大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震は、同府茨木、高槻両市を中心に古くからのベッドタウンを襲い、被災家屋は3万棟を超えた。大半は国の支援の対象にならない一部損壊だ。収入を年金に頼る高齢世帯には「自力再建」が重くのしかかる。

 「先立つものはお金。ほんまに苦しい」。久保由美子さん(75)は、自宅の壁に走る亀裂に目をやった。

 名神高速の南にある大阪府高槻市氷室町4丁目は、高度成長期に開発された住宅街だ。市によると65歳以上のみの世帯が4分の1を占め、築40年を超す家屋も多い。地震後の応急危険度判定で、352棟のうち、49棟が「危険」、128棟が「要注意」とされ、半数超の住宅に赤色や黄色のチラシが貼られた。

家屋の被害調査を進める熊本市職員の川口恵司さん(右)ら=2018年7月11日午前11時56分、大阪府高槻市氷室町4丁目、室矢英樹撮影

 久保さん宅も「赤紙(危険)」を付けられた。判定は一部損壊だが、屋根瓦がずり落ち、今月の豪雨で雨漏りした。賃貸住宅への転居も考えたが、保証金や引っ越し代などに100万円ほどかかるため断念した。

 月収は夫の健三さん(80)と合わせ、年金の20万円余り。「葬式代に」とためた約200万円を頭金にして修理することにした。残金は月賦。「いつまでに返せるか」と不安がる。

 一人暮らしの男性(69)は、中古マンションへの引っ越しも考えている。築44年の自宅は1995年の阪神大震災で外壁にひびが入り、今回の地震で広がった。「長く住んで地縁もあるが、住み続けられない」

被災家屋が多い自治体

 現地では東北や九州の自治体職員らが家屋の被害調査に加わっている。

 宮城県名取市職員の高橋幸信さん(44)は戸惑う。幹線道から眺めても被災地と分かりにくいが、生活道路に入ると壊れた瓦が積まれ、壁が落ちた家がある。「現場を細かく見ないと被害の実相が分からない」

 熊本市職員の川口恵司さん(41)は「年老いた被災者が多く、修繕費に困っている。安易に『大丈夫』とも言えず、もどかしさを覚える」と話した。

■国の支援、対象外も

 大阪府によると府内の住宅被害は3万715棟(13日午後2時時点)で、99・3%が一部損壊だ。

 茨木市は一部損壊が最多の1万996棟。市によると、81年以前の旧耐震基準のもとで60~70年代の高度成長期に建てられた住宅に被害が多かった。市が開いている住宅相談会では「どの程度の補修が必要か」「修繕費はいくらかかるのか」という質問が多く寄せられている。

 国の被災者生活再建支援法に基づく住宅支援は、今回の地震は適用外の可能性があり、一部損壊はそもそも対象外だ。高槻市の浜田剛史市長は「一部損壊は公的支援の空白部分。国に対象に含めるよう要望したい」と話し、市独自に上限5万円を所得制限なしで補助することを決めた。茨木市も所得制限付きで上限20万円を補助する制度を新設した。しかし自宅の修繕に数百万円かかると業者に見積もられた高槻市の女性(80)は「スズメの涙ほどにしかならん」と嘆く。

 府は一部損壊の補修費も対象に含む無利子融資制度を設けたが、「自力再建」が原則で、補助はない。

 一部損壊の場合でも、軽微な屋根や外壁の補修だけで数十万円、被害程度によっては数百万円かかるという。今回より強い震度6強以上の揺れで倒壊しないためには、新耐震基準に合わせた大規模改修が必要な家も少なくない。茨木市で住宅相談に応じている建築士杉山英俊さん(57)は「南海トラフ地震が起きれば、もっと大きな被害になる。耐震診断をして備えを積み重ねるべきだ」と話した。(永野真奈、沢木香織、室矢英樹)

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■神戸大大学院の平山洋介教授(住宅政策)の話 今回の地震は、高度成長期に人口が急増した住宅密集地を直撃した。一部損壊と判定されても、修繕費に数百万円かかるケースは多い。年金に頼る単身・高齢世帯には重荷で、自力再建は困難だ。首都直下型地震が想定され、超高齢化社会に突入した今、国の安全網から漏れ落ちている一部損壊の世帯を支援することは急いで検討すべき課題だ。