高齢化に伴って死亡者が急増し、政府は住み慣れた自宅での「みとり」を後押しする。入院から在宅への流れは、医療費を減らす効果があるともされる。自宅で最期を迎えるには、どんな負担が必要なのか。

 2016年2月17日、城戸ユリ子さん(66)の母、君江さん(当時97)は東京都台東区の自宅にいた。午前1時半ごろ、血中酸素の濃度を測る機器の数値が低下。最期のときが近づくが、救急車は呼ばないと家族で決めていた。

ベッドに横たわる女性(89)を訪問診療する斉木三鈴医師(右)。女性の息子(左奥)は「いずれは自宅でみとりたい」と言う=東京都台東区、越田省吾撮影

 まもなく君江さんは目を閉じ、呼吸が途切れそうになった。ユリ子さんは、かかりつけの訪問診療医が勤務する診療所に電話で連絡した。約1時間後に医師が到着したとき、呼吸は停止しており、医師が死亡を確認した。老衰だった。

 「家族に見守られ、家で静かに逝くのが母の願いでした。私も母の死と向き合え、尊厳ある人生の終わりを見届けることができました」。ユリ子さんは当時をそう振り返る。