ニクソン元米大統領を辞任に追い込む「ウォーターゲート事件」を暴いた、米紙ワシントン・ポストのボブ・ウッドワード氏によるトランプ政権の内幕本「FEAR(恐怖)」が11日、発売された。描かれたのは、北朝鮮への先制攻撃計画の策定やシリア大統領の殺害指令など、即興的、感情的なトランプ大統領の姿だ。米政権の安全保障政策は危うい綱渡りを続けている。

■先制攻撃計画

FEARによると、トランプ氏は就任1カ月後の2017年2月、米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長に対し、北朝鮮への先制攻撃計画を作るよう指示をした。ダンフォード氏が当時、共和党の重鎮グラム上院議員に体を震わせながら打ち明けた。

保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のザック・クーパー研究員

 ダンフォード氏は「大統領に計画を提示する前に諜報(ちょうほう)活動を強化しなければいけない」と語ったという。

 同年10月、北朝鮮と地形が似ている米ミズーリ州のオザーク高原で、爆撃機を使った空爆のシミュレーションが行われた。米空軍には、指導者を殺害する複数のプランがあった。パイロットは「北朝鮮の指導者がいると思われる場所」と交信し、最大の威力が発揮できるよう低空から爆弾を投下。同年4月にアフガニスタンで過激派組織「イスラム国」(IS)の地下施設を破壊するために投下された大型爆弾も使われた。

 マクマスター大統領補佐官(当時)が強硬派で、ホワイトハウス内では「もし大統領が攻撃するならば、北朝鮮が核ミサイル兵器を向上させる前が良い」と主張していたという。

 政権内で検討された先制攻撃計画は「鼻血(Bloody nose)作戦」と呼ばれた。その後の米朝の緊張緩和がなければ、何らかの誤算で軍事行動が取られた可能性も否定できない。