血液を使い、アルツハイマー病と関係の深い物質が脳にたまっていることを発症前に見つける手法を確立したと、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)と島津製作所(京都市)などのチームが1日、英科学誌ネイチャーで報告する。早期診断や治療薬の開発につながると期待される。

 この病気はアミロイドベータと呼ばれる異常たんぱく質が脳にたまるという特徴があり、関連する物質が血中にわずかに流れている。これをノーベル化学賞を受けた同社シニアフェローの田中耕一さんらが開発した質量分析技術を使って検出する。0・5ccの血液があればできるという。

 日本とオーストラリアの健康な高齢者やアルツハイマー病患者ら232人に協力してもらい、脳の画像検査(PET)と比べた。健康な人も含めて、このたんぱく質が脳にたまっているかをほぼ90%の確率で正しく見分けられたという。

 たんぱく質は病気になる20~30年前から脳にたまり始めるといわれるが、画像検査を受けるには1回10万円以上かかることが多い。今回の手法を使えば、発症前に病気になりやすい人を手軽に見つけられそうだ。診断の補助にも使える。

 ただしたんぱく質があっても必ずアルツハイマー病になるとは限らない。また、これを取り除いて病気が進むのをくい止める治療法は確立していない。このため現状だと、健康な人が将来の自分のリスクを知って不安になったり、結果が第三者に伝わって保険などで不利な扱いを受けたりする恐れもある。

 チームの柳沢勝彦・同センター研究所長は「当面は治療薬が効いているかの判定に役立てられる。結果を広く活用するには社会的な合意も必要」。田中さんは「今回の研究成果は、根本治療薬の開発を含むさまざまな医療技術を進展させる基礎となると思う。世界の人々の健康長寿に貢献していきたい」と話す。(編集委員・田村建二