました。戻れば『どうだった?』と聞いてくれて、学んだことをみんなに共有する。そういうことが自然に行われていました」

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誰かが挑戦すれば、周囲がその挑戦を支え、得られた知をチームに戻す。その姿を見た次の人が「自分もやってみよう」と手を挙げる。「公募」という制度だけでなく、お互いの働き方や挑戦を支える関係性があったからこそ、手挙げが企業文化として広がっていったのでしょう。

Well-beingを「フロー」という経営指標へ

そして2023年以降、企業文化変革は次の段階、「企業文化2.0」へ進みます。その中心に置かれたのが「フロー」でした。

フローとは、能力と挑戦のレベルが高い水準で釣り合い、「時を忘れ、我を忘れて」没頭する状態。丸井グループは、インパクトと利益を両立するためには、社員一人ひとりが創造性を発揮することが必要であり、そのために「仕事を通じてフローを体験できる組織」をつくるという仮説を立てました。

「『明日から創造的に働いてください』と言われても、人は急には変われません。だから、自然とフローを体験できる環境をつくる。そうすれば創造性が発揮され、イノベーションにつながると考えています」

取材で川上さんが繰り返したのが、
「ビジョン×数値×取り組み」
という考え方です。
特に特徴的なのが、目に見えにくいフローを、あえて数値化したことです。

「自分の強みを活かしてチャレンジしていますか」
「自分の技能や知識を仕事で使うことが多い」

この2つの設問にポジティブに回答した社員を「フローに入りやすい状態」と定義。2026年6月の調査ではその比率は58%。2031年には80%をめざしています。

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「Well-beingは売上と違って、目に見える客観的なものではなく、主観の話です。だからこそ、あえて数値化する努力が大事だと思っています」

ビジョンだけでは動かない。取り組みだけでは続かない。数値だけでも人は動かない。三つを掛け合わせることで、初めて全社的な大きなうねりになるというのです。

2024年度から始まった「フロープロジェクト」では、手挙げで集まった社員が、自らの職場で実証実験を行い、3カ月ごとにデータを取りながら仮説検証を重ねています。活動は延べ2,500人を巻き込み、現在は全社への展開が進んでいます。この活動が、2026年のWELLBEING AWARDS GOLD受賞にもつながりました。

「好き」を仕事に持ち込み、事業へつなげる

企業文化2.0では、さらにもう一つ、重要なキーワードが加わります。

「好き」です。

丸井グループがめざすのは、、一人ひとりの感情や価値観が原動力となる「『好き』が駆動する経済」。社員自身も好きなこと、得意なことを仕事に活かすことでフローに入りやすくなり、そこから新しい事業が生まれる、という考えです。

その象徴の一つが「ミュージアム エポスカード」です。

店舗で働くアルバイト社員の「ミュージアムが好き」という思いを起点に生まれ、国立美術館、国立文化財機構、国立科学博物館との共創によって事業化。カードの新規入会1件につき1,000円、利用金額の0.1%が、選んだミュージアムへの寄付につながります。

社員の「好き」が仕事になり、お客さまの「好き」と重なり、その行動が社会へのインパクトになる。

ここまで来ると、企業文化づくりと事業づくりは別々のものではありません。

Well-beingを、経営の文脈で考える

これからWell-beingに取り組もうとする企業に何が必要なのか。

川上さんの答えは明快です。

「人事施策や健康施策から考えるのではなく、まず自社にとってWell-beingがどういう位置づけなのかを考える。経営戦略の文脈のストーリーになっていないのなら、私はやらなくてもいいと思っています」

そして、もう一つが「数値化を諦めない」ことです。定性的なテーマだからこそ、何を変えたいのかを決め、そこから逆算して数値や調査、取り組みを設計する。それが丸井グループの考えるWell-being経営です。

20年の歩みを振り返ると、丸井グループのWell-beingとは、新しい施策を次々と足してきた歴史ではありません。

「人の成長=企業の成長」から始まり、「手挙げ」を経て「フロー」へ。そして今、「好き」を事業の力へ変えていく。

「どんな会社でありたいか」を問い続け、そのための企業文化をつくり続けてきた20年。

丸井グループのWell-being Journeyは、Well-beingを特別な活動から、経営そのものへと近づけてきた軌跡ともいえそうです。

株式会社丸井グループ
ウェルビーイング推進部 ウェルビーイング推進担当
課長 川上 紀子/チーフリーダー 太田 美穂子/リーダー 金沢 仁美(画像のみ)

取材:ウェルビーイングアクション実行委員会(2026年9月10日)