札幌・ススキノの夜を照らしてきたニッカウヰスキーのネオンが消えた――。2割の節電目標を掲げる北海道。道内最大の歓楽街を10日夜、歩いた。

 午後5時、「北海道かに将軍札幌本店」に、店長の菱昭雄さん(42)がのれんを掛ける。この日から営業を再開した。「うちは年中無休。4日間、休んだのが長く感じました」。地震後、ツアー客のキャンセルが相次ぎ、この日の予約もゼロ。「お客さんが来てくれるよう祈ります」

節電のためキッチン部分の照明を落として営業する飲食店=2018年9月10日午後5時56分、札幌市中央区、白井伸洋撮影

 日が暮れた後も客足の伸びは鈍い。

 普段は行列が絶えないラーメン店「麺屋雪風」。店の前には、列を仕切るロープだけが残されていた。「こんなにお客さんが入らないのは初めて」と従業員の平井良明さん(25)は空席の残る店内を見渡す。

 午後9時までには、マクドナルドや吉野家など、チェーン店が次々と店を閉めた。「一日も早く通常営業が行えるよう努めております」。そんな貼り紙があちこちで目に入る。

 飲食店にとっても、物流の復旧が待ち遠しい。創業48年の「豚丼まむろ」の上田勝久さん(56)は「北海道は食材の宝庫。なのに値段が高くて」と嘆く。豚肉の値段は、いつもの3割増し。「利益はほとんどない。でも、常連客のためにも営業は続ける」

夜のとばりが下りる頃になっても、多くの店のネオンが消えたままの札幌市中心部=2018年9月10日午後6時14分、同市中央区、白井伸洋撮影

 「自粛ムード」を打破しようと動き出した人たちもいる。バーなど3店舗を営む加藤大吾さん(34)は経営者仲間とススキノの街を飲み歩き、インスタグラムに動画をアップした。

 「すすきのを元気に びびるな北海道」。記したメッセージに思いがこもる。「予約は吹っ飛び、100万円単位の売り上げを失った。僕らも陰の被災者。不謹慎って言われるかもしれないけど、明るいススキノを取り戻すのは死活問題なんです」

 ススキノへの思いはあちこちで聞こえてくる。ススキノで生まれ育ち古書店「北海堂」を営む小田祐史さん(73)は「にぎやかなだけが良さだとは思わないが、来た人が楽しめる街に戻ってくれたら」。40年間、占師として街を見続けてきた女性(74)は「顔見知りや常連さんが私を見て、少しほっとしていたように見えました。それは私も同じ。来てよかった」。

普段は行列ができるラーメン店の前も、この日は人が一人もいなかった=2018年9月10日午後6時45分、札幌市中央区、白井伸洋撮影

 午後10時。飲食店店員の橋本沙紀さん(21)は地震が起きたときと同じように、チラシを配っていた。地震直後は街の明かりが一気に消え、経験したことのない揺れを感じた。

 翌日から店は営業を再開。常連客たちが来てくれた。「人通りは少なくても、私とのひとときを楽しいと思ってくれる人がいる。ススキノは、楽しいところじゃないとダメ」(高野遼、竹井周平、松島研人)