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不妊治療と仕事の両立、職場でどう支える? 順天堂大准教授の遠藤源樹さんに聞く

国は来年度から、体外受精などの高度な不妊治療を公的医療保険で受けられるようにする方針を打ち出しています。妊活の選択肢の一つですが、金銭面だけでなく心身の負担も重く、仕事との両立に悩む人は少なくありません。治療する人を職場で支える課題について、「治療と就労の両立支援」分野の第一人者である順天堂大学准教授の遠藤源樹さんに聞きました。


「5.5組に1組」が不妊の検査・治療を経験

不妊症とは、生殖年齢の男女が妊娠を希望し、避妊をせず性交をしても一定期間妊娠しない場合に診断され、日本産科婦人科学会はこの期間を「1年」と定義しています。原因は男女ほぼ同じ割合ですが、特に女性の場合、年齢とともに卵巣の機能が低下し、一般的に35歳頃から年々妊娠しづらくなることが知られています。晩婚・晩産化に伴い、不妊の検査や治療をしたことがあるカップルは「5.5組に1組」といわれますが、仕事との両立の実態にはなかなか光が当たってきませんでした。

『治療と就労の両立支援ガイダンス』(遠藤源樹著、労政時報)を基に作成

順天堂大の調査チームは2018年、全国4カ所の不妊治療専門クリニックの外来で、治療を受けている女性を対象にした大規模調査を実施しました(22~54歳の1727人、平均年齢37.6歳)。その結果、全体の68.6%が働いていて、治療と仕事の両立が困難だと感じている人は83.0%にのぼりました。治療を始めた時に働いていた1075人のうち、6人に1人(16.7%)が離職していました。また、月に1~2日以上、仕事を突発的に休んだ経験があると答えた人は全体の58.3%。一方で、職場に不妊治療をしていることを伝えた人(カミングアウトした人)は6割にとどまりました。職場で不妊治療に関するハラスメント(嫌がらせ)を受けたことがある人は8.4%いました。

『治療と就労の両立支援ガイダンス』(遠藤源樹著、労政時報)を基に作成

両立を難しくする「突発休」

なぜ、仕事が続けにくいのでしょうか。その原因の一つは、不妊治療は「突発休(とっぱつきゅう)」せざるを得ないことにあります。不妊治療は女性の月経周期やホルモンの値、卵子の発育状況に合わせて頻繁に通院する必要があります。特に体外受精などの高度な治療は、手術で卵子を体の外にとりだして精子と受精させた後、受精卵を培養して子宮に移植します。採卵(さいらん)日は2日前にならないと決まらないため、直前に予定が変更になることも。卵巣を刺激する排卵誘発剤による体調不良が起きることもあります。

不妊治療を受けられる医療機関の「地域格差」も大きな課題だと遠藤さんは指摘します。全国に約600あるものの、ほとんどが都会に集中。地方在住の人は、有名な不妊治療専門のクリニックに通うには時間もお金もかかります。「新幹線や車に乗って遠方の不妊治療専門の医療機関に通い、泊まりがけで治療を受ける人も珍しくありません」といいます。

不妊治療と仕事の両立支援情報サイト「PEARL

治療と就労の両立支援のキーワードは「事例性」と「疾病性」

「両立支援は、まず公平で正しい知識を広く伝えることから」。遠藤さんは5月、不妊治療と仕事の両立支援情報サイト「PEARL」(http://jpearl.jp/)を開設しました。妊娠・不妊症・不育症に関する正しい知識や情報を、日本の代表的な不妊治療専門施設である加藤レディスクリニック(東京)院長の加藤恵一さんらが監修し、遠藤さんが「不妊治療と就労の両立支援に資する職場づくり」に関する基礎知識を担当。どのような就業規則や支援制度を作ったらいいのか、企業向けのセミナーやコンサルティングも始めました。

企業向けのセミナーで遠藤さんが強調するのは、「事例性」と「疾病性」という両立支援のキーワードです。事例性は「1日10回ほど、トイレで離席する」「毎月、3日以上の突発休がある」「よくミスをする」など、仕事上で支障になる客観的な事実のこと。一方、疾病性は「食欲がない」「眠れない」など、症状や病名に関すること。遠藤さんは「治療と就労の両立支援は『軸』を分けて考える必要があります。管理職はすべてを抱え込まず、治療や病気のことは医療職に意見を聞きましょう」と促します。

「少子化時代の働き方」を探る企業も

企業でも呼応する動きがあります。株式会社日立システムズ(東京)は5月、加藤さんと遠藤さんを招き、社内向けのオンラインセミナー「不妊治療の現状の課題と仕事との両立に向けて」を実施しました。昨年に労働組合が実施した組合員実態調査で、「不妊治療で困ったことがある」と答えた人が109人いたことがきっかけで、会社と労働組合が共催。当事者や管理職ら約130人が参加しました。参加者のプライバシーを考慮し、事前に質問を募り、講師にセミナーの中で答えてもらう工夫も。満足度は高く、「守秘義務の徹底と職場の公平性の大切さが分かった」などの声が寄せられました。

このセミナーを企画した労働組合の井保大志さんは「不妊治療は実は身近なものだと気づかされました。女性だけの問題ではなく、夫婦で取り組むものだと説明してもらえたのもよかった。不妊治療と仕事の両立で悩んだら、気軽に相談してほしい」。ダイバーシティ推進部長の金森さつきさんは「まずは正しい知識を知り、働き方の多様性を受け入れ、困ったときはお互いさまの精神で誰もが安心して働くことができる職場づくりにつなげたい」と話します。

昨年の出生数は過去最少の84万人、今年は80万人を割ると見込まれる中、遠藤さんはこう訴えます。「日本の出生数が激減する中、妊娠や不妊治療を個人の問題と捉えるのではなく、社会や企業が主体的に少子化時代の働き方改革を進めることが不可欠です。PEARLでは、公正で正確な情報発信と両立支援を通じて、日本の少子化問題解決の一助となるべく、挑戦し続けます」


プロフィール

遠藤源樹(えんどう・もとき) 順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学講座准教授(人事院健康専門委員などを兼務)。2003年、産業医科大学医学部卒業。100社以上の産業医経験をもとに、政府・東京都などの委員として活動。「治療と就労の両立支援」分野の第一人者。『治療と就労の両立支援ガイダンス』(労政時報)など著書多数。PEARLに関する問い合わせは、さんぎょうい株式会社「働く女性の健康とキャリア事業室」阿曽(t-aso@sangyoui-inc.com)まで。

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